世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム56回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
形ではなく順番が大事
「運動連鎖」という言葉を知っているだろうか。運動の際に行われる関節運動を行うことで、隣接する関節が連動して動くことを指す。例えばボールの投球動作。遠くに投げるためには下半身を使わずに腕だけを振るより、左足を大きく踏み出したほうが遠くに投げられる。これは足を踏み出すことで多くの関節を連動させて力を腕に伝えているからだ。
腕だけを動かす前者の投げ方は、連動して動く場所が肩から指先までの範囲内に限られるが、後者のように全身を連動させることで勢いがつき、反動や遠心力といった腕以外の力を利用することができる。これはバスケットボールのシュート然り、サッカーのキック然り、多くのスポーツに共通する動きだ。いくつもの部位が動く順番と、そのタイミングが出力するエネルギーの大きさを決めるのだ。このように運動連鎖は、より大きな力を生み出すための前提となる動きといっても過言ではない。
理屈を語れば運動連鎖を重視するのは当然のことのように聞こえるが、ゴルファーは連鎖する順番やタイミングより、形を重要視しがちだ。連続写真を参考にする際も特定の部位だけを抜き出して形を模倣しようとするし、鏡やビデオでフォームをチェックする際には、動きを止めて確認しがちだ。
もうお分かりだろうが、写真に切り取られた1コマは運動連鎖が起きている一部を切り取ったものに過ぎないので、そこだけをまねしても正しい動きは身に付くことがない。重要なのは動かす順番とタイミングだ。
下から上の順番で動かす
ゴルフのスイング、特に飛距離を出すためのドライバーショットはクラブヘッドを速く振ることを目的としている。クラブを持っているのは手なので、その手を思い切り振り下ろせばある程度ヘッドを速く振れるが、残念ながらそれが最速ではない。
全身を使って反力や反動、遠心力といった、自分の手で振り下ろす以外の力を使ったほうがヘッドは速く動く。このような自分の体が出す以外の力を「外力」と呼ぶが、外力を作り出すには運動連鎖が不可欠だ。
このコラムでも何度か紹介しているが、ゴルフのスイングは下半身から動き出し、最終的には腕やクラブといった末端部分が「振られる」状態になることで、最速のヘッドスピードを出すことができる。
そのため始動も下半身から行う必要がある。下半身から動き出すことでダウンスイングも下半身→上半身の順で動かしやすくなる。下から上への運動連鎖がイメージしづらい人は、まず足の裏に意識を集中させる事をおすすめしたい。アドレスの状態では土踏まずの前後に体重がかかる。それが始動のタイミングでかかと側にずれる。この動きによって体は回転し、手が先に始動することにはならない。
普段、歩いている際でもつま先、土踏まず、かかとの3点を意識して、どこに体重がかかっているのかを把握できるようになると、スイングでもスムーズな下半身始動ができるようになるだろう。