2024年10、11月は大手メゾンのCEOや最高醸造責任者が続々と来日。創立以来の伝統を守り、最高のものをつくり続ける彼らに、ブランドの過去、現在、未来について話を聞いた。ローラン・ペリエ編。【特集 シャンパーニュの魔力】
偉大な祖父が築いた哲学を家族経営で守り抜く
1939年にドゥ ノナンクール家が経営を引き継いだ時、ローラン・ペリエは売り上げ100位前後の小さなメゾンに過ぎなかった。しかし戦後、さまざまな新基軸を打ちだし、業界屈指のトップメゾンにまで押し上げたのが、2010年に他界したベルナール ドゥ ノナンクール氏である。
そのベルナール氏の孫娘で、「グラン シエクル」のグローバルアンバサダーを務めるのがルーシー ペレイル ドゥ ノナンクール氏。現当主、アレクサンドラ ペレイル ドゥ ノナンクール氏の長女にあたる。
「祖父のことはよく覚えています。心が広く、笑顔の絶えない人でした。一方で要求も多く、細部にまでこだわる人物でした」
ルーシー氏が、世界中にその品質の高さを広める使命を担う「グラン シエクル」とは、1959年にリリースされたメゾンのプレステージキュヴェ。当時、最高峰といえば、いずれも単一収穫年のヴィンテージだったが、「完璧な年などひとつとして存在しない」と考えたベルナール氏は、性質の異なる3つのヴィンテージをアッサンブラージュ(ブレンド)することで「完璧な調和」を目指した。
「フレッシュさ、エレガントさ、バランスのよさこそローラン・ペリエの目指すスタイルです。なかでも『グラン シエクル』はその集大成。『グラン シエクル』を理解することが、メゾン全体を理解することにつながります」
「グラン シエクル」には17あるグラン・クリュ(特級畑)のうち9〜11が用いられ、エレガンスをもたらす白ブドウのシャルドネ比率が常に多めとなる。瓶内熟成期間は10年以上ときわめて長い。名づけ親はベルナール氏がレジスタンス組織に身を投じていた第二次世界大戦中の英雄で、のちの大統領、ド・ゴール将軍である。
有数の大メゾンに成長した今も家族経営を貫くローラン・ペリエ。巨大資本の傘下に属さず自主独立にこだわるのは、祖父ベルナール氏の功績を讃えてのこととルーシー氏。
「祖父が築いたノウハウや質へのこだわりを守るには家族経営以外にありません。栽培農家から販売流通業者まで、つまりシャンパーニュ生産の川上から川下まで、円滑な人間関係を育みながらメゾンの経営を進めることが大事だと考えています」
またルーシー氏は、日本とローラン・ペリエの関係には必然性を感じるという。
「日本料理には『グラン シエクル』とつながるエレガンスがあり、細部へのこだわりも驚くばかり。メゾンにとって日本が昔から大切な市場である理由がよくわかります」
この記事はGOETHE 2025年1月号「総力特集:シャンパーニュの魔力」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら