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ART

2021.07.17

使い古されたスケートボードに命を吹き込む、日本人アーティストHAROSHI

今、世界で最も注目される日本人アーティストとして、HAROSHIの名を挙げる人は多い。スケーターに酷使され、廃棄される運命だったスケートボードデッキを幾層にも積み重ね、ブロック状に成型。HAROSHIはその塊から彫刻作品を削り出し、新たな生命を吹き込んでいく。

haroshi

世界中の人々を惹きつけるHAROSHIの世界観

2017年にナンヅカギャラリーで開催された個展「GUZO」で国内外に広く知られるようになり、翌年に行われたマイアミバーゼルではNOVAセクションにおける個展、2019年から2020年にかけてJeffrey DeitchのNYとLAを巡回した「Tokyo Pop Underground」では、この展覧会を象徴する5m四方の大作のインスタレーションを発表し、大きな話題となった。

一気にスターダムを駆け上ったHAROSHI。だが、その根底にはコツコツと養い続けてきたクラフトマン魂がある。

「学生の頃からレザークラフトが好きで、高校時代にはショップやフリーマーケットで知り合った職人さんに教わりながら財布や小物を作っていました。卒業後はジュエリーの専門学校で彫金を学び、ジュエリーの会社に就職。それから独立して、個人で仕事を受けるようになったんですけど、量産の仕事はおもしろくない。好きじゃないデザインもやらないといけないし、飽きてきてしまった。それから、自分でアクセサリーを作り始めましたが、いい材料を買うお金がない(笑)」

創作意欲はあるのに、実現するだけの資金がない。その状況を大きく変えたのが、妻・春さんの一声だった。

「僕の奥さんが、部屋に積み重ねてあったスケートボードデッキの山を指して、“これで作ればいいんじゃない?”と。僕は中学2年生からスケートボードをやっていて、使い古したデッキが大量に積んであったんです。当時は1か月に1枚がボロボロになるくらい、相当乗り込んでいましたから。奥さんはデッキがクラフトの素材に適しているとか深いことを考えたわけではなく、単に邪魔だったから提案したんだと思います(笑)」

試しにデッキを使ってバングルを作ってみると、なかなかいい感じの出来。2003年、妻・春さんと2人で、使い古されたスケートボードデッキを加工してプロダクトを制作するユニット「Harvest by haroshi」を立ち上げた。ちなみにHAROSHIというアーティスト名は、本名のヒロシと奥さんの春、2人の名前を掛け合わせたものだ。

「仕事の注文は来ましたが、単価は安い。国内だけでは食べていくのがやっとという状況。そんな生活を変えるには、海外で勝負しないとダメなんじゃないかと考え、2009年にニューヨークに渡りました。ニューヨークにはJonathan Levine Galleryというストリートアート界では知らぬ人はいない有名ギャラリーがあって、そこで個展をやりたいなと。で、“個展をやりたい”と言い続けていたら、僕の作品を買ってくれたお客さんがJonathan Levineに連絡を取ってくれて、2011年に個展を開かせてもらったんです」

内観

今年6月、神宮前3丁目にオープンしたアートギャラリーナンヅカのフラッグシップギャラリー「NANZUKA UNDERGROUND」。スケートボードとそのカルチャーを愛するものへの守り神としての彫像作品「GUZO」シリーズが象徴的に展示されている。

その後、HAROSHIには次々と大きな仕事が舞い込んだ。伝説のカリスマスケーター、キース・ハフナゲルが創設したストリートブランド「HUF」とのコラボレーションや、BATB(Battle at The Berrics)のトロフィーなどで知られている。カリモクや天童木工、メディコム・トイとのコラボレーションも、アート界に鮮烈なインパクトを与えた。

コロナ禍でスタジオに籠り、ひたすら作り続けた新作

そして2021年7月10日、HAROSHIのオール新作による個展「I versus I」が、東京・明治神宮前のギャラリーNANZUKA UNDERGROUND にてスタートした。

「展覧会は3つのパートで構成されています。1つめのパートは『GUZO(偶像)』。使い古されたスケートボードを張り合わせたブロックから、“ストリートの神様”を削り出した彫刻作品です。スケートボードって、僕らスケーターの身代わりになって傷つき、ボロボロになっていくでしょ。それって、人類を救うために磔刑(たっけい)になったイエス・キリストの教えと通じるものがあるなって。だから、GUZOの手にはスティグマータ(聖痕)、磔(はりつけ)にされた時に負った穴があいているんです。今回の展覧会では、2020年以降に彫ったGUZO をNANZUKA UNDERGROUNDの1フロアを丸ごと使って展示しています」

2017年に発表して以来、HAROSHIの代表シリーズの1つとなっているGUZO。新作は今までとは異なり、首をかしげている像が多く見られる。

「昨年春にコロナの時代になって、先行きが不透明な時代になりました。世界は今後どのようになってしまうのだろうか。そんな疑問を世界中の人々が抱いたし、もちろん僕もその一人だった。その思いが、首をかしげているGUZOの姿につながったんです。あと、2020年は黒いGUZOも数多く制作しました。“ブラック・ライブズ・マター”の運動に、深く感じ入るものがありましたから。黒いGUZOは、赤い血の涙を流しているんです」

GUZO

ブラック・ライブズ・マターにインスピレーションを受けた黒いGUZOは赤い血の涙を流している。「GUZO 2020」H50×W18×D12㎝

2つめのパートは『Mosh Pit』。スケートボードデッキは、スケーターが繰り出すトリック(技)によって傷つきボロボロになるが、その傷はスケーターが紡ぎ出した物語でもある。

「役目を終えたスケートボードは、ある意味、完成形。スケーターの物語が封じ込められ、とても美しい存在なんです。『Mosh Pit』はそうしたスケートボードを集め、壁画のようなコラージュ作品として蘇らせたもの。スケートボード1枚1枚の物語に加え、作品全体に新たなストーリーを加えています。例えば、中指を立てたF**Kデザインのボードを、口を開いたサメを描いたボードが襲っている。2020年はブラック・ライブズ・マターの運動で、たくさんのショップが襲撃を受けた。そんな時代を表現しています」

役目を終えたスケートボードの傷ついた美しい姿にフォーカスした作品「Mosh Pit 2021」H202×W202×D10㎝

そして3つめのパートが『ソフビ人形』だ。

「ソフビ製のキャラクター人形の運命って、スケートボードとすごく似ています。戦闘ごっこで、子供たちの身代わりになって戦い、傷だらけになって捨てられていくんです。そんな破損したソフビ人形を、スケートボードによって修復。傷ついた両者が足りない部分を補いながら、新たな形として進化していく。そんな物語を作り上げました」

現在開催中の展覧会「I versus I」は、ただひと言、とにかく熱い。HAROSHIの生き様と情熱が、強烈なメッセージとなってダイレクトに伝わってくる。

「お金で買えるモノって、イージーじゃないですか。いい木材を買って、いいモノを作るのは意外に簡単なんですよ。クラフトワークを続けてきてつくづく感じるのは、何から作るかが重要だということ。廃棄されるような材料でも、新たな命を吹き込むことは可能。元々の所有者の思いに、僕の思いが加わって、世の中に一つしかないものが出来上がります。それが、たまらなく面白いんですよ」

古いプラスティックビニール製のアクションフィギアを修復改造したソフビ作品。H39×W23×D10㎝

HAROSHI
1978年東京都生まれ。スケートカルチャーを題材としたアート作品で、世界的に注目されているアーティスト。キース・ハフナゲルが創設したストリートブランド「HUF」とのコラボレーションや、BATB(Battle at The Berrics)のトロフィーなどで知られている。8月8日まで個展「I versus I」をNANZUKA UNDERGROUNDにて開催中。展覧会に合わせて、2003年から現在に至る作品をアーカイブした全520ページに及ぶ作品集「HAROSHI(2003-2021)」を刊行。詳しくはこちら

個展「I versus I」
期間:7月10日〜8月8日
場所:NANZUKA UNDERGROUND
住所:東京都渋谷区神宮前3丁目30-10
TEL:03-5422-3877
問い合わせ先:info@nanzuka.com
営業日:火曜〜日曜11:00-19:00
休み:月曜

TEXT=川岸 徹

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