吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。今回はZOZOチャンピオンシップで優勝したコリン・モリカワ選手に学ぶパット術。
隙の無い勝ちっぷりで貫録を見せたコリン・モリカワ
日本で開催される唯一のPGAツアー、ZOZOチャンピオンシップ。2023年10月19日~22日、習志野カントリークラブで開催された今回の大会では、実力者のコリン・モリカワが2位に6打差をつけて圧勝し、約2年ぶりの優勝を果たした。
モリカワは初日に6アンダー・64でトップに立ち、2日目は強風に苦しめられたものの、3日目は66のスコアで順位を上げ、最終日は7バーディーノーボギー・63の完璧なゴルフでメジャー2勝の貫録を見せつけてプロ6勝目を手中にした。
今大会は7079ヤードパー70の短いコースセッティングということもあり、気持ちよくドライバーを打てるホールが少なく、レイアップをしているシーンをたびたび目にした。
そのため、ティーショットは飛距離よりも方向性が求められ、セカンドショットもアイアンの正確性が重視された。
そうしたコースの特徴がモリカワに合っていたこともあり、定評のある正確なショットでコースを攻略したのだろう。
モリカワは練習日からショットの調子がよく、スイングが安定していた。
以前はフェースのシャット度合いが強く、ダウンスイングの体の回転度合いが大きいスイングだったが、今大会ではフェースの向きが以前よりもスクエアになり、体の動きも適切なタイミングで連動していた。それによって振り遅れのミスがなくなり、以前にも増してショットの精度が高まっていたといえる。
最終日のバックナインでは、優勝争いの緊張感からスコアを崩すかと思われたが、パッティングが冴えわたった。
特に最終日17番のパーパット、18番のバーディーパットは素晴らしく、最後まで全く隙のないゴルフだった。
最終日にボギーフリーの完璧なゴルフで逆転勝利をしたことは、モリカワにとって大きな一勝となったはずだ。モリカワほどの選手になると、ただ勝つだけではなく、勝ち方も重要になる。全く隙のない、まさに一流選手の勝ち方だった。
モリカワは大学時代に世界アマチュアランキング1位になるなど実績を挙げ、2019年にプロに転向。2020年の全米プロ選手権でメジャー初制覇を果たし、翌年には全英オープンも制した。メジャー2勝はいずれも初出場での快挙となった。
モリカワという苗字は日本にルーツがあり、モリカワの父方の祖父母は日本からハワイに移住したという。本人はロサンゼルス出身で、日本に関してはあまり詳しくはなかったようだが、試合で来日する機会が増え、日本への関心も高まってきたようだ。
今回は試合前に「予約が取れない名店」としてしられる寿司店「すきばやし次郎」を訪れ、職人技の寿司に感動したという。
また、優勝後のインタビューでは「日本人の血を引く自分としては、この大会でプレーできてうれしい」と語り、「日本で勝てたことには特別な意味がある」と祖先の国への思いを口にした。
ソーグリップでパッティングが安定
モリカワはショットでは毎年トップクラスの成績を残すが、グリーン上のプレーに苦しんできた。そのため、ソーグリップという変則のパッティンググリップを採用している。
ソーグリップは右手親指の付け根と残りの4本の指の第二関節あたりでクラブを挟むようにして持つパターの握り方で、右手の使い過ぎを防ぐ効果がある。
ソーグリップは往年の名選手、マーク・オメーラが採用していることで知られるグリップで、パッティングに苦しんでいたモリカワがオメーラから「ソーグリップを試してみてはどうか」とアドバイスされたという話は有名だ。
ソーグリップの「ソー」はノコギリという意味で、右手小指の外側部分をノコギリの歯に見立てて飛球線と平行に動かすようにしてストロークをする。そうすることで、パターを真っすぐ動かしやすく、軌道が安定するメリットがある。
ソーグリップのポイントは、左サイドとパターを一体化させてストロークすることだ。右手は柔らかく添えるだけで、動かす意識の配分は左右で7対3というイメージでいいだろう。
右手はあくまでもストローク軌道をガイドする役割に留め、左サイドを主体としてストロークをしてほしい。
ソーグリップは短いパットで右手を使いすぎてしまう人に効果があるパッティンググリップだ。ショートパットに不安がある人は、是非試してみてほしい。
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吉田洋一郎/HIROICHIRO YOSHIDA
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。