ART

2023.07.29

淡路島の絶景に没入する、深・アート体験

陶芸家であり建築家でもあるアーティスト、奈良祐希氏の最新作が完成した。その発表の場は淡路島に昨年誕生した建築家・坂茂氏の設計による建築物の最新作「禅坊 靖寧(せいねい)」。2023年8月6日(日) までの期間限定。淡路島の自然に360度囲まれた空間で、未だかつてないアート体験をしてほしい。

奈良祐希氏の個展「samādhi」が坂茂氏の最新作「禅坊 靖寧」で開催中

淡路島の森の稜線と同じ目線に佇む。野鳥のさえずりと虫の鳴き声が響き渡り、360度の自然に囲まれる。心地よい風が流れ、外の蒸し暑さが嘘のよう。ここは、建築家・坂茂氏の設計による空中座禅道場「禅坊 靖寧(せいねい)」だ。

代表作「Bone Flower」で知られる、新進気鋭の現代アーティスト奈良祐希氏の個展「samādhi」は、この「禅坊 靖寧」内の座禅道場が舞台となる。新作「Bone Flower_Nest」に加え、淡路島の神秘的な大自然からインスピレーションを受けた最新作「Synapse」など、全19点もの作品がこの空間のために制作・展示されている。

「坂先生のこの建築から望む風景や、淡路島を訪れて見て感じた自然などからインスピレーション受けて、今回作品をつくりました。坂先生のこの建築の中で過ごした時、前に進むごとに段々と自然に没入していく感覚がありました。その感覚を大切にしたくて、さらなる没入感を感じてもらえたらと、奥に進めば進むほど、実は作品の配置の間隔をグラデーション化して長くしています」(奈良祐希氏)

展示風景。

奈良氏は、350余年の歴史を誇る大樋焼(おおひやき)十一代大樋⻑左衛門氏を父に持ち、祖父である10代目(現・大樋陶冶斎)は工芸界存命唯一の文化勲章受章者でもある。その源泉を継承しつつ、「土」をモチーフに設計活動を展開。一方で、現代アーティストとしても活動を続け、「共創」を展示コンセプトとして、さまざまな異なる事象を調和させ領域を超えたものづくりを得意としている。また、歴史的建造物、文化財といった建築的財産や自然に焦点を当てた展示を行い、アートの力でそれらの持つ「場所の力」を顕在化させる社会的な試みに取り組んでいる。

2022年に淡路島に誕生した「禅坊 靖寧」は全⻑100mのウッドデッキを有し、360度の全方位に広がる淡路島の絶景と溶け込みながらも、躍動感のあるダイナミックな建築デザインが特徴。淡路島の大自然を感じられるよう稜線を超えない高さに計算されており、展望デッキにいると雄大な自然に包まれているような不思議な感覚になる。 

「実際にここにいると、建物の中にいることを忘れてしまうぐらいに森の中での浮遊感を感じます。自然と作品がいかに対話をしていくかということも、私のフィロソフィの一つ。作品の展示ガラスケースも、手すりギリギリのギリギリまで攻めた高さにしたことで、作品が自然の中に溶け込むかのような感覚を覚えていただけると思います」(奈良祐希氏)

作品の背景は淡路島の大自然。木々が風で揺らぎ、太陽の光によって作品の見え方は刻一刻と変わっていく。「禅坊 靖寧」という特別な空間の中で、展示方法の妙により、自然と調和し、作品が生き生きと見えてくる。

展覧会名になった「samādhi」は、禅の語源にもなったサンクリット語で「心が対象の中に没入して自我が消えた状態」を意味する。雄大な自然の中、禅の体験施設でのアート体験にどっぷり浸ってほしい。

奈良 祐希 × 禅坊 靖寧『samādhi』 
期間:2023年 8月6日(日) まで
時間:10:00〜17:00
会場:禅坊靖寧 
住所:兵庫県淡路市楠本字場中2594-5  

TEXT=ゲーテ編集部

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