役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!
何気ない家族との時間の大切さに気付かされる
相変わらずなんてセクシーなんでしょう。長い睫毛、滴るような瞳、髪をかき上げる仕草。見るたびに色気が増していく……。彼の名はティモシー・シャラメ君。滝藤、これまで『レディ・バード』、『ビューティフル・ボーイ』とティモシー君の出演作を紹介してきました。今、世界で最も美しい俳優じゃないかしら。私のなかでは、リヴァー・フェニックス、エドワード・ファーロング以来の美しさ。素材がいいと演技なんて二の次になりそうですが、芝居もいいからついつい溜息が出てしまいます。
今回紹介する『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』は、話の展開も早く、過去と未来を行ったり来たりしまくりますが、何の迷いもなく観られてしまう。構成の巧さなのか、はたまた演出の為せる技か……。百何十年にもわたって読み続けられている古典の面白さと現代の俳優とのコラボレーションが見事に融合した作品です。
原作の『若草物語』は南北戦争中、北軍に従軍する牧師の父親を家で待つ、美しい母と4姉妹の話。小説には、作者のルイーザ・メイ・オルコットと彼女の姉妹の人生が色濃く投影されているそうです。作者の分身であるジョー役のシアーシャ・ローナンは誇り高く、文章を書くのが大好きで、型にはまるのは大嫌い。いかにも次女っぽい自由人。偏見ではありませんよ。長男の私はうらやましいのであります。
『マリッジ・ストーリー』で先のアカデミー賞で助演女優賞を受賞したローラ・ダーンの心優しき母や、一見意地悪な伯母様役のメリル・ストリープの存在もしっかり効いていて作品によりいっそう深みを与えています。
個人的には4姉妹がお芝居ごっこをしている風景に思わず我が子を想ってしまいました。我が家も男女は違えど4人兄妹。喧嘩も多々ありますが、それ以上に毎日が笑い声で溢れている。日々の忙しさに、どうしても忘れがちなこの幸せ。当たり前ではないんだなと気づかされました。子供に見せたい教科書のような素晴らしい映画。ぜひ、家族みんなでご覧ください!
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
『レディ・バード』で人気監督へと躍りでたグレタ・ガーウィグが監督・脚本を務めた最新作は、小説『若草物語』と原作者の実人生を組み合わせたヒューマンドラマ。南北戦争時代を背景に、父の不在を乗り切ろうと頑張る4姉妹の恋と人生の選択を生き生きと描く。第92回アカデミー賞では、作品賞はじめ計6部門でノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞。
2019/アメリカ
監督:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン、ティモシー・シャラメ、エマ・ワトソンほか
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
6月12日より全国公開