卵、バター、牛乳、バニラビーンズ、そしてラム酒といったシンプルな素材で作るカヌレ・ド・ボルドー。日本でもお馴染みのフランス菓子であるが、昨今、改めて注目を浴びている。専門店も多数登場するなど群雄割拠の様相を呈しているが、そんな中からゲーテ編集部がチョイスしたのは、スイーツだけでなく、ガストロノミーの見識も備える店のカヌレ。レストラン経験のあるパティシエや、シェフとパティシエのコラボレーションから生まれた名品に注目したい。
パティスリー イーズの新食感カヌレ
再開発が進み新たなスポットとして話題を集める、東京・日本橋兜町エリアに2020年7月にオープン。広いオープンキッチンのある店内に、ジュエリーのようにディスプレイされた生菓子。そして、焼き菓子やヴィエノワズリーの並ぶ一角にカヌレが鎮座する。
やや大ぶりなサイズのカヌレ。表面はカリッと、内側はとろり&むっちりという絶妙な食感。味わえば、ラム酒が心地よく漂うほんのりビターなキャラメル感に続いて、バニラが香る濃厚でクリーミーな味わい。これは癖になる。
パティスリーだけでなく、日・仏でレストランでの経験も豊富なシェフパティシエの大山恵介さん。カヌレは多くの人に愛されるお菓子だからとラインアップに。
「生地の外側の食感と内側のテクスチャーのバランスを大切にしています。焼きたてが一番おすすめですが時間がたったら焼き直すと、また違った味わいが楽しめます」
コーヒーはもちろんだが、ハードリカーとともにゆっくりと味わうのもよさそうだ。
パティスリー イーズ
住所:東京都中央区兜町9-1
TEL:03-6231-1681
営業時間:11:00~18:00
定休日:水曜
※予約可(3日前までに連絡)
酒粕と本格焼酎が香るatirom の「富士山カヌレ」
国内外のレストランやシェフ、生産者とコラボレートする住所非公開のレストラン「atirom Tokyo」が生み出した、和のカヌレ。
ラム酒を使うカヌレを日本的に再構築。生地に練り込まれているのは三重にある「木屋正酒造」の貴重な「而今」の新鮮な酒粕。さらに、香りづけとして宮崎の「尾鈴山蒸溜所」で造られる爽やかな甘味が特徴の本格芋焼酎「山ねこ」も使われる。
冷凍なので常温で解凍して食べる。しっとり、そしてむっちりとした食感。ふんわりと酒の風味が漂い、ホワイトチョコレートの香りとコクを感じる。チョコレートの甘さを酒粕特有のフルーティーな香味が引き締める。なお、半解凍の状態で味わうとまた違った食感が楽しめる。
酒粕(麹)は生きており、その時の搾り方により水分量が異なるため、原料の配合をその都度調整して焼き上げる。「独自の技法で冷凍することで酒粕と焼酎の風味を生地全体に馴染ませます。そのため、焼きたてではなく寝かせてからお届けしています」とは、「atirom TOKYO」でパティシエ・フードキュレーターを務める高橋未来さん。
コーヒー、ワイン、そしてフルーティーな日本酒と一緒に。さまざまな日本酒と合わせて、相性を探る楽しみも。
酒粕と焼酎を使用しているけれど、しっかり焼いてあるためアルコール残量はわずか。そのため子供も食べられるが、この独創的なテイストは大人の嗜みとしておきたい。
atirom
公式オンラインショップで購入
※「atirom Keyakizaka」での受け取りも可能(住所:東京都港区西麻布3-2−13 TEL:070-7793-6014 店頭受け取り時間11:00~19:00)
週末限定。大津洋菓子店の中華フレーバーのカヌレ
東京・清澄白河にある人気の中国料理店「O2(オーツー)」の裏手に、2022年2月にオープンした「大津洋菓子店」。「O2」オーナーシェフの大津光太郎さんと、東京・巣鴨の「パティスリー ヨシノリ アサミ」で経験を積んだパティシエの大竹美咲さんがコラボしたカヌレが話題を呼んでいる。
プレーンは大竹美咲さんのレシピ。これまでに培ったフランスの伝統的な製法をベースに、表面はカリっと中はしっとり食感に焼き上げる。ほかに中華食材を使ったフレーバー2種類は、大津光太郎さんと大竹さんが試行錯誤して生み出されたもの。フレーバーは週替わりのお楽しみ。取材日は、軽い酸味とライチの香りが漂う「ライチ紅茶」と「チョコレート+山椒」が店頭に。
「ワインなどお酒と一緒に楽しむお客様のお好みもあって、焼きをしっかりめにしています」と、大竹美咲さん。確かに、ワインなどとともにゆっくりと味わうのにいい感じのバランスだ。
フレーバータイプのカヌレは赤ワインやハードリカーとの相性よし。今の季節なら爽やかに、キンモクセイやクロモジなどを使った香りのいい国産のクラフトジンのソーダ割りなどを合わせてもいい。
これからも、さまざまなフレーバーが登場する予定。どんな香りや味わいに出合えるかを楽しみに訪れたい。基本的には土日の営業だが、詳しくはインスタグラムをチェック。
大津洋菓子店
住所:東京都江東区三好2-15-12 峯岸ビル1F
TEL:非公開
営業時間:12:00~(売り切れ次第終了)
※土・日曜のみの営業