第一線で活躍するトッププロが愛用するゴルフクラブや高機能なゴルフウェア。名品の陰には匠の存在がある。また、アイテムだけでなく、コースコンディションにも匠は存在する。今回は、PGA TOURも称賛する「アコーディア・ゴルフ」のコース管理人に迫る。
松山英樹プロの優勝に沸いたPGAツアーの影の立役者
2021年10月、松山英樹プロの優勝に沸いたPGAツアー、ZOZOチャンピオンシップ。その舞台となり、選手や関係者に「グリーンもラフもフェアウェイも完璧」などと称賛されたアコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブのコース管理を指揮するのが、アコーディア・ゴルフのエリアコースマネジャー、瀧口悟。PGAとタッグを組むのは今回が4回目。本国のコース責任者から「タキ」と呼ばれるほどの信頼を得ている、コース管理の第一人者だ。
「PGAが求めるのは、フェアかつチャレンジした選手が報われるコースづくり。そのため、芝の長さやフェアウェイの位置など、大きく手を入れました」
このように大会のニーズや、日頃利用する客層に合わせ、適切なコースに仕上げるのが管理者の役目。現在南関東にある6つのゴルフ場の管理を統括する。
「グリーンひとつとっても、名門と呼ばれる成田GCは10フィートを確保し、傾斜がある習志野CCは9.5フィート、初心者利用が多い四街道GCは8.5フィートにと、利用者のニーズに応じて調整しています。また、同じコースでも、季節や天候、競技会に合わせ、ティーやカップの位置、グリーンスピードを変えるなど、何度訪れても飽きることなく楽しめるよう工夫しています」
常にベストコンディションのコースを提供する。そのために不可欠なのが「科学的データ」。日照時間や気温、降水量に、芝に含まれる窒素やリン酸といった数値、土の貯蔵養分など、コースに関するデータをすべて測定。自社の研究施設で分析し、芝の生育プログラムなどを綿密に計画するという。
「アコーディアのゴルフ場は、全国に132のコースがあり、約1600人の管理スタッフが働いています。経験や勘だけに頼ってしまうと、担当者によるばらつきが出ますが、科学的データに基づいて管理すれば、どこで、誰が行っても、"アコーディア水準"を維持できますから」
こうした効率的なシステムに加え、瀧口が胸を張るのが「管理スタッフの団結力」。2019年開催のZOZOチャンピオンシップでは、豪雨で複数のホールが水没。一時は中止も危ぶまれたが、瀧口のもとに集まった総勢120名のスタッフが夜を徹して復旧作業を行い、大会は無事に遂行された。
「コース管理はひとりではできません。携わるスタッフが、同じ気持ちで、同じ目的に向かって手を携えていかなければ……。それを再認識する出来事でした。『芝と会話しろ』とよく言われますが、それ以上に、日頃からスタッフと会話をし、信頼関係を築き、想いを共有することが大切。私はそう思っています」
科学的データと団結力という武器を手に、さらなる高みを目指し、瀧口は挑み続ける。