役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!
『ユダヤ人を救った動物園 ~アントニーナが愛した命~』
今回は特別編として滝藤の心を揺るがした2作品をお届けします。題して「嘘のような驚愕の史実映画」。
1本目は『ユダヤ人を救った動物園 ~アントニーナが愛した命~』。舞台は第二次世界大戦中、ナチスの占領下のポーランド。ワルシャワで動物園を経営する夫婦がゲットーに閉じ込められたユダヤ人を匿(かくま)い、延べ300人を逃亡させたという実話をもとにした映画です。
前々号でも彼女の映画、選んだだろと罵られても気にしません。ジェシカ・チャステイン。今作でも抜群です! 今までの力強い彼女ではなく、繊細で、かわいらしい彼女。女性の持つ柔らかさや弱さが溢(あふ)れ出ていて包み込みたくなってしまう。ドイツ兵にちょっかいをだされ、旦那に貞操を疑われるシーンでの彼女の表情、しぐさ。もはや役を飛び越え、人間ジェシカ・チャステインの魅力に釘づけです。
そんなジェシカと『ゼロ・ダーク・サーティ』でCIAによるオサマ・ビンラディン暗殺作戦を描いた女性監督、キャスリン・ビグローの『デトロイト』を見て大きなショックを受けました。「こんなこと許されてもいいのか......」と。
『ユダヤ人を救った動物園 ~アントニーナが愛した命~』</strong
2017年/アメリカ
監督:ニキ・カーロ
出演:ジェシカ・チャステイン、ヨハン・ヘルデンベルグほか
配給:ファントム・フィルム
TOHOシネマズみゆき座ほかにて全国公開中
『デトロイト』
1967年、デトロイト市警が黒人経営の無免許の時間外酒場へ強引なガサ入れをしたことで地元の黒人たちの怒りが爆発。凄まじい暴動となります。
暴動3日目、銃声がきっかけで、モーテルに偶然居合わせた客がスナイパーだと疑われ、デトロイト市警から強制尋問にあいます。罪のない若者たちが有無も言わさず容疑者扱いされ、酷い暴力にさらされる。ヘビーな描写が続くので吐き気すら催しましたが、相変わらず素晴らしい仕上がり。
そして、歴史に残るであろう悪役を演じていたのは、クラウス役のウィル・ポールター。これぞ究極の悪。この男、強烈な意地悪顔。憎たらしいったらありゃしない。こいつからは逃げられねぇと絶望させられました。お見事でございます。
『デトロイト』
2017年/アメリカ
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールターほか
配給:ロングライド
2018年1月26日より全国公開