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2021.08.31

懐かしの英国をたっぷり詰め込んだ小さな高級車! MINIクラブマン

歴史ある名車の”今”と”昔”、自動車ブランド最新事情、いま手に入れるべきこだわりのクルマ、名作映画を彩る名車etc……。本連載「クルマの教養」では、国産車から輸入車まで、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材を行う自動車ライター・大音安弘が、さまざまな角度から、ためになる知識を伝授する!

英国車らしいシックな色合い

日本で最も有名な英国車といえば、やはりMINIだろう。英国庶民の足として生み出された優れた小型実用車のクラシックminiは、1959年に誕生。その愛らしいスタイルと扱いやすさ、期待を超える走りの良さから、大衆だけでなく、著名人や上流階級のセカンドカーとしても重宝されたことは有名だ。それから幾度ものアップデートを加えながら、なんと2000年まで生産が継続された。しかし、晩年のクラシックminiをもっとも愛したのは、なんと日本人。'90年代に生産されたほとんどが日本に向けて輸出されている。その人気を裏付けるように、クラシックテイストの日本の軽自動車やコンパクトカーがクラシックminiを彷彿させるデザインを良く取り入れた。


現在のMINIの歴史は、1994年にBMWがローバーグループを買収したことより始まる。クラシックminiの生産を継続しつつ、BMWの主導で新型車の開発スタート。同時に、MINIをプレミアムコンパクトブランドとして独立させることを決定していた。それが2001年に全く新しいMINIとして登場。そのポジションは、これまでBMWが獲得できなかったユーザーをターゲットとしたものであるが、同時にFF車開発のノウハウを得るためのものでもあった。そんな第1世代のMINIはオリジナルを彷彿させる3ドアハッチバックのみであったが、MINIの独立性を確保すべく、プレミアムなコンパクトカーの可能性を追求したモデルを続々投入。現在は、オープンの「コンバーチブル」、ロングホイールベースの5ドアハッチバック、SUVの「クロスオーバー」、ステーションワゴンの「クラブマン」までモデルラインを拡大している。

'21年5月、主力となるハッチバックシリーズがマイナーチェンジを実施。MINIの持つ世界観はしっかりと受け継ぐものの、そのビジュアルは、より先進的かつポップなものとなった。その姿もMINIらしいものだが、クラシカルな匂いが薄れたのも正直なところ。そこで最新のMINIラインアップの中で、英国車らしい匂いを色濃く残すMINIクラブマンに再注目してみた。


MINIクラブマンは、初代が'07年に登場。MINIシリーズ初となるステーションワゴンは、同時に新生MINI初となる新ボディタイプでもあった。そのデザインは、世の中のステーションワゴンとは一線を画す個性的なもの。その象徴が、運転席側のみ観音開き付きドアを備えた「アシメトリック・クラブドア」だ。これは運転席側にだけ、後席にアプローチし易くなるサブドアを設けたユニークなもの。さらにリヤゲートは、クラシックminiのステーション仕様を彷彿させる観音開き式とした。もちろん、ワゴンに相応しいボディを実現するため、全長を拡大し、MINIに不足していた積載能力が高めていた。

現行型となる第2世代のMINIクラブマンは、’15年9月に登場。MINIハッチバックより、一クラス上のボディを与えた「デカMINI」に。これにより居住性は大きく高まった。外観上の特徴である観音開き式テールゲートは受け継がれたが、実用的な4ドアに改められた。そしてキャラクターも、ラグジュアリー路線へとシフト。MINIシリーズの長男といえるポジションに収まった。2019年10月にも改良を受けているが、そのクラシカルで上品な雰囲気はしっかりと継承されている。


そんなクラブマンの内外装は、MINIらしさを保ちつつも、上品に纏められている。MINIハッチバックで感じるヤンチャさは影を潜める。その雰囲気は、移動中のドリンクには、コーヒーよりも紅茶を選びたくなる感覚。ちょっとホッとできる移動空間なのだ。MINIよりも一回り大きいプラットフォームを採用したことで、特に後席が広くなり、快適性も向上。友人や家族など多人数での移動にも最適なMINIのひとつなのだ。大型化されたボディは、走りにも良い影響を与えており、ロングホイールベースを活かしたしっとりとした乗り味となり、長距離移動もラクチンなのだ。

しかし、クラブマンが、おっとりしたMINIかといえば、然に非ず。クラシックminiから語り継がれる走りの伝統である「ゴーカートフィーリング」もしっかりと受け継ぐ。これを言葉にするならば、軽快かつ俊敏な動きとなるだろうか。例えば、タイトなS字コーナーも得意で、想像よりずっと身軽に駆け抜けてくれる。この走りの良さは、MINIらしい走りの良さを意識するものだけでなく、BMWらしい走りへの拘りといえるだろう。

MINIクラブマンの装いは、かなりフォーマルだ。人によっては古臭いと感じるかもしれない。でも、そこが良い。クラブマンからは、レンジローバーやロールスロイスなどの上品な高級車を生みだした英国車の価値やサイズに捕らわれない合理的な感覚、そして、お茶を飲んで寛ぐゆとりを大切にする文化などの英国的価値を感じ取ることが出来る。そこに味わいがある。

もちろん、これからもMINIは時代に寄り添った進化を続けていくだろう。しかし、これまでの英国車との価値観とは少し異なるものになるはずだ。その温かみのある雰囲気は、エンジン車のMINIこそとも思えてならないのも、一人のクルマ好きとしての本音である。だからこそ、英国風味強めのクラブマンが気になるのだ。

TEXT=大音安弘

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