2023年真言宗立教開宗1200年を記念して、現代アーティスト・小松美羽の曼荼羅が真言宗総本山・東寺(教王護国寺)に奉納される。岡本太郎美術館での展覧会は、その曼荼羅を身近に鑑賞できる機会。彼女の世界観を体感したい!
小松美羽の世界観を体感
「小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ」は、岡本太郎作『渾沌』(1962年)を中心に据えて、小松美羽の作品およそ100点が展示される。会場は5つのパートで構成され、まずは、小松の初期から中期作品。次に東寺へ奉納する『ネクストマンダラ - 大調和』がお披露目され、最後に、小松が本展のために描いた作品も展示される。
展示構成
1章 線描との出会い:死、自画像、エロティシズム
2章 色彩の獲得:大いなる「目」との邂逅(かいこう)
3章 開かれた「第三の目」:存在の律動(リズム)
4章 霊性とマンダラ:「大調和」の宇宙(コスモロジー)
5章 未来形の神話たち:抽象と象徴の冒険
今回ゲーテは、『ネクストマンダラ - 大調和』の制作に密着。2022年5月上旬、京都を訪れた。真言宗総本山・東寺、第257世長者・飛鷹全隆氏の「真言立教開宗の法要にあたって、曼荼羅を小松氏に描いてもらうことで、世界平和を祈りたい」との想いを受け、小松は東寺の食堂(じきどう)に約1ヵ月籠って瞑想と制作に没頭し、二幅一対の曼荼羅『ネクストマンダラ - 大調和』を描き上げた。
長野県で生まれ、自然豊かな環境で育った小松は、幼い頃から一緒に暮らす犬や兎、周辺にいる生き物の絵を描いていたそうだ。彼女の作品のなかに、神獣や山犬などがしばしば登場するのは、そんな生い立ちがあったからかもしれない。
今回、曼荼羅を奉納する東寺は、平安時代に弘法大師が嵯峨天皇より託された寺。弘法大師が京都を離れ、新たな修行の地を探して彷徨った際、2匹の山犬が高野山へ導いたという逸話がある。縁あって曼荼羅を描く際に、この話が小松の心に強く響いたそうだ。
毎朝、瞑想した後に食堂で制作に打ち込んだ小松。「こんなふうに描こう、この動物を描こう」とは考えず、瞑想の際に自分のなかに降りてきたものを描いたそうだ。一日の制作時間は10時間。描く前には必ず手を合わせて瞑目し、描きながら、時にはマントラや感謝の言葉を口にする。瞑想で降りてくるものが想像以上に多く、制作は驚くほど速く進んだという。
彼女が描いた曼荼羅は、真言宗最高法儀の際に用いられる両界曼荼羅図と同サイズ。縦・横約4m二幅一対で、儀式の行われる灌頂院(かんじょういん)の空間構成を再現したもの。「2枚の本紙に描いた作品は、すべては一体になるという想いを込めています」と小松は言う。
2023年の法要に先立って、2022年6月25日から約2ヵ月間、神奈川県川崎市の「岡本太郎美術館」で、この『ネクストマンダラ - 大調和』が公開される。
「アートは魂を癒す薬だ」と考える小松にとって、曼荼羅制作は 祈りとともにある「神事」でもある。異彩を放ち、エネルギー溢れる彼女の作品は、観る人の魂を揺り動かし、現代社会を生きる力を与えてくれるに違いない。
「小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ」
会場:川崎市岡本太郎美術館 企画展示室
会期:2022年6月25日(土)~8月28日(日)
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜(7月18日を除く)、7月19日(火)、8月12日(金)
観覧料一般:一般 ¥1,000(800)、高・大学生・65歳以上 ¥800(640)、中学生以下無料 ※( )内は20名以上の団体料金。要予約。
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