ENTERTAINMENT

2016.12.15

『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』滝藤賢一の映画独り語り座23

役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!! 今回は『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』を取り上げる。

『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』

多くの人を救うためにひとりを犠牲にしてよいものか

みなさんは映画鑑賞後、パンフレットを「購入する派」、「そうでない派」のどちらですか? 普段、パンフは「チラ見派」の滝藤ですが、『アイ・イン・ザ・スカイ』に関してはぜひ買って読んでいただきたい。僕は既に3回ほどむさぼり読みました。鑑賞後、その気持ち、わかっていただけると思います。

オバマ大統領の時代になって、ドローン(無人航空機)によるイスラム過激派への攻撃がブッシュ前大統領時代から6倍以上に増えたそうです。「もはや戦争は現場で起きてはいない、会議室で起きている」んです......。

ロンドン。ヘレン・ミレン演じる英国軍の諜報(ちょうほう)機関のパウエル大佐。彼女が6年来追い続けるソマリアのイスラム武装勢力に関与するイギリス人女性を、ドローンが発見します。しかもケニアのナイロビで自爆テロの決行直前だということがわかる。「即ドローンで攻撃を!」と大佐。ミサイルの発射ボタンを押すのはアメリカ、ネバダ州の米軍兵。発射直前、殺傷圏内にパンを売りに少女が現れる。ここから、パウエル大佐がいる常設総合指令部(ロンドン)、政治家がいる国家緊急事態対策委員会(ロンドン)、実際にドローンの発射ボタンを押す空軍基地(アメリカ)を中心に、ナイロビとはかけ離れた場所で映し出される映像だけを見ながら侃々諤々(かんかんがくがく)の会議へ突入。誰がその攻撃の決断をするのか? 責任の所在はどこにあるのか?

今年話題作となった『シン・ゴジラ』の登場人物は膨大な情報量を、感情を入れることなく、フラットに早口でまくし立て、俳優たちの熱と勢い、スピーディーなカメラワークとクローズアップ攻めで緊迫感を出していて、エンターテインメントとして楽しめました。しかし本作は真逆で、俳優たちのなかに流れる思いや衝動をしっかりと時間をかけ映している。なのにスピード感に溢(あふ)れていて呼吸するのを忘れるくらいスリリング。答えを出さず、観客に委ねているのも説教臭くなくていい。

今年観た映画のなかでも断トツの作品でした!

『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』

『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』
2015年/イギリス
監督:ギャヴィン・フッド
出演:ヘレン・ミレン、アーロン・ポール、アラン・リックマンほか
配給:ファントム・フィルム
12月23日よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開
(C)eOne Films(EITS)Limited

COMPOSITION=金原由佳

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