CAR

2022.07.26

野生味溢れる極上“ラグジュアリー&スポーツ”の新定義! BMWアルピナ B5

ドイツの小さな自動車メーカーが仕立てる“自動車グルメ”のためのジャーマンブランド「BMWアルピナ」。年間生産台数はわずか1700台程度、そのうち300台ほどが国内導入されている知る人ぞ知る嗜好品である。昨年国内でローンチされたBMWアルピナ B5を紹介。ベースモデルがM550iの「ラグジュアリー」から、M550iの「M スポーツ」に変更され、装いはアルピナ流にとどまっているものの、その乗り味は大幅刷新。新世代のアルピナ独自チューンとクラフトマンシップが奢られているのだ。

巡航最高速度330km/hに達するスポーツリムジン

アルピナ B5は、その名からも想像できるように最新のBMW5シリーズをベースとしたモデルだ。アルピナといえば以前は5シリーズベースのモデルにB9やD10と名付けるなど、車名からベースモデルを判別するのが難しいことで知られていた。それがアルピナ通のみぞ知るという意味でファン心理をくすぐるものでもあったが、最新世代では3シリーズベースのB3や7シリーズベースのB7など、ベースモデルと合致するように統一されている。ちなみにB5はガソリン、D5となればディーゼルエンジンという意味だ。

動力性能は0→100km/h加速3.4秒。巡航最高速度は330km/hに達する。“巡航最高速”とは、快適に走れる最高速度を表すアルピナ独自の表記。

B5は4.4ℓV8ツインターボエンジンを搭載。最高出力621ps、最大トルク800Nmという、もはやスーパーカー級のスペックだ。8速スポーツATを介して、4輪を駆動する。アルピナの流儀はあくまでも“アンダーステイトメント”であること。これみよがしなスポイラーやウイングの類は一切装備しない。バンパーなどはアルピナ独自のデザインで、ラジエーターへと取り込む空気の流れを最適化し、ダウンフォースを強めて高速安定性を向上させている。リアのバッジがなければB5とD5を見分けられないというのも、なんともアルピナらしい計らいだ。

トルクを前後輪に連続的かつ完全に可変配分。4輪駆動システムもアルピナ独自のセッティングが施されている。

B5は、その性能や価格からよくM5と比較されるが、Mモデルがサーキットでの速さを追求しているのに対して、歴代のアルピナが目指すものは、ラグジュアリーかつ安心快適なグランドツーリングカーだ。ただし、最新型は、従来のモデルよりも引き締まった足まわりで、排気音も勇ましくスポーティさを強調した味付けになっている。アクティブスタビライザーや、低速域では逆位相、速度域があがると同位相に、後輪を最大2.3度操舵する機械式リヤ・アクスル・ステアリングを備えることもあって、俊敏性も高められている。わかりやすく言えば少しばかりM5寄りにスポーティになったといえる。

後輪を最大2.3度操舵する機械式リヤ・アクスル・ステアリングを搭載、駐車場や低速域での取り回しはよく、走行時はスポーティなハンドリングが堪能できる。

シャシー&サスペンションの絶妙なチューニングこそがアルピナの真骨頂であり、そういう意味では、新型はスポーティネスを高めたとはいうものの、快適性を犠牲にしているわけではない。20インチのアルピナ・クラシック・ホイールと専用タイヤ(ピレリ製P-ZERO)に対してダンバーの減衰力を細かく設定し最適化することで、ベースのBMWにはないコンフォートプラスモードを設定している。コンフォートプラスからスポーツプラスまで、幅広いドライビングモードに対応している。

最大トルクは800Nm(81.6kg-m)を叩き出す、モンスタースペック。サーキットもこなすスポーツ派の「BMW M5」よりも最大トルクは高く設定されている。

聞けばこのモデルより、アルピナの開発の陣頭指揮をとるのが創業者であるブルカルト・ボーフェンジーペンから息子のアンドレアスへと代替わりしたという。こうしてふり幅を広げていくことが現代的なアルピナのチューニングの方向性なのかもしれない。ちなみに2021年モデルのD5 Sは、ベースモデルのアップデートにあわせて48Vマイルドハイブリッド仕様になっている。アルピナといえども電動化とは無縁ではいられないわけで、今後増えていくことは間違いないだろう。

足元にはアルピナ伝統の20本スポークホイール「20スポーク アルミホイール」を装着。タイヤのエアバルブはセンターカバー内にあるのもアルピナならでは。

今も昔もそうだが、アルピナとMモデルは相対するものではなく、BMWラインアップ全体を俯瞰したときに、補完する関係性にあると思う。5シリーズにおいても答えは明確だ。サーキットで思い切り走りたいならBMW M5を。めちゃくちゃ速くて快適なGTカーが欲しいならアルピナB5を選べばいい、ということだ。

 

BMW ALPINA B5
ボディサイズ:
全長4980×全幅1870×全高1480mm
ホイールベース:2975mm
エンジン:V型8気筒+ツインターボ
排気量:4394cc
最高出力:621ps
最大トルク:800Nm
駆動方式:4WD
変速機:8速AT
乗車定員:5名
¥19,390,000~¥19,800,000
BMW ALPINA B5の詳細はこちら

TEXT=藤野太一

PHOTOGRAPH=ニコル・レーシング・ジャパン

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