絵本「えんとつ町のプペル」(にしのあきひろ著)を題材としたファミリーミュージカル「えんとつ町のプペル」 in大阪が、2022年12月3日(土)~15日(木)大阪なんばYES THEATERにて上演中だ。大阪在住のフリーライターが観劇!
西野亮廣の「えんとつ町のプペル」、期待の大阪オリジナルメンバーで再演
累計70万部超のベストセラー絵本、西野亮廣氏の「えんとつ町のプペル」のミュージカルが、ついに大阪にやって来た。初演は2021年11月、東京キネマ倶楽部。チケットは即日完売、配信上演では1万名を超える動員数を記録するなど、大きな話題を呼んだ日本初のオリジナルミュージカルだ。会場は「なんばグランド花月」の地下にある「YES THEATER」。
一歩足を踏み入れると、天井にはプペルが仕立て直したと思しき服が舞台に向かってずらりと垂れ下がり、場内は薄っすらと煙で覆われ、早くも物語の世界に誘われる。客席から舞台を見下ろすと、まるで「えんとつ町」を雲の上から眺めているようだ。
突然、場内を太鼓を打ちながらドラマーが練り歩く。それに合わせて観客の手拍子が鳴り響く。初演(東京公演)からキャストを一新し、大阪オリジナルメンバーによる期待のステージが、いよいよ始まった。
幕開けは、スコップ(阿部よしつぐ)の登場からだ。笑いを振りまきながら愛嬌たっぷりに語るスコップの“前説”で、観客の心の中の観劇スイッチが完全にONになったところで、暗転。一転して、ダイナミックなダンスシーンとともに、ゴミ人間の誕生、陽気なハロウィン・ナイトへと続き、そして、主人公ルビッチ(末谷玲乃)とプペル(近藤真行)の印象的な出会いのシーンへと、物語はスピーディに展開していく。
やっぱり「えんとつ町」に、空は、星はあった!
一幕物の舞台だが、照明と音響の使い方が見事で、人物の出入り、場面転換……と、映画のカット割りのようにステージが目まぐるしく転換し、見ている者を飽きさせない。
何と言っても、キャストたちの躍動感あるダンスや歌が素晴らしい。
とくに、煙突掃除人たちのダンスシーンは必見で、「メリー・ポピンズ」へのオマージュかと一人にんまりしてしまった。さらに歌は、それぞれ歌唱力が豊かでエモーショナルであり、聴く者を圧倒する。ルビッチのあの小さな体から、あんなに迫力ある歌声が発せられるとは、ちょっと想像ができなかった。
キャストに、生バンドの音楽、絵本から飛び出してきたような素晴らしい舞台美術。それらを目で、耳で堪能し、あっという間にラストシーンへ。物語は大団円に突入だ。父ちゃん(ブルーノ)の演説に心が震え、全員、星を見上げる準備ができたその瞬間、大きな暗幕が観客の頭上に覆いかぶさり客席を一瞬、漆黒の闇に変える。刹那、暗幕がサッと消え、天井を見上げると、満天の星。隅々まで星の空が広がっていた。頭上に、ずっと見たいと願ってきた“あの空”があったのだ。キャスト、観客、ここ「えんとつ町」にいるみんなの願いが叶った瞬間だった。
絵本で、映画で「えんとつ町」を見ることはできた。けれど、あの煙の中から最後に見た空を、星を、ずっと体感したいと思っていた。その願いが叶ったのが、このミュージカルだ。西野氏が絵本を通じて伝えてきたことが、心温まる素敵なミュージカルというカタチとなって、大阪で観ることができる。配信チケットもあるので、ぜひこの世界を体感してほしい。