ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、坂本龍一らも
ドキュメンタリー映画『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』が公開中だ。ザ・バンドは世界中のミュージシャンに愛されリスペクトされた。
ボブ・ディランはツアーをともにし、ニューヨーク郊外のウッドストックに彼らを呼び寄せた。その地にエリック・クラプトンがメンバーにしてほしいと押し掛けた。坂本龍一はアルバム『ビューティ』でギターのロビー・ロバートソンに、吉田拓郎は『Shangri-La』でキーボードのガース・ハドソンにオファー。佐野元春はガースをゲストに迎えて、ツアーを行った。
映画は、バンドの中心的存在だったロビーのインタビューと秘蔵映像を主に構成。彼らが唯一無二である理由が見えてくる。
生活も時間も感情も共有して生まれた土の匂いのロック
ザ・バンドは全員で音楽をつくり、演奏し、歌う。誰ひとり欠けても成立しない。ともに暮らしていた最盛期は、音楽とプライベートの境界線などなかった。生活のすべてが音に直結していた。ONとOFFの切り替えのようなきれいごとなどない濃密な生活から、土の匂いのするロックが生まれたのだ。
ぜひザ・バンドのラストショーを描くマーティン・スコセッシ監督の名作『ラスト・ワルツ』も観てほしい。ロックバンドの終焉の哀愁を体験できる。
『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』
ザ・バンドのドキュメンタリー。ギターのロビーとドラムのリヴォン・ヘルムの愛憎が切ない。角川シネマ有楽町、渋谷WHITE CINE QUINTOほか全国で順次公開。
2019/カナダ、アメリカ
監督:ダニエル・ロアー
出演:ザ・バンド、マーティン・スコセッシ、
ボブ・ディラン、ブルース・スプリング
スティーン、エリック・クラプトンほか
Kazunori Kodate
1962年東京都生まれ。音楽ライター。『ジャズの鉄板50+α』(新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。