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FASHION

2021.10.13

ジェフ・ベゾス、盛田昭夫らの装いに宿るビジネス哲学

世界的な成功を収めた経営者たちは、総じてお洒落である。そこにはファッション通とは一線を画す、イメージ戦略や知的演出、そして世界を変えたといっても過言ではない、傑出の経営哲学が宿っている。

装いに宿るビジネス哲学!洒脱な経営者たち

アマゾン 共同創業者/取締役会長 ジェフ・ベゾス

ジェフ・ベゾス

Tシャツにジーンズ、スニーカー。こうした米国のテック企業の経営者の典型的ファッションスタイルは、自由を重んじるインターネット世界の擁護者たらんとする、彼らの理念の表れといえる。だが、破格の成功を納めたアマゾンの創業者で、先日会長職に退いたジェフ・ベゾス氏は、発表会などはもちろん、気の置けない席でも人前に出る際は仕立てのいいジャケットかスーツを着ることが多い。

それは規律や厳格さを重視するアマゾンの社風に通じるが、他者への威圧感はない。そんなベゾス氏はイタリアのアパレル企業会長ブルネロ・クチネリ氏と親交があり、同氏が実践する人間中心の企業理念「人間主義的資本主義」についても語り合い、同社のジャケットも愛用しているという。ベゾス氏の帝国的経営には賛否両論あるが、そのエレガントなスーツ姿には、人々への礼節や尊敬される経営者であろうとする誠実さがうかがえるのだ。

JEFF BEZOS
1964年アメリカ・ニューメキシコ州生まれ。プリンストン大学で電気工学と計算機科学を学び、’93年に妻とともに自宅ガレージでアマゾンを起業。ECを中心に事業の多角化を推し進め、現在では世界一の資産家となった。

 

ダイソン 創業者/チーフエンジニア ジェームズ・ダイソン

ジェームズ・ダイソン

掃除機、扇風機、ヘアドライヤー。英国ダイソン社の製品は、プロダクト自体は決して目新しくない。だが、どれもが目にしたことのない革新的なデザインと、既存のプロダクトを凌駕する圧倒的な機能性を有し、いつも驚嘆させられる。それは創業者にして自らをチーフエンジニアと称するジェームズ・ダイソン氏が実践する、既存のプロダクトの問題点を独創的なアイデアとテクノロジーによって進化させる、開発プロセスの賜物(たまもの)である。

そうした革新性や独創性は、ダイソン氏自身の装いにも見て取れる。新製品発表会やメディア取材などではカジュアルからスーツまで幅広い着こなしで登場するが、服装のどこかにモードやアバンギャルドを絶妙なさじ加減で効かせているのだ。ファインアートやインテリアデザインを学び、エンジニアリングの世界に足を踏み入れたダイソン氏。その装いはダイソンのプロダクトを代弁するように、洗練された無二の存在感を放っている。

JAMES DYSON
1947年イギリス・ノーフォーク州生まれ。ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズや英王立美術大学で学び、’93年ダイソンを創業。独自開発の革新的なサイクロン(遠心分離)式掃除機で世界的家電メーカーとなる。

 

フィアット 元名誉会長 ジャンニ・アニェッリ

ジャンニ・アニェッリ

腕時計をシャツのカフスの上から巻く。ボタンダウンシャツの襟ボタンを外す。スーツに編み上げブーツを合わせる。タイの小剣を大剣より長くして結ぶ。そして、スーツのボタンを外したままにする。これらはすべて、イタリア最大の自動車メーカー、フィアットの3代目社長で稀代の洒落者、ジャンニ・アニェッリ氏が実践していた着こなしである。

どれもがいわゆるハズしであり、威厳が必要な経営者にはふさわしくないように思われる。だが、だらしなさは皆無で、むしろ優雅さや余裕すら感じさせ、威圧感を和らげているように見える。そして何より個性的で、今見ても軽妙洒脱だ。アニェッリ氏はフェラーリをはじめ数々の自動車メーカーを傘下に納め、国際市場にも積極的に参入。フィアットを世界的自動車メーカーへと躍進させた辣腕経営者。今も世界中の洒落者たちを魅了し続ける、その服装術と自己演出力が経営の一助となったことは、想像に難くないのだ。

GIANNI AGNELLI
1921年イタリア・トリノ生まれ。フィアット創業者ジョヴァンニ・アニェッリの孫として生を受け、父の早世によって弱冠24歳でフィアットに副社長として入社。’66年に社長に就任し、社を飛躍的に成長させた。2003年没。

 

ソニー 共同創業者 盛田昭夫

盛田昭夫

高度経済成長の代名詞として、高品質かつ最先端のMade in Japan製品を牽引し、グローバルな成功を納めたソニー。その共同創業者にして初代取締役である盛田昭夫氏が、1976年に創刊した若者向け雑誌『ポパイ』を愛読していたことはあまり知られていない。当時55歳。社長から会長となった時期だ。

そんな盛田氏は若い頃よりテニスやスキーを嗜み、経営者としてのダンディなスーツ姿とは対照的に、プライベートではジーンズをこよなく愛したという。世界を席巻した米国のユースカルチャーを紹介する雑誌を読み、ジーンズで休日を過ごすことは、最新の若者文化を知り、体感することであった。そうした経験こそが盛田氏の発案で’79年に製品化され、世界中の若者が求めたポータブルオーディオプレイヤー「ウォークマン」誕生につながったのだ。そう、『ポパイ』が伝えた憧れのアメリカ西海岸スタイルにウォークマンが不可欠だったのは、決して偶然ではないのである。

AKIO MORITA
1921年愛知県生まれ。400年以上続く造り酒屋の15代目跡取りであった。大阪帝国大学にて物理学を学び、’46年に井深 大と東京通信工業(現ソニー)を創業。優れた経営手腕で“世界のソニー”を築き上げる。’99年没。

 

Illustration=黒木仁史

DIRECTION=島田 明

TEXT=竹石安宏

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