カーライフエッセイスト・吉田由美は、クルマの最先端を肌で感じ続ける“現場主義者”。そんな彼女が「見て、聞いて、乗って、感じた」クルマの最新事情とは――。
皆さんは「アルピナ(ALPINA)」という自動車メーカーをご存知ですか?
デザインはまんまBMW。だけど、エンブレムは違う……。「アルピナ」は、1965年の会社設立以来、ドイツのBMW公認チューニング&ラグジュアリーブランドなのです。
BMWの新型3シリーズ誕生に伴い、アルピナも新型モデル「B3」を発売し、先日試乗会が行われました。クルマもワクワクですが、その試乗会の会場に行くのも楽しみ。なにしろヘリコプター移動ですから。
集合場所は東京・木場にある東京へリポートですが、目的地はシークレット。試乗会の所要時間は約6時間です。東京へリポートに行くと、私たちが乗るヘリコプターは操縦士さんを入れて4人乗りの小さいもの。体重のバランスが大事です。
左側が男性2人、右側に操縦士さん、その後ろに私という配置。明らかに左側が重い(笑)。アルピナの輸入代理店「ニコル・オートモビルズ」の方に、なぜ今回はヘリコプターなのかを伺うと、「忙しい欧米のビジネスマンは移動時間短縮のためにヘリコプターをよく利用します。それをイメージして、クルマでは東京から片道4時間かかる福島県・裏磐梯までをヘリコプターで1時間半で移動して時短を実感していただき、現地で1時間半試乗、そして帰ってくるというプログラムにしました」とのこと。
東京へリポートをあっという間に飛び立つとすぐに、目の前に東京ディズニーランド。荒川上空を進み、一路北へ。ここから約1時間半。実はこの日から天気が崩れるのでは? ということで一時は開催が危ぶまれたそうですが、蓋を開けてみれば当日は風も穏やかでフライト日和でした。
ちなみにヘリコプターの名称は、米国製の「ロビンソン式R44Ⅱ型(米国製)」。エンジンgは、ライカミング式IO-540-AE1A5型(6気筒・水平対向・自然吸気・空冷)、排気量は8873cc(541.5cu.in)、馬力は245馬力/2718RPM、燃費は1時間当たり16ガロン(約60ℓ)、満タンで46ガロン(約180ℓ)搭載可能で、約200km/hで巡航するため最大で500kmほど飛行することができます。
また、ヘリコプターのフライトで、最優先にしているのは安全に飛行すること。具体的には、万が一機体に不具合が発生した場合、どこに着陸するのか、どのような操縦操作をするのかなど、管制塔と話し合って決めます。
今回の飛行に関しては、目的地の裏磐梯の標高が高い場所にあり、機体が出すことのできるパワーに制限がかかるため、風向きや周囲の状況などを加味し、飛行方法を判断する必要があったそうです。また、帰りは夜間の飛行になるため、日中と比べると周囲の様子が分かりにくくなります。そのため事前の準備として、経路上の障害物を把握して飛行経路を計画したとか。また、他の機体との接近が起こらないよう、常に周囲を警戒しているそうです。
途中、栃木県にあるホンダのテストコース上空を通過したので、コースを覗いてみると、テスト中のクルマがたくさん走っている! しかし、動いているのはわかっても、それ以上は見えません(笑)。何しろ600m以上も上空ですから。
ヘリコプターは南風のため、予定時間より早く目的地に到着。途中、磐梯山のあたりは紅葉が始まって綺麗です。また、操縦士さんのお話では、「昨日までこんなに色づいていなかったのに」と言っていましたが、前日は天気も良く気温が下がったので、一気に紅葉が進んだようです。
そして、目的地に着くと「BMW ALPINA B3 Limousine Allrad(アルピナ B3リムジン)」がありました。BMW3シリーズをベースにしたガソリンエンジンの直列6気筒ビ・ターボエンジン。総排気量は2993㏄で四輪駆動、4ドアで8速スポーツATの「アルピナ・スウィッチ・トロニック」を採用しています。
エクステリアでBMWと違うのは、リップスポイラーがアルピナ専用ということ。さらには、伝統の20本スポークのホイール、クルマのサイド部分のデコライン、控えめなリアスポイラー、オーバルな4本出しマフラーなどなど。エンジンはMモデル(「X3Mモデル」「X4Mモデル」)と同じS58型のエンジンブロックを使用。アルピナの手法で、インタークーラーは大容量にサブクーラーを常設にし、ターボハウジングも独自のものを使ってパワフルに大変身しています。
会場には「アルピナB3 リムジン」の仕様違いがもう一台。それぞれのフロントのトランクスペースには、BMWとして受けた車台番号がアルピナの番号に書き換えられています。そしてアルピナでは最高速度ではなく、「巡航最高速度」と表記するようですが、そちらは303㎞/h。最大トルクは700Nm、最高出力は462PS。足回りは「アルピナ・スポーツ・サスペンション」によって、驚くほど滑らかです。
「時短」と「滑らかさ」。ビジネスパーソンにとっては、どちらも大切ですね!
Yumi Yoshida
岩手県生まれ。カーライフ・エッセイスト。自動車評論家(日本自動車ジャーナリスト協会理事)。短大時代からモデルを始め、国産メーカーのセーフティドライビングのインストラクター経て「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の視点で自動車雑誌を中心に、テレビ、ラジオ、web、女性誌など広く活動中。3つのブログを展開し、中でも「なんちゃってセレブなカーライフ」は、ピーク時で1日約20万アクセスを誇る。持っている資格は、普通自動車免許、小型船舶1級、国内A級ライセンス、秘書検定、ECO検定、カラーセラピー。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本ボートオブザイヤー選考委員。 現在はYouTubeで「クルマ業界女子部チャンネル」を立ちあげて出演中。