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2021.11.15

アフターコロナの世界ガストロノミーはどう変わった?「世界のベストレストラン50」現地取材レポート【第2回】

世界のガストロノミーの潮流に大きな影響を及ぼす「The World’s 50 Best Restaurants」(以下、ベスト50)が、去る10月5日に、ベルギー・フランダース地方のアントワープで行われた。その順位は、世界中の食の評議員の投票によって決まる。コロナ禍を経て、2年半ぶりの開催となった今回、果たしてガストロノミー地図に変化は見られたであろうか? 発表されたランキングや特別賞から、現在の美食の傾向やベスト50の影響力・役割を、現地で取材したライターが読み説いていく短期連載第2回。【第1回はこちら

傳

日本勢の最高位は、11位に入った「傳」だった。

日本勢の活躍と、ベスト50の考えるダイバーシティ

日本勢に注目しよう。最高位の11位に入ったのは、長谷川在佑(ざいゆう)シェフが率いる、ホスピタリティと驚きにあふれた日本料理「傳(でん)」。悲願のベスト10入りは今回もお預けとなってしまったが、昨年と同じ11位をキープしたということは、世界にその実力がしっかりと認められてるということにほかならない。

長年、世界にも強い影響を与えてきた独自のジャンル「“イノベーティブ里山キュイジーヌ”(革新的里山料理)」を供する「NARISAWA」の成澤由浩シェフも19位と、安定の実力を発揮した。ちなみに、昨年の22位からは3位アップしている。

そしてビッグニュースは、コンテンポラリーでサステナブルなフレンチ「フロリレージュ」の川手寛康シェフが39位と、新たにベスト50入りを果たしたことだ。ニューエントリーに関する理由を、日本の評議員のチェアマンである中村孝則氏はこう語る。

「まずは、アジアのベスト50での高評価が安定的に続いてきたこと。また、食材に経産牛を使うなど、料理そのものにサステナビリティな考え方があり、ベスト50と親和性が高いこと。沖縄のハレクラニホテル内に支店をオープンさせたり、海外のシェフとの積極的なコラボレーションなど、海外への発信力の強さが考えられます」

51位~100位のなかには、日本勢が5店舗ランクインしている。伝統を守りながらも、革新的な技術を追求し続けてやまない「日本料理 龍吟」が51位、繊細で取り合わせの妙が冴えるイタリアン「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」が73位、中国料理を洗練の極みに昇華させた「茶禅華」が75位。繊細ななかに強い印象を残す大阪のフランス料理「ラ・シーム」が76位、素材の持ち味を究極まで引き出したフレンチレストラン「レフェルヴェソンス」は99位である。

国別にみる50位以内の最多ランクインは、6軒ずつのスペインとアメリカであるから、日本の3軒のランクインは、アジアの中ではトップではあるにしても、もう一声と言いたいところ。「日本料理 龍吟」に再エントリーしてもらいたいというのは皆が切望するところだろう。

それと同時に、100位までの入賞をふやしたいのも悲願だ。アジアのベスト50の100位までに入った「オード」、「ヴィラ・アイーダ」、「été」、「チェンチ」などにも今後の活躍を期待したい。

日本チーム2

日本の評議員のチェアマン、中村孝則氏(写真左上)ら日本チームの面々。アジアのベストパティシエに選ばれた「été」の庄司夏子シェフ(写真右下)の姿も。

チェアマンの中村氏は言う。

「ベスト50本部は、いろいろな意味での多様性をとても大切にしています。まず、開催地に関してですが、今回立候補したベルギーのアントワープは、人口50万の小さな町ながら150の民族が住む他民族国家だそうです。また、評議員に関しても、50%以上の女性を含めることが義務づけられています。その結果選ばれたレストランが、5大陸、世界26ヵ国からの50店舗なのですから、これは、もう立派なダイバーシティ―です」

さらに、今回、象徴的だったのが、料理人としての長年の業績が評価されると同時に、時代を牽引しているという意味でも一目をおかれる「アイコン」賞の人選だ。

2019年からの新しい賞だが(以前の「ライフアチーブメント」賞を引き継ぐ)、その年は、アメリカのホセ・アンドレスが受賞。彼はL.A.のスパニッシュレストランのオーナーで、災害支援など社会活動に熱心なことでも知られ、その点が評価された。今年は、全米で初めて女性シェフとして三ツ星を獲得した、サンフランシスコ「アトリエ・クレン」のドミニク・クレンに贈賞。ダイバーシティがテーマの一つでもあった今回のアワードにおいて、クレンの受賞は、食の未来や女性の可能性を見せてくれた気がする。

アイコンアワード

「アイコン」賞を女性シェフとして初めて受賞したドミニク・グレン。

TEXT=小松宏子

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