世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム71回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
ジャンプしながら素振り
昨年の全英オープンで、イタリア人として初めて優勝を遂げたフランチェスコ・モリナリ。身長172cmとプロの中では小柄な体格ながらメジャーで上位に食い込めたのは飛距離が伸びたことが大きい。2015年は286.7ヤードだった飛距離が2018年には301ヤードに伸びている。今年37歳を迎えるモリナリが30代半ばで平均飛距離を15ヤードも伸ばしたのはなぜだろうか。
ツアーの練習場でモリナリをチェックしていると、時おり独特の素振りをしている場面に遭遇する。テークバックでヒールアップを行い、その後力をため込むようにゆっくりと左ひざを曲げてグーッと沈み込む。この時はまだクラブを振り下ろしていない。
その後少し反動を付けるようにして、沈み込みで曲がった左ひざを勢い良く伸ばす。この伸ばす動作と同時にクラブを振り下ろしてくるのだ。下半身は「上下への伸縮」、上半身は「右から左への回転」と、一見すると関係のない動きに見える。しかしこの2つの動きは連動しており、それがモリナリのスイングのエネルギー源になっているのだ。
連動の仕組みはこうだ。沈み込んだ左ひざを伸ばすことでひざだけでなく左肩が持ち上がり、左サイドの足から肩にかけて1本の筋が通っているかのようにピンと伸びる。この伸び上がった左肩がクラブを引っぱり下ろしてきて、上半身を回転させるのだ。
モリナリはPGAツアーの他の選手に比べ身長が低いため、腕の長さも短く遠心力が小さくなりがちである。そこでこの左サイドを瞬時に伸ばすことで、クラブを速く振り下ろす勢いを生んでいるのだ。
変則スイングのホソンに似たフィニッシュ
さらにモリナリは、このジャンプ素振りのあとに勢いあまって右足が目標方向出て歩き出すようなフィニッシュになることがある。左サイドの伸ばすことで重心が左足に乗り、左足1本で立っている状態になるためだ。このフィニッシュは、PGAツアーでも変則スイングで話題を集めたチェ・ホソンのそれと酷似している。
ホソンは20代になってから試行錯誤の上、独学でスイングを習得したというが、彼にも「体の柔軟性がない」というウィークポイントがあった。それを補うために、ホソンも地面を蹴るような動作を入れて、クラブを振り下ろす勢いをつけている。理由は異なるが、ウィークポイントを消すためにたどり着いた両者のスイング。地面を蹴った反動「地面反力」を武器に飛距離を生み出しているのだ。
アマチュアが地面反力を試す場合、まずはシャドースイングを行ってほしい。ボールを打つとどうしても意識が上半身に向かってしまい、下半身の意識が薄くなってしまう。まずは左足の意識を濃くするために左足一本でスクワットをしてみるといいだろう。その際に左ひざが前に出ないようにして、お尻を後ろに出して骨盤が前傾する動きを意識したい。
慣れてきたら両足で立ち、ダウンスイングで左足を踏み込みインパクトでその重みを抜く「抜重」を意識しながらシャドースイングをするといいだろう。その後素振り、打球練習とステップアップしてシャドースイングの感覚を残しながら練習を重ねることで地面反力を使う感覚が養われていく。足を使ってスイングをすることが自然な動きに感じられるようになればいつの間にか飛距離は伸びているだろう。