第一線で活躍するトッププロが愛用するゴルフクラブや高機能なゴルフウェア。名品の陰には匠の存在がある。
ツアープロコーチ 奥嶋誠昭
2019年のツアー初優勝から2年、今年は東京オリンピックの銀メダルをはじめ、数々の大会で優勝し、獲得賞金2億円を超えるなど、快進撃を続けている稲見萌寧(もね)プロ。その活躍の立役者が、’19年から稲見を指導する奥嶋誠昭だ。
「僕の力ではなく、もともと実力のある選手が、ちょっとしたきっかけで開花しただけです」
飄々(ひょうひょう)とした様子でそう謙遜するが、稲見とのやりとりはハード。「お互い言いたいことをはっきり口にするタイプ」だからか、ツアー中、激しくやり合う姿が度々目撃されている。
「稲見が僕に当たることもありますが、そうやってガス抜きさせるのもコーチの仕事。もっとも僕は、対等な関係だと思っているので、遠慮せずに言い返しますけど」
ゴルフはメンタルの戦い。奥嶋の"自然体"が、稲見をリラックスさせ、快進撃を後押ししているのかもしれない。
「いやいや、好調の理由はパットです。パッティングの際、右腕を少し離すようにアドバイスしたら、精度が格段に上がり、好スコアにつながったんですよ。もちろん僕は、ゴルフの知識は誰よりもあると自負しています。でも重要なのは、いつ、どんな言葉で伝えるか。パットに関しては、稲見が悩みまくっている時に伝えたので、素直に聞き入れてくれたのでしょう。普段の練習で指摘しても、きっとスルーされていたんじゃないかな(笑)」
喧嘩がつなぐ二人三脚、強みを活かした効果的な戦略が稲見の躍進を支えていたのだ。