都心から郊外への移住や別荘を求める動きが活発になっているなど噂されるが実情はいかに!? 今後の展望も含め、専門家が解説。
SUUMO編集長 池本洋一「ライフステージに応じて住まいを変える時代に」
コロナの影響で、不動産マーケットにふたつの新しい動きが見られました。ひとつは、駅近の賃貸から郊外広めの新築戸建てへの住み替え。在宅ワークが普及し、家の狭さに加え、壁や床の薄さからくる騒音に悩む人が増えた結果です。もうひとつは、密とは無縁の地域への注目。地方移住もそうですが、富裕層の場合、都心近郊のリゾート地にセカンドハウスを求める動きが活発になりました。
海外を含め、なかなか旅行に行かれないので、気分転換する場所を近場で持とうということでしょう。リモートワークが普及すれば、都心から地方への移住が活発になる。そんな声も聞きますが、都心が人気なのは通勤の便だけではなく、魅力的な飲食店、商業、文化施設、多彩な教育施設などが豊富な面でもある。なので、都心の家は手放さずに、新たに別邸を持つというスタイルが選ばれているのだと思います。
この流れは今後さらに加速するでしょうね。というのも、改正旅館業法によって、別荘やセカンドハウスが貸しだしやすくなったためです。貸しだすことで収入を得れば、保有コストが抑えられる。なので、富裕層でなくても、複数の家を所有することが可能になるというわけです。近い将来、私たちが“デュアラー”と呼ぶ、都心と田舎の2拠点生活を楽しむスタイルが当たり前の時代が来るのではないでしょうか。
ひとつの家に長く住み続けるのではなく、複数のエリアに家を持ち、ライフステージに応じて、メインに住む家を変えていく。そんな柔軟な住まい方が、豊かな暮らしにつながるのではないかと思います。
Yoichi Ikemoto
リクルート入社後25年にわたり住宅関連に従事。2011年より現職。SUUMOリサーチセンター長も務め、幅広く活躍。
住宅ジャーナリスト 櫻井幸雄「妻も喜ぶエリア選択が男のロマンを実現する鍵」
首都圏郊外の住宅地に注目が集まる一方、世帯年収が高い共働き世帯は都心のマンションを物色し始めました。通勤再開に伴って、電車に乗る時間が短いとか自転車で通えるといった職場へのアクセスのよさが見直されたからです。
もっとも富裕層の動きはこれとは別。都心の家は持ちながら、別荘を探すケースが増えました。特に注目されているのは、都心からのアクセスがいい湘南エリアや箱根、熱海や軽井沢。以前から人気の京都や札幌、沖縄もそうですが、これらの場所に共通するのは、食と買い物が充実していること。
男性が別荘に求めるのは、遊び心溢れる設計や眺望の素晴らしさなどのロマンですが、女性が重視するのは“暮らしやすさ”。どんなに素敵な物件でも、周囲に美味しい店がないとか、買い物が不便だと、行きたがりません。その条件を満たすのが、軽井沢であり、湘南や京都なのです。
「別邸は男のもの」と言われますが、エリアは妻も満足する場所を選び、家造りは夫主体でというのが、夫婦円満の秘訣でしょう(笑)。もっとも軽井沢は、夏は過ごしやすいけれど、冬は極寒。なので、夏は軽井沢、冬は湘南など、別邸も複数持ち、季節によって使い分けるのがベストかもしれませんね。
それからコロナ以外に昨今の不動産市場に影響を与えているのが自然災害。近年豪雨や台風、竜巻などの被害にあった際、問題になるのがライフラインの復旧。これは過疎地より都市部の方が断然早い。そう考えると、密を避けるといっても山の中の一軒家ではなく、地方の都市部が安心でしょう。
Yukio Sakurai
年間200物件以上を取材し、メディアで最新住宅情報を発信。著書『知らなきゃ損する! 21世紀マンションの新常識』など。
Illustration=澁谷玲子