自分のなかの隠れた思いが見えてくる方法とは
カウンセリングに行くほどではないけれど、なんとなく心が晴れずにモヤモヤしている……。そんなふうに感じる人は、本書を手に取ってみてはどうだろう。
普段、仕事や家庭、人間関係にまじめに付き合っている人であればあるほど、心がSOSを求めているサインを見逃しがちになる。この本は臨床心理士として働く東畑開人(とうはたかいと)氏が、相談者の「心に補助線を引く」ことで気づいた生きることの苦しみや幸せについて語った1冊だ。心の補助線とは、現代の人々が苦しみやすい心の問題を、わかりやすく整理するためのヒントのこと。複雑に絡み合った心に一旦補助線を引いて分解してみることによって、自分のなかの葛藤や隠れていた思いが見えてくる。それを認識することで、怖いと思っていた現実に徐々に取り組むことができるようになっていくという。
何事にも自己責任が求められる今、現代人は自分の心に蓋をしやすい社会を生きている。カウンセリングに来る人たちの苦悩は決して他人事ではなく、「みんなの苦悩」であると著者は言う。世の中になんとなく生きづらさを感じている人にこそ、本書の内容はその心にじわりと染みこんでくるに違いない。
『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』
東畑開人 著 新潮社 ¥1,760
Text=三宅香帆
1994年高知県生まれ。書評家、作家。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。著書に『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『女の子の謎を解く』等がある。