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2022.06.25

【試乗】SUV史上最速! ブリティッシュミサイル「アストンマーティン DBX707」登場

アストンマーティンのSUV「DBX」のハイパフォーマンスモデル。車名の"707"は馬力を表し、エンジン性能アップに伴う走行性能の向上はもちろん、デザインでも大型化されたグリルやリアウイング、大径タイヤなど走りの装備をアップデート。世界で最もパワフルで美しいラグジュアリーSUVとしての個性をいっそう高めている。今回の連載「NAVIGOETHE」では、そんな「アストンマーティン DBX707」をご紹介!【過去の連載記事】

連載「NAVIGOETHE」

SUVさえ無視できなくなったスーパーカーブランドの”最速バトル”。DBX707の0→100km/h加速は3.3秒と、ベースモデルの4.5秒から大幅短縮。さらにランボルギーニ ウルスの3.6秒をしのぎ、310km/hの最高速度はこれまで「史上最速SUV」を公称してきたベンテイガ スピードの306km/hを打ち破った。

走ってよし、眺めてまたよし! 707馬力を謳う俊足

さまざまなハイパフォーマンスカーを世に送りだしているアストンマーティンが同ブランド初となるSUVモデルDBXに次ぐ、最高出力707馬力とハイパワーな「DBX707」を登場させた。

自動車の電動化が進む今、純粋なエンジンで大きなパワーやトルクを生みだしタイヤを駆動させるモデルは確実に減少傾向にある。ならば彼らはこの過渡期に"SUV世界最速"と謳う新型でどのようなモデルを開発し、後世に残そうと考えたのだろうか。ペトロヘッズのクルマ愛好家たちの心理も想像したに違いない。

イタリアはサルデーニャ島で開催された国際試乗会。対面したDBX707は最高レベルのパフォーマンスが与えられながら、アストンマーティンの豊かなラグジュアリーの世界が高いレベルで保たれていた。

コクピット

英国車らしい控えめで気品漂うコクピット。走行モードなど、走りにまつわる設定はスイッチで操作可能に。

DBX707はDBX(550ps/700Nm)と同様の4ℓV8ツインターボエンジンにボールベアリング・ターボチャージャーを採用し、専用のキャリブレショーンを施すなどをして707psというより大きなエンジン性能を引きだしている。これは高性能SUV(エンジン車)の代表格、競合車として目されるランボルギーニ ウルスやポルシェ カイエンターボならびにベントレー ベンテイガ スピードの最高出力を上回り、最大トルクはベンテイガ スピードと同等の900Nm。競合する高性能スポーツSUVたちのなかで、DBX707が総合的に速く、パワフルなのだ。

そんなDBX707の加速はどちらかと言えばクルマに一方的にハイスピードの世界に導かれる興奮より、ドライバーへ訴える“コミュニケーションスキルの高さ”が勝る。アストンマーティンらしい速さという性能へのこだわりが停車時からの加速でわかるのだ。コーナリング中ではわずかなアクセル操作に対するレスポンスや欲しいトルクをリニアに引きだせる能力にも優れる。個人的にはこれほどすごいエンジンが街中のミリ単位のペダル操作にも素直に応答してくれる懐の深さも特筆しておきたい。ちなみに乗り心地はやや硬めに感じるものの、走行フィールはフラットな印象。路面の凹凸を通過したあとの収束性に優れ、不快と感じる方は少ないだろう。

ローンチコントロール

スポーツモードに加わった新機能がローンチコントロール"Race Start"。停車時からフル加速する。

サルデーニャ島では島の北東コスタメラルダにあるホテルを起点に南下しつつ、主に内陸の山間を走った。標高の比較的高い場所にも古風な石造りの家々が立ち並ぶ小さな町が点在し、それらを繋ぐワインディングでは眺めのよい絶景が続く。この体躯には少々道幅が狭いと感じる場面にも遭遇したが、背の高いSUVとは思えないほどライントレースの正確性も高く、鼻先をコーナーの内側に積極的に向けてクリアすることができた。

ドライブモードを"スポーツ"や"スポーツ+"に変更すると、4WDやスタビリティ、エンジンやトランスミッションのレスポンスもよりキビキビとアグレッシブな方向に切り替わるが、ノーマルでも十分。アストンマーティンがDBXというSUVを造ると決めた際、他のプラットフォームを流用せず専用開発した"ベース"の効果は大きい。さらにエンジンの高出力化に伴い9速ATの機構が変更され、ブレーキは高い制動力を誇るカーボンセラミックで強化。サスペンションや、リアに搭載される電子制御デフも707馬力対応にアップグレードされている。

登場当初から美しさと個性が際立つDBXの存在感。デザインは既存のDBXに対しあくまでも性能向上に伴う変更がメインだ。外観では冷却機能を高めるべくフロントグリルの縦横比が27%ほど拡大。空力性能の向上を目的とするリアスポイラーや、高揚感溢れる快音を奏でる4本出しテールパイプなど、より精悍さが増している。

4ℓV8ツインターボ

心臓部はAMG社製で、独自改良を施した最高出力707psと最大トルク900Nmを発揮する4ℓV8ツインターボ。

キャビンに目を向ければ、ホールド性に優れたスポーツシートを装備し、機能性を重視したスポーツカーのようなコクピットが目を引く。一方でレザー張りのダッシュボードや陰影も計算しつくされたトリムの曲線美、ステッチにまでデザイン性が伝わる空間はエレガントさも感じられるもの。このデザインセンスも実に英国車であるアストンマーティンらしい。

DBX707はアストンマーティンの気品と情熱を具現化した"美しい"SUVである。より大きなパワーやトルクの与えられた内燃機関の鼓動や息遣いを潜在的に感じ、一体となって走らせたときの豊かさをより色濃く体験できる。おかげでSUVのカタチをしているものの、走りは美しく時に激しくも向き合ってくれたDBX707のドライバビリティにはワクワクされっぱなし。

移り変わる動力、時代の変わり目にアストンマーティンが敢えて最速SUVを刺客として送り出した刹那。妥協なきクルマ造りへの本気を感じることができた。

 

アストンマーティンを紐解く"3"つの最新事情

ボンドカーでおなじみのアストンマーティンだが、正式名称は「アストンマーティン・ラゴンダ」。ここではブランドを推し進める3つのトピックスを紹介!

限定スペシャルモデル

01. 矢継ぎ早に市場投入される限定スペシャルモデル
初のプラグインHVスーパーカーとなる「ヴァルハラ」。F1譲りのプッシュロッドサスペンションを備え、950馬力の4ℓV8ツインターボにモーターを組み合わせる。0→100km/h加速2.5秒、最高速330km/hに達するヴァルハラは2024年からデリバリー。さらに2座フルオープンボディで88台限定となる1億円超の「V12スピードスター」も販売中。

61年ぶりのF1挑戦

02. 61年ぶりのF1挑戦でリベンジ参戦
昨年、61年ぶりにF1世界選手権にワークスとして復帰したアストンマーティン。屈辱に甘んじた1959年と翌’60年の参戦から61年ぶりに復活の狼煙を上げた。そんなF1参戦を記念した新型ヴァンテージ「F1エディション」も登場。セーフティカーをオマージュし、伝統のアストン・レーシンググリーンが基調となる。

ヘリコプター「ACH130アストンマーティン・エディション」

03. つくるのはクルマだけじゃない! スーパービークルたち
価格は未公表ながら仏エアバス社とのコラボによるヘリコプター「ACH130アストンマーティン・エディション」が発表されたのは2020年。内外装にアストンマーティンらしいエレガントな設えが与えられ、その世界観を踏襲。さらに4.5億円の個人用潜水艇や、公道走行不可な1300万円のコレクターバイクも発売している。

 

アストンマーティン
DBX707

ボディサイズ:全長 5039×全幅1998×全高1680mm
ホイールベース:3060mm
エンジン:4ℓV型8気筒+ツインターボ
排気量:3982cc
最高出力:707ps/6000rpm
最大トルク:900Nm/2600-4500rpm
駆動方式:4WD
変速機:9AT
乗車定員:5名
車両価格:¥31,190,000

 

問い合わせ
アストンマーティンジャパン https://www.astonmartin.com/ja

【連載 NAVIGOETHE】

TEXT=飯田裕子

PHOTOGRAPH=アストンマーティン ジャパン

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