35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力ゼロレッスン「人のEnglishを笑うな」第89回!
人に夢と書いて“儚い”w
外国人の方にオンラインで日本語レッスンをするようになって9ヵ月が過ぎました。自分の英語の勉強はサボりがちになってきており、このレッスンが、0.5の英語力を取り戻すための最後の砦となっています。
先日、日本語上級者である中国在住のイギリス人男性に、長文読解の課題として、さくらももこさんのエッセイを読んでもらいました。とてもわかりやすく書かれているので外国人の方にもよみやすく、時々文学的な表現も使われているので、日本語上級者の方にとってはとてもいい教材なのです。
そのイギリス人男性は、勉強のため、そのエッセイを自ら英訳して送ってきました。「これで合っているかみてほしい」と言うのです。とても熱心です。そして私にとっては、ずいぶんハードな英語のレッスンになってしましました。
もう、正直にわからないフレーズはわからないと言おう。相手だって言語を学ぶ大変さを知っているのだから。そう腹をくくって、最初に聞いたフレーズはこちらでした。
I learned about transience of life.
この英訳にあたる、もとの日本語の文章はこうでした。
命のはかなさを幼心に知らしめた
子供の頃、父親に買ってもらった「ホタル」がすぐ死んでしまったことから、「命のはかなさ」を学んだ、というシーンで使われたフレーズです。
私は勝手に「はかない」は日本語独自の表現で、英語にはないものだと思い込んでいました。
Transience=はかなさ
といえるのだそうです。本来「一時的なもの」というような意味の名詞で、
ケンブリッジ英英辞典ではこんな例文とともに紹介されていました。
Her paintings are metaphors for the transience and fragility of life.
(彼女の絵画は、命の壊れやすさ、はかなさのメタファーである)
「命が一時的である」というのは、確かに「命のはかなさ」を感じさせるフレーズです。
またこの言葉は、「一時的な」という形容詞にするとTransientとなります。なにも上記のような「はかない」という文学的な表現でなくとも、以下のようにも使えます。
The city has a large transient population.
(その街の人口は、一時的に大きなものになっている)
この場合だと、この街に住んでいる人たちは、永住するつもりはなく、仮住まいの人ばかり、ということになります。
「はかなさ」や諸行無常の考え方はアジアだけかと思っていましたが、言葉の繋げ方によって、しっかりと伝えられるものなのだなぁとこのレッスンで教えてもらいました。
そのお礼に、「はかない」の漢字をイギリス人生徒さんに教えて差し上げました。
「人に夢と書いて“儚い”。夢など“一時的なもの”ということかもしれません」
金八先生の気分で言語の交換ができた日でした。
Fuckの使い方がよくわからない!
「東京はロックダウンが終わったんだ」
そう、ヨーロッパ在住の友人たちのグループSNSにメッセージしたところ、かえってきた言葉はこれでした。
for fuck's sake! we've been in lockdown for almost a year.
なんか、ファック、って言われています。
これは罵られたのでしょうか。そういえば、日常でこの言葉は、日本にいたって映画やテレビ含めてよく聞きます。しかし「よくない言葉だ」と思い込んでいるため、正しい使い方を知ろうともしていませんでした。
for fuck's sake=まじで、頼むよ
もちろん、憤慨やイラつきも含まれているのですが、懇願の意味が強いようです。
「まじかよ、頼むよ、こっちは1年もロックダウンなんだぜ」
ということでしょう。別に私に頼まれてもロックダウンは解除できませんが、「そっちだけずるいよ〜もうお願いだからヨーロッパの規制も緩くしてよ〜」ということなのでしょう。
for fuck's sakeは「もうほんと、お願いだから」という意味の“for God's sake” “for Christ's sake” や “for pity's sake”が変化してできた言葉なのだそうです。
他の使い方も調べていると、こんな例文が出てきました。
He cheated on her again? For fuck's sake.
(彼はまた浮気したの? なんてこった)
この場合は、憤慨の意味が強いかもしれません。
“for fuck's sake”うまく使える自信がないので使いませんが、郵便物の再配達がうまく受け取れなかった時など、心の中で、人知れず、つぶやいています。
Illustration=Norio