35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」第139回!
意外と考えたことがない!? Nice to meet youの使い方
海外からの隔離期間も短くなり、少しずつ東京の街でも外国人の方をみかけるようになってきました。先日ある企業に取材に行ったところ、先方の都合で少し待合室で私1人が待つことになり、そこにアメリカ英語を話す2人の男性が入ってきました。
彼らも、企業側に待つように言われ、部屋に通されたようでした。
待合室があまりに小さくて、何か話さないと不自然な空間でした。
そこで、こんな風に話かけてみました。
Hi, Nice to meet you. I am waiting for Mr.Sato, you two as well?
(どうも、はじめまして。私は佐藤さんを待っているのですが、あなたたちもですか?)
彼らも“Nice to meet you”と言ってくれ、同じく佐藤さんを待っていると言っていました。
しかしそれ以降会話が続かず、部屋が変な雰囲気になりました。
その後、考えてみたのですが、そういえばあまりネイティブの人が“Nice to meet you”というのを聞いたことがありませんでした。日本語では初めて会った人にはとりあえず第一声で「はじめまして」と言いますし、そのノリで私ばかりが“Nice to meet you”と言い続けて向こうに“Nice to meet you too”と言わせてきましたが、果たしてそれでよかったのか。今更ながらに不安になってきました。
そこでオンライン英語教師に聞いてみたところ。
「間違っちゃないが、そう言われてみれば私はあまり言わないかも」
ということでした。
“Nice to meet you too”は、私が思う「はじめまして」と同様、初対面の相手にしか使えない挨拶です。しかし、直訳してみると「meetがnice」=「会えてよかった」ということになります。
そういえばイギリスでは、初対面で会って1時間ほど話して、去り際にこう言われることがよくあったことを思い出しました。
It was nice to meet you.
「初めてお話できて楽しかったね、出会えてよかったよ。じゃあね」ということでしょう。
つまり、その“meet”が“nice”だったかどうかは、少し話してみてから判断して、去り際に言っていた、ということかもしれません。
「もちろん、あなたが思うように、最初に言ったっていいんだけど。でも実際は〇〇さんの友達とか、〇〇さんの上司とか、なんとなく繋がりがあって、『ああ、あなたでしたか。お話は伺っています、お会いできて嬉しいです』みたいなことかも。あんまり考えたこともなかったわ」
と先生は言ってました。
つまり、なんの関連性もなく、ただ狭い部屋に同席しただけの相手に、突然の“Nice to meet you”は少し不自然だったということ。さらにその後会話が続かないのであれば、なおさら“meet”が“nice”だったとは言いづらく、余計におかしな雰囲気になったのでしょう。
「別に丁寧だから、いいんだけどね。初めて会った人には、名前と、なぜそこに来ているのか言って、スモールトークをして、去り際に“It was nice to meet you”でいいのでは?」
と先生はまとめてくれました。
とはいえ、初対面第一声で「はじめまして」的な挨拶をしたいのが、日本人の性です。であれば、“Nice to meet you”で終わらず、なるべく以下のように会話を続けさせることが大事なようです。
Hi, I am Momoko, nice to meet you. Ken has told me so much about you.
(桃子です。はじめまして。ケンがよくあなたのことについて話しているのを聞いてますよ)
Hi, I am Momoko, I really like your product. It’s awesome to meet you.
(桃子です。おたくの商品大好きなんですよ、お会いできてほんと光栄です)
“Nice to meet you”や“Awesome to meet you”の他にもこんな言い方があるようです。
I’m please to meet you.
It’s pleasure meeting you.
Glad to meet you.
使い方が正しいのかは、わかりませんが、私にはひとつ忘れられない“Nice to meet you”があります。ロンドンの語学学校で一緒だった上海から来た60代の女性と仲良くなり、ずいぶんよくしてもらいました。母親でもおかしくない年齢ですが、クラスメイトということもあり、本当に友達のように話せました(英語では丁寧に話せないので、なんとなくお互い年齢の差を忘れてしまっていました)。60歳を超えても英語を一生懸命勉強し、娘くらいの年齢の私をライバルのようにして頑張っている姿に、何歳になっても新しいことを始めることは大事だと気付かされました。
1年ほど一緒に過ごし、上海に帰る日。もう次はいつ会えるのかもわかりません。最後の挨拶で彼女はこう言ってくれました。
It was nice to meet you.
出会いから1年の月日を振り返って、この“meet”が“nice”だった、会えてよかった、ということでしょう。
別れの日に、出会いの日と一緒に過ごした日々を思い出させてくれる、素敵なフレーズだなと思ったことを、よく覚えています。
Illustration=Norio
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