世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム165回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
【カラーに止まったボールをどのクラブで打つのか?】
アイアンでグリーンを狙ったものの、惜しくも届かずボールがカラーで止まってしまったという場面。あなたはどのクラブを選択するだろうか。
「グリーンにはまだ乗っていないから、ウェッジでいつもどおりに打とう」とか、「ショートアイアンを持ってランニングアプローチでピンに寄せよう」と考える人もいると思う。アプローチに自信があるのなら、それも良い選択だ。しかし、クラブ選択の際にアプローチの成功確率以外のことを考えている場合は注意が必要だ。
以前ラウンドレッスンをしたとき、ボールがグリーン面まで1ヤードほどのカラーにある状況で、サンドウェッジを使ってアプローチをしていたクライアントがいた。カラーの芝は短く刈ってあり、明らかにパターで打った方が成功確率が高い状況だった。そのような状況にも関わらず、なぜパターで打たなかったのか尋ねたところ「カラーからパターで打つなんて初心者みたいでカッコ悪いじゃないですか」という答えが返ってきた。
クラブ選択において、成功確率の高いクラブを持つのが鉄則だ。しかし、人からどのように見られるかという「邪念」が入ることで、難しいクラブを持ってミスをしてしまうことがある。
例えば、左右OBの狭いホールのティーショットで、「カッコ悪いから」という理由でドライバーを持ってOBをしてしまった経験はないだろうか。アイアンで打てばフェアウェーをとらえてスコアをまとめられる確率が高いが、「ドライバー持たないんですか?」などと同伴者に言われないかビクビクするのを避けるためドライバーを「持ってしまった」ことがあるかもしれない。
カラーからも同様に、同伴者の目が気になってウェッジを持ち、トップしたりダフってしまってミスをするケースがある。グリーン周りの小技に自信があるという人でない限り、カラーからボール打つ場合は、成功確率の高いロフトの立ったクラブであるパターを選んだほうがいいだろう。
【プロでもカラーからパターを持っている】
前出のクライアントのように「カラーからパターで打つのは初心者」というのは、ただの思い込みだ。プロでもグリーン周りでパターを持つケースは多い。特にコース設定がそれほど難しくない米シニアツアーのチャンピオンズツアーでは、グリーン周りからパターを選択する選手が非常に多い。カラーからパターで打つシーンだけではなく、短めのラフや刈り込んだフェアウェーからでもパターを打つシーンをよく見る。ボールを上げるより、転がしたほうが寄る確率は高まるため、米シニアツアーの熟練されたアプローチスキルを持つプロでも、最初にパターで打てるかを考えている。プロより練習量もスキルも劣るアマチュアは、ボールを上げてピンそばに寄せられるかを考える前に、まずはパターを持って寄せられるかを考えたほうがいい。
グリーンの外からパターで打った経験のない人は、「芝の抵抗が大きくてカップまで届かないのではないか」と心配になるかもしれない。そこで、カラーから距離を合わせる際に「仮想カップ」をイメージしてほしい。本当のカップとは別に仮想のカップを設定し、そこにボールを寄せるイメージを持ってパットすることで距離感を調整するのだ。カラーの場合、芝の抵抗があるので仮想カップを本来のカップの位置よりも奥に設定する。カラーの幅が3メートルほどあれば、カップの3メートル先に仮想カップを設定して打つと距離感が合いやすくなる。
カラーからボールを打つ際の手順だが、まずは距離感を合わせるために、ボールの後ろで仮想カップを見ながら素振りをしてほしい。目からの情報をもとに振り幅を確認することで、距離感を合わせやすくなる。次に、アドレスに入ったらカラー部分に気を取られないよう、近くを見ないようにするといいだろう。近くを見るとカラー部分が気になってしまい強弱に影響が出るので、できるだけ仮想カップなど遠くを見て手前のカラー部分を気にしないことが大事になる。
カラーからパターで打てば、距離も合わせやすいし、大きなミスをすることも少ない。普段から練習グリーンでカラーからボールを打つ練習をして、感覚をつかんでおくことが大切だ。
見栄や思い込みによってグリーン周りで難しいクラブを選択するとミスをする確率が高まってしまう。グリーン周りでクラブの選択に迷ったら、まずは安全で成功確率が高いパターを持てるかを考えてみてほしい。