大人になって何かにハマったり、何かを習うことは、刺激的で日常を鮮やかに彩るもの。もしかしたら生き方がガラッと変わるかもしれない! これから始めたい趣味、嗜みを、その道のプロから最上&最新の品とともに教わる。今回は「お座敷遊び」を学ぶ。 【特集 人生を変える最強レッスン】
伝統ある芸技に触れ、大人の振る舞いを知る
江戸時代から続く「一見さんお断り」のしきたりが、今も残る京都の花街。地位やお金があってもかなわないからこそ、「一度はお座敷遊びを体験したい」と誰もが願うのではないだろうか。
京都に生まれ育ち、花街の行事や芸舞妓さんの写真を撮り続け、書籍も出版するフォトグラファーの福森クニヒロ氏は、「花街を訪ねることは、京都の伝統文化に触れること。麗しい風習を残すために、しきたりがある」と言う。
例えば、今でいうところの「完全紹介制」システム、「一見さんお断り」は、お茶屋の常連客が、信頼できる人だけを連れていき、店とつなぐ仕組み。ちなみに、お茶屋とは客に座敷を貸して芸舞妓さんを呼び、宴や会食を供する場。店主や家族が暮らす家もあり、目立つ看板や暖簾(のれん)を掲げることはない。だからこそ、素性の知れたご贔屓(ひいき)さんだけを迎え入れてもてなすのだ。
紹介された客は、紹介者の顔を潰すことがないよう、振る舞いやマナーを学び伝える。
「美しく清められたお座敷で、芸舞妓さんの舞を拝見し、会話やお座敷遊びなどに興じるのが基本です」
客が料理や酒を楽しむ頃合いを見て襖がすっと開き、芸舞妓さんや地方さん(三味線や唄を披露する芸妓さん)が登場する。芸舞妓さんの名前が書かれた千社札をもらって、まずはご挨拶。その華やかさに心も浮き立つ。
「お座敷で、贅を尽くした舞妓さんの衣装を見るのも、京都の工芸や季節感をリアルに体感することのひとつ。友禅染の着物や西陣織の帯、ぽっちりと呼ばれる豪華な帯留めは、舞妓さんが暮らす置屋に伝わる宝。なかには、江戸時代から継がれるものもあるそうです。夏ならば流水や秋の草花といった涼し気な柄ゆきの着物を着て、団扇(うちわ)の花簪(かんざし)を髪に差す。客にひと時の涼をもたらすことも、彼女たちのもてなしなのです」
それぞれの由来をたずねたりして会話を楽しんだら、メインイベントの舞を鑑賞。趣ある三味線の音色が響き、芸舞妓さんが静かに舞う。この時だけは、食事やお酒の手は止めて、じっくり鑑賞するのがマナーだ。
「舞はもちろん、地方さんの三味線も風情があって素晴らしい。芸舞妓さんが日々、お稽古して研鑽する芸を間近に見られる機会です」
舞のあとは、客も参加して楽しむ各種お座敷遊びの時間。屏風を挟んで、芸舞妓さんと客が身振りでジャンケンする「とらとら」や、向かい合って座り、お酒のハカマを取り合う「金毘羅船々」などで盛り上がる。芸舞妓さんとの距離が縮まり気分も上がるが、お酒の飲みすぎや舞妓さんに触れるなど失礼な振る舞いはあくまでタブー。最後まで粋な大人でいたい。
はじめてお座敷遊びをするなら「祇園 静水香」
プレミアムな日本酒と一緒に京料理を堪能
歴史的な街並みが残る祇園・南白川。巽橋(たつみばし)からすぐの石畳の路地に、花街の粋を集めた料理屋が開業した。工夫ある京料理とプレミアムな日本酒のペアリングを堪能できる「祇園 静水香」だ。
希少な日本酒は中田英寿氏が率いる「JAPAN CRAFT SAKE COMPANY」とともにセレクト。人気ゆえになかなかお目にかかれない「十四代」の希少な生詰酒や「作」など、日本酒ファン垂涎のラインナップを誇る。
合わせる料理は近海から届く魚介や京野菜、厳選した和牛を駆使した11品ほどのコース。京都の老舗料亭「祇園丸山」で腕を磨き、その後、東京や海外のラグジュアリーホテルで料理長を歴任した澤田和巳氏が監修する。
18時からはペアリングコース、21時以降はアラカルトでお酒と料理を味わえるから嬉しい限りだ。また、予約の際にお願いすれば、2階の座敷に芸舞妓さんを呼び、粋なお座敷遊びを体験することもできる。
この記事はGOETHE 2024年10月号「総力特集:人生を変える最強レッスン」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら