今回は、バックスイングについて。連載【吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】とは……
【アウトサイドからインサイドに切り返すAスイング】
右に大きく曲がるスライスが直らず悩んでいるアマチュアゴルファーは多い。スライスの中でも、ダウンスイングでクラブがアウトサイドから下りてインサイドに抜ける「アウトサイドイン軌道」のカットスライスは、ボールが大きく右に曲がるだけではなく、飛距離も出ないためスコアメイクに苦しむ。
カットスライスになっている人は、バックスイングでクラブを内側に上げている場合が多い。バックスイングをインサイドに引きすぎると、体と腕のシンクロが崩れて振り遅れた状態になり、腕を振り戻す補正の動きによってクラブを外側から下ろしてしまう。
腕振りスイングによるカットスライスを解消するために最適なのが、「Aスイング」を取り入れた練習だ。Aスイングというのは、アメリカの著名なゴルフコーチのデビット・レッドベターが提唱したスイング理論で、Aスイングを取り入れたリディア・コが史上最年少の17歳9か月で女子世界ランキング1位になったことでも知られている。
Aスイングの特徴は、バックスイングでクラブをアウトサイドに上げ、切り返しでインサイドから振り下ろす独特なスイング軌道を描くことだ。このAスイングを練習で取り入れることで、バックスイングでインサイドに引き込む動きを矯正し、体と腕がシンクロした適切なダウンスイングを実現することができる。
【体の回転を使ってアウトサイドに引き上げる】
2013年にレッドベターから直接Aスイングを学んだ際、その独特なスイング軌道に驚いた。特にバックスイングで左腕が地面と平行になった時に、前傾角度とシャフトの角度が同じになるのには面食らった。それまでレッドベターはバックスイングとダウンスイングがほぼ同じ軌道のオンプレーンスイングを提唱してきたが、真逆とも言えるいわゆる「8の字」の変則的なスイングを推奨しはじめたことに戸惑った。
しかし、レッドベターによると、この8の字のスイング軌道こそが、練習量の少ないアマチュアゴルファーの役に立つという。手や腕を一切使わずに体の回転によってバックスイングを上げると、クラブはアウトサイドに上がる。トップ・オブ・スイングでは、右腕が内旋した状態になるため、アウトサイドからクラブを振り下ろすことは難しく、無理に振り下ろしてもクラブは地面を叩いてしまうだけだ。そのため、右腕を外旋させてシャフトを倒すようにしてインサイドから下ろさないとダウンスイング動作ができない。つまり、Aスイングでは手や腕を使わずに体の回転でアウトサイドにクラブを上げることによって、強制的にインサイドからクラブを下ろすことを促すスイングなのだ。
【Aスイングの2つの注意点】
Aスイングを取り入れる際に注意したいことは2点ある。1つ目は手や腕を使わず、体の回転でバックスイングをすることだ。両脇を締めて手先を使わずに体と腕をシンクロさせた状態で上半身を回転させ、左腕が地面と平行になった時に、シャフトの角度が前傾姿勢と同じなるようにチェックしてみてほしい。今までクラブをインサイドに引き込んでいた人は、右前腕を内旋させるようなイメージでバックスイングをすることで、今まで行っていたクラブをインサイドに引き込む動きを解消することができるだろう。
2つ目に重要なのが、切り返しの下半身の動きだ。ダウンスイングで右腕を外旋させる動作が入るが、この動きは手や腕だけで行わないようにしてほしい。切り返しで左足を踏み込む動きに連動してクラブが下りてくる感覚を持ちながらダウスイングを行ってほしい。
このようにカットスライス解消に効果のあるAスイングだが、極端にスイング軌道を変えてしまうとプレーに支障が出るため、実際のラウンドでAスイングでプレーすることはオススメしない。Aスイングはあくまでも練習ドリルとして取り組み、インサイドからクラブを下ろす動作や感覚を身に付けるだけで十分だ。
今までバックスイングでインサイドにクラブを上げ、アウトサイドから振り下ろしていた人にとっては全く逆のスイング軌道となるため、最初は強い違和感があると思う。しかし、それを我慢して練習していれば、アウトサイドインのスイング軌道が徐々に矯正されていくはずだ。
Aスイングの練習によって、適切なスイング軌道を身に付けてスライスを克服してほしい。
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連載【吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】とは……
世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子によるゴルフレッスン。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。