断言しよう。今、自分のレストランリストに入れておくべきはカウンターの店だ。なかでも次世代を担う若手職人による鮨店は絶対に行きつけにしておきたい。今から通って応援したい、10年、20年後の名店になる可能性大の鮨店から、今回は大阪・本町の「鮨 たく未」を紹介する。
本能に忠実に自分の道を拓く職人が秘める、無限の可能性
独立独歩の人である。2022年に大阪に自身の店を構えて早一年。今、大阪の鮨好きの話題の中心にいるのが『鮨 たく未』だ。
店主の梅村拓未氏は、福井県出身の30歳。大阪で働こうと思ったのは「たこ焼きの修業をして、地元でお店を開きたかった」というから、人生、何が起きるかわからない。
その後、縁あって19歳で京橋の「鮓 きずな」へ。大阪随一の名店で働き、学ぶうちに鮨の世界にどんどん魅了されていったという。27歳で二番手として迎えられた難波の「鮨 なかもと」では頭角をめきめきと現し、メインを任せられるまでになった。
そろそろ独立を、と考えていた時に出合った物件は、国の重要文化財に指定されている綿業会館の真向かいのビル。カウンター奥の窓から見える風景は、夜になるとドラマティックさが増し、そこから差しこむ光はまるで、この店の明るい未来を暗示しているかのようだ。
おつまみが5品、握り12貫と玉子焼きで構成されるコースは1万9000円。名刺代わりの一貫として最初に登場する中トロは「大阪で仕入れている鮪店はまだ多くないはずです」という鮪問屋「結乃花(ゆのか)」のもの。あまり寝かさず、その時季の鮪のフレッシュな味わいを楽しんでもらいたいとやや厚めに切りつける。
羽釡で炊き上げるシャリは3種の米をブレンドし、赤酢は色づけ程度に。粘り気を極力少なくするために寝かせた米は、中トロのように脂がのった魚との相性もすこぶるよく、ネタの旨みや香りと合わさりながら口中ではらりとほどける。
「いずれは海外も視野に入れて」。夢を着実にかなえる姿に、明るい希望の光が見える。
鮨 たく未/Sushi Takumi
住所:大阪府大阪市中央区備後町3-1-2 レアビル301
TEL:06-7410-3261
営業時間:18:00〜/20:50〜、日曜17:00〜/20:00〜
定休日:月曜
座席数:カウンター9席
料金:¥19,000のおまかせコースのみ