CAR

2022.06.21

ボルボがOSにGoogleを採用。一体何がどう変わる?

ボルボがインフォテイメントシステムのOSにGoogleを採用した。これにより、クルマは一体どう変わるのか。自動車ジャーナリスト・サトータケシが、クルマ好きなら知っておくべき自動車トレンドの最前線を追いかける連載「クルマの最旬学」第8回。【過去の連載記事】

VOLVO_Google

スマホとつなぐのではなく、根っからのGoogle

昭和の昔、クルマ好きはカタログを眺めて、ゼロヨン(0-400m)加速が何秒か、ということに心を踊らせたものだった。これが15秒と16秒だと天と地ほどの違いで、もちろん15秒のほうが圧倒的にエラかった。愛車の0-100km/h加速が何秒か、ということも、自分の身長・体重と同等か、それ以上に大事なことだった。
時は流れてこれからは、加速のスピードではなく、「俺のボルボはあっという間に車内が暖かくなるぞ」ということを自慢する時代になるのかもしれない──。

どういうことか、順を追って説明したい。
2021年、ボルボは自社のモデルに、Android™をベースにしたGoogleのインフォテイメントシステムを順次採用すると発表した。このニュースを聞いた時、「はて、すでにAndroidもiPhoneもUSBやBluetoothを経由してクルマにつながっているのではないか?」と思ったけれど、これは筆者の勘違いだった。

VOLVO_Google

運転支援装置や充電など、処理すべき情報が多くなった近年は、スイッチやダイヤルを増やすことでは追いつかなくなったので、タッチスクリーン式のインターフェイスが主流になった。さらに、OSそのものがGoogleへと移行するというのが今の流れだ。

Android AutoやアップルのCarPlayは、スマートフォンとクルマをつなげて、クルマでもスマホの機能が使えるというもの。対して今回ボルボが発表したのは、カーナビなどの情報や音楽などのエンターテインメントを司るインフォテインメント機能のOSそのものを、Android™をベースにしたGoogle Apps and Service(Googleアプリ/サービス)に変更したというものだ。

OSがGoogleアプリ/サービスに変わると、クルマはどう変わるのか? 早速、試してみよう。筆者が試乗したのはボルボXC60で、これ以外にもV90、V90クロスカントリー、S90、そしてBEVのC40リチャージなどが新しいOSに移行している。

VOLVO_Google

試乗したのはボルボの中型SUVのXC60で、グローバルで最も売れているボルボ車だ。順次、GoogleのOSを搭載する車両が増えていく予定。

4本のタイヤがついた“走るGoogleアプリ”

運転席に乗り込んで、まずは目的地の設定だ。「OK,Google」と話しかけて目的地を告げると、液晶画面のGoogleマップに目的地が設定される。続いて聴きたいアーティストや楽曲の名前を声で伝えると、YouTube MusicやSpotifyがプレイしてくれる。おもしろいのは、たとえば西海岸のミュージシャンの楽曲を告げると、似たようなタイプのアーティストの楽曲をランダムに流してくれることで、アマゾンの“おすすめ”に似ている。

VOLVO_Google

目的地を声に出すと、こうして眼前の地図に目的地が表示される。視線を移動することなく、運転に集中したまま、インフォテイメント機能を操作することができる。

エアコンの温度設定も、メッセージの送受信もすべて音声で操作する。ただし、特別なことをしているとは感じない。なぜなら、最近は日常生活でこういうことをやっているからだ。何か新しいことができるようになったというより、普段の暮らしとクルマの室内がシームレスにつながったという感覚だ。

あと、冒頭に記した「あっという間に室内が暖まる」というのは、こんな感じ。部屋にいながらにして、ガレージのボルボの室内を暖めることも可能だ。

VOLVO_Google

VOLVO_Google

VOLVO_Google

なるほど、と感じ入ったのは、OSが導入された2021年秋の時点では、音声認識システムのGoogleアシスタントがまだ英語にしか対応していなかったことだ(現在はアップデートされて日本語に対応済)。こういう状態で市場に出すなんて、いままでの自動車メーカーでは考えられなかった。とりあえず発表して、市場の声を取り入れて修正していくあたりが自動車メーカーというよりIT企業っぽい。
試乗をしながら、4本のタイヤが付いた“走るGoogleアプリ”のようだと感じたけれど、クルマも自動車メーカーも、どんどん変わりつつある。

VOLVO_Google

ボルボの車両として初めてGoogleのOSを採用したのがBEVのボルボC40リチャージ。

で、ここまで書いてアレですが、これはほんの序章に過ぎない。クルマのOSをGoogleにするのは、すべてのものがインターネットでつながる、IoT(Internet of Things)の時代を見据えてのことだ。ボルボによると、帰宅途中に「OK,Google、お風呂を沸かしておいてね」と話しかければ、家に到着してすぐに入浴できるような未来が考えられるという。

つまり将来的に競うのは、ゼロヨン加速はゼロヨン加速でも、0-400mの加速ではなく、風呂のお湯を0-40℃に加温する性能。そんなことを考えていると、昭和は遠くなりにけりと、しみじみするのだった。ちなみに、アップルも同様のテクノロジーを発表している。
というわけで、電動化や自動運転化と同様に、OSの変化もクルマ文化や自動車社会に大きな影響を与えるのだ。

問い合わせ
ボルボ・カスタマーセンター TEL:0120-55-8500

TAKESHI SATO
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

【連載クルマの最旬学】

TEXT=サトータケシ

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