役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!
実話をもとにしたアメリカ大統領選挙の裏側
世界中でとことん憎まれる悪役を演じる、ジョン・リスゴー。最初に彼の悪役に震撼したのは『ミッドナイトクロス』の殺し屋役。『フットルース』ではアメリカの片田舎でダンスとロック禁止令を出す神父様。
『レイジング・ケイン』での凄まじい怪演。狡猾な表情に岩のような巨体。これが、今回紹介する『スキャンダル』で正義を黙らせる重しになります。憎まれてなんぼ。私、そういう役、観るのも演じるのも大好物です。
実話を映画化した作品で、2016年のアメリカ大統領選を背景としています。ジョン・リスゴーが演じるのはアメリカ最王手のメディア、FOXニュースのCEO、ロジャー・エイルズ。メディアの帝王と呼ばれ、絶大な力を持っています。社内人事も彼のひと言で決定。女性キャスターの起用を積極的にしたある意味、革命児だが女性を飾り物としか思っていないクズ野郎。しかも、自分が間違ったことをしていると自覚がないのがおぞましすぎます。そんな彼が、不当解雇に怒ったベテランキャスターのグレッチェン・カールソンにセクハラで訴えられます。
グレッチェン役をニコール・キッドマン。同僚のキャスター、メーガン・ケリーを本作のプロデュースも務めるシャーリーズ・セロンが演じています。メーガンは共和党候補者のドナルド・トランプから敵視され、1年もの間攻撃されている。彼女から仕かけたとはいえ、反撃してくるトランプからの誹謗中傷の数々。その内容に「どの国も同じだな」とうんざりしました。そして、もうひとりの主要人物にケイラ・ポスピシル。キャスターへの憧れが人一倍強い女性です。このケイラの揺れに揺れる姿がもうスリリングで娘がいる滝藤には刺激が強すぎて心配になるレベル……もはやパパ目線。ケイラ役は『スーサイド・スクワッド』のハーレイ・クインのマーゴット・ロビー!いやいや、同一人物とは思えない、化けますねー。
そして、女性たちの被害に目をつぶる男性社員の姿。保身ですよね。見過ごすこともセクハラ加担。これは男性が観るべき映画です!
スキャンダル
2016年の米大統領選の最中、共和党と強いパイプを持ち、メディアの帝王と言われるFOXニュースのCEO、ロジャー・エイルズが、キャスターを解雇されたグレッチェン・カールソンにセクハラで告訴された。それを機に声を上げた被害者たちに「同意のうえだった」と息巻くロジャー。全米を揺るがしたセクハラ事件の内幕を人気女優、シャーリーズ・セロンが自らプロデュース、主演を務め、暴く話題作。
2019/アメリカ・カナダ
監督:ジェイ・ローチ
出演:シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー、ジョン・リスゴーほか
配給:ギャガ 全国公開中