2022年6月25日から、神奈川県川崎市にある岡本太郎美術館で開催される「小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ」。そこで展示される目玉作品『ネクストマンダラ ‐ 大調和』は、小松美羽が京都の東寺に約1ヵ月籠もって制作したものだ。縦・横約4mの巨大な2枚の本紙に小松美羽が描きだした世界とは? 制作に密着し、作品に込めた想いを聞いた。
世の人の想いに包まれながら描いた曼荼羅
今回小松は、東寺の境内のなかにある食堂(じきどう)と呼ばれる場所に約1ヵ月籠もって制作をした。食堂とは、僧が生活のなかに修行を見いだす場。かつて本尊に、些細な声も聞き逃さず救済してくれる千手観音菩薩がいたことから、観音堂とも呼ばれている場所だ。静かな食堂の中で曼荼羅を描く小松。集中し、静寂のなかでただひたすらに作品づくりに没頭していた。
「東寺には、多くの人々が祈りを込めて手を合わせたり、修行の一環として来ている方など多くの方が来られます。仏様に話しかけられている声、読経など、さまざまな音に包まれながら描いています。時折聞こえてくる真言宗の読経は、まるで詩のようです。そんな読経の詩に包まれながら作品をつくっています」
普段は、アクリル絵の具を用いて描くことが多い小松。だが今回は、リキッド絵の具を使って曼荼羅を描いた。縦・横約4mの巨大な2枚の本紙のため、移動させる際には、巻物のように丸めなくてはならない。普段使用している描き方だと、丸めた際にヒビが入ってしまう恐れがあるため、リキッドの絵の具を主に使用して制作した。色味は黒と金がほとんどだという。小松に、色に込めた想いを聞いてみた──。
「今回の作品は黒が多いです。黒と白でいうと、その間の色幅や生と死や陰と陽のように対極しているものが調和によって結びついていく。白と黒ははっきり分かれていますが、異なるように見えるものが混ざり合って、調和されていく様子を描いています。作品のタイトルは『ネクストマンダラ ‐ 大調和』。また、今回の色味のなかでも大切にしている金は、我々が目指す大いなるものを映しだす色でもあります。金を見ながら自分たちの心の中にある大切なものや、大いなるものに向かっていく様が投影されるように描いています」
2023年に真言宗開祖から1200年の記念法要が行われる東寺に奉納するため描いた『ネクストマンダラ ‐ 大調和』。岡本太郎美術館で開催される「小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ」以降は、来年の記念法要の後に東寺に保管され、年に数回しか一般公開されない。「不安な情勢が続くなか、人々の魂を癒す薬になれば」と祈りを込めて描いた小松の曼荼羅をぜひ目に焼きつけたい。
「小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ」
会場:川崎市岡本太郎美術館 企画展示室
会期:2022年6月25日(土)~8月28日(日)
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜(7月18日を除く)、7月19日(火)、8月12日(金)
観覧料一般:一般 ¥1,000(800)、高・大学生・65歳以上 ¥800(640)、中学生以下無料 ※( )内は20名以上の団体料金。要予約。
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