東京のカオスな美学を世界に発信する
鬼才・常田大希が率いる音楽集団、millennium paradeが初のアルバムを完成させた。
King Gnuでブレイクを果たしつつあった2019年5月に始動した新プロジェクト。
3D映像を駆使した独創性あふれるライヴやアニメ『攻殻機動隊SAC_2045』に主題歌として提供した「Fly with me」などで注目を集めてきた彼らが満を持して送りだすのは、異様な迫力と耳から離れない中毒性を持つ新時代のポップアート的な作品だ。
大編成のメンバーによって奏でられるのは、オーケストラからヒップホップまで幅広いジャンルを融合させた壮麗なサウンド。
ermhoiを中心にKing Gnuの井口理も含めた複数のヴォーカリストが参加し、妖(あや)しくも美しいメロディを歌い上げている。
アートワークにも注目だ。アルバムのジャケットは手筒花火をモチーフに和の祝祭をイメージ。
イントロダクションの「Hyakki Yagyō」から「Bon Dance」など数々のインタールードが差し挟まれることでシアトリカルなストーリー性を感じさせる。
常田の創作の核にある「トーキョー・カオティック」な美学を各国に発信する、世界規模の野心に満ち溢れたコンセプチュアルなアルバムに仕上がっている。
TEXT=柴 那典
音楽ジャーナリスト。ロッキング・オンを経て独立。音楽やサブカル分野を中心に幅広く記事執筆を手がける。著書に『ヒットの崩壊』『渋谷音楽図鑑』がある。