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ENTERTAINMENT

2017.06.15

『セールスマン』滝藤賢一の映画独り語り座29

役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!

『セールスマン』

同じ人間なのに……男と女はまったく違う生き物なんだな~

先のアカデミー賞で外国語映画賞を受賞した『セールスマン』。いやあ、面白いです! 2011年に同賞を受賞した『別離』を思い出し、「どちらもイラン映画だ、イラン恐るべし!」とパンフを見たら、両作とも同じ監督でおののいたしだいです。介護、親子問題、宗教を軸に描いた『別離』を観た時、「日本でも絶対映画化できるテーマだ! いつか僕が!」と野心に燃え早6年……。只今、私、貴族の運転手をさせていただいております。

さてさて、このアスガー・ファルハディ監督、男女の心のすれ違いの見せ方が超絶にうまい。今回の『セールスマン』も綿密に練られたストーリーに隙がなく、決して派手ではないが、一瞬たりとも目が離せないスリリングな展開。主人公のエマッドは高校の国語の教師。劇団に所属し、俳優としても活動している。演じるのはアーサー・ミラーの戯曲『セールスマンの死』。僕も、無名塾時代にバーテンダー役で出演させてもらったのでなんとも感慨深い。エマッドの奥さんも劇団員で、劇中でもエマッド演じるセールスマンの妻役を演じています。この仲睦まじい普通の夫婦に、ある事件が起こり、徐々にすれ違っていくのですが……。事件自体はいっさい見せず、実際に起こっていたのか否か、観客を悶々とさせる演出は実に見事。事件後にとる妻の言動がいちいち理解できず、どうしてほしいのかさっぱりわからない……。観ている僕もエマッド同様やきもきする。

鑑賞後、エマッドのとった行動に大いに共感できると口にした瞬間、当連載の担当女性編集者に「何で彼女の気持ちがわからないんですか! あれは最低ですよ!」と猛反撃をくらいひんしゅくを買いました……。男滝藤、この作品1本で、信用は失墜し大きく株を下げる始末……。でも、男なら大切な人を守れなかったエマッドの葛藤は理解できるはず。胸が締めつけられ、行き場のない怒りに発狂したくなります。解釈によって大きく見解がわかれるので、ぜひ異性と観に行って語り合っていただきたい作品です!(喧嘩になっても、責任はとりません)

『セールスマン』

(C)MEMENTOFILMS PRODUCTION – ASGHAR FARHADI PRODUCTION – ARTE FRANCE CINEMA 2016

『セールスマン』
2016年/イラン・フランス合作
監督:アスガー・ファルハディ
出演:シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリドゥスティ ほか
配給:スターサンズ、ドマ
6月10日よりBunkamuraル・シネマほか全国公開

COMPOSITION=金原由佳

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