2025年10月9日(木)から、PGAツアー「ベイカレント クラシック」が横浜カントリークラブで初開催される。従来のZOZOチャンピオンシップに代わる日本開催の一戦は、選手にとっても観客にとっても未知の舞台だ。果たして世界トップレベルの選手たちが、どのようなプレーを繰り広げるのか。今回は、その舞台で活躍が期待される注目選手たちを紹介したい。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

タイガーの系譜を継ぐ新星と南アフリカが生んだ飛ばし屋
まず注目したいのは、カール・ビリプス(24歳)だ。
オーストラリア出身のビリプスは、7歳と9歳で全米キッズゴルフ世界選手権を制し、“天才少年”としてその名を知られる存在となった。スタンフォード大学時代には平均スコア71.04を記録し、タイガー・ウッズ(70.96)に次ぐ歴代5位に位置するなど、アマチュア時代から注目を浴び続けてきた。
大学卒業後はPGAツアー・ユニバーシティ制度を経てPGAツアー下部の「コーンフェリーツアー」へ進み、4試合目のユタ選手権で初優勝。2024年の同ツアーポイントランキング19位に入り、PGAツアー昇格を果たした。
下部ツアーでは、飛距離326.6ヤードで3位、パッティングでも7位につけるなど、飛距離とグリーン上の強さを兼ね備えたオールラウンダーぶりを発揮した。
そして迎えた2025年シーズン、昇格後わずか3試合目で「プエルトリコ・オープン」を制覇。最終日に64を叩き出し、終盤の3連続バーディーで勝負所の集中力を発揮し、勝利をつかんだ。
勝利後は、タイガー・ウッズの新ブランド「サンデーレッド」とアンバサダー契約している縁もあり、タイガー・ウッズ本人から直接電話で祝福のメッセージを受けたという。
2025年シーズンはパーブレイク率やイーグル数でも上位に入り、攻撃的なプレースタイルで新たなスター候補として注目を集めている。
続いて紹介するのは、南アフリカ出身のアルドリッチ・ポットギーター(21歳)。2022年に17歳で「全英アマチュア選手権」を制し、歴代2番目の若さで名を刻んだ。
2023年にプロ転向すると、翌年のコーンフェリーツアー「バハマズ・グレート・アバコ・クラシック」で19歳133日の史上最年少優勝を達成。ランキング29位でシーズンを終え、PGAツアー昇格を決めた。
昇格後は、2025年6月の「ロケット・クラシック」では5ホールに及ぶ三つ巴のプレーオフを制し、ツアー初優勝を飾っている。
今季は平均ドライビング距離327.4ヤードで堂々のツアー1位。2位のローリー・マキロイに4ヤード差をつける圧倒的な飛距離を誇る一方、ショートゲームに課題があり成績に波があるのも特徴だ。
ベイカレント クラシックでは、爆発力あふれる攻撃的ゴルフがハマれば優勝争いに食い込む可能性は十分にあるだろう。
ビリプスとポットギーターは、ともに“天才少年”として名を馳せ、早くもPGAツアーで勝利を挙げた新世代の代表格。彼らのダイナミックなプレーは、日本の観客を大いに魅了するに違いない。
実績のある日系スター、カート・キタヤマにも注目
日系アメリカ人のカート・キタヤマ(32歳)は、父が日系3世、母が日本人で、日本に住んだ経験はないものの和歌山県に親戚を持つなど、日本と深い縁を持つ選手だ。
2015年のプロ入り後は下部ツアーやアジア各地を転戦し、2018年には日本ツアーとの共催大会「ダイヤモンドカップ」で4位に入るなど、日本のファンにも早くから知られていた。
2019年にはDPワールドツアー参戦3試合目で初優勝し、その3ヵ月後に2勝目を挙げるなど、順調に実績を重ねる。2021-22年シーズンからはPGAツアーに本格参戦し、2023年「アーノルド・パーマー招待」で初優勝。そして2025年7月には「3Mオープン」で2年ぶりのツアー2勝目を飾った。
この大会では、コーチのクリス・コモの助言を受け、3日目に「60」をマークして急浮上。最終日も序盤からバーディーを重ね、ハイライトとなったのは14番パー4。フェアウェイバンカーから池越えのグリーンを果敢に狙い、ピンそばに寄せてタップインバーディーを奪った場面は圧巻だった。
身長170cmながら、平均318.1ヤード(ツアー6位)の飛距離を誇り、鋭いアイアンショットとの組み合わせでバーディーを量産するプレースタイルが持ち味。ベイカレント クラシックでも、キタヤマの豪快かつ切れ味の鋭いショットに注目してほしい。
PGAツアー随一の飛ばし屋に学ぶクラブの反動
飛ばし屋のポットギーターのスイングには、飛距離不足に悩むアマチュアが学ぶべきポイントが詰まっている。特に注目したいのは、トップで「クラブの反動」を生み出し、シャフトのしなりを最大限に活かしている点だ。
この「反動」とは、トップで一瞬ふわりと“間”を作ることでシャフトがしなり、エネルギーが蓄えられる現象を指す。釣竿を遠くに振るときの切り返しをイメージするとわかりやすい。
反動を作るには、バックスイング序盤で勢いをつけ、腕が地面と平行になるあたりで減速。そのまま惰性でクラブを上げ、切り返しに入ることでシャフトがしなり、力が蓄えられる。
逆に、トップの形を意識して最後までクラブを上げようとしたり、バックスイングを上げるのが遅い人は、この反動を活かせていない可能性があるので注意してほしい。
さらに左足のヒールアップと連動させることで下半身主導の動きが生まれ、タメが深まることで飛距離は一層伸びる。トップで「反動」を活かすスイングは、飛距離不足に悩むゴルファーにとって改善の糸口となるはずだ。
反動を使って飛距離を伸ばす動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。