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2021.11.07

新幹線1時間で行けるビール天国。いま、静岡のクラフトビールが面白い!【#2 店舗編】

近年、静岡県がクラフトビールのブームに沸いている。県内には22のクラフトビールの醸造所があり、ビール好きから評価の高い銘柄も多く存在。そんな静岡のビールを各種試すなら、静岡市内のビアバーと醸造所を巡るのが効率的で楽しい。そこで、静岡のビアホッピングの醍醐味をご紹介する。第2回は店舗編。【#1 ルーツ編】

静岡市内に「クラフトビアステーション」「cove」の2店を手がける小島直哉さんは愛知県出身。大学時代からビール好きで、自動車部品メーカーに勤めていた時のカナダ・トロント研修期間にクラフトビールに目覚める。その後、半年間バンクーバーの醸造所で働き、2016年に「クラフトビアステーション」を開業。現在は「West Coast Brewing」で醸造家として研鑽を積みながら、自身の醸造所の創設を目指している。

クラフトビール好きで盛り上がる酒場的ビアバー

ビール好きであれば、一度行ったら吸い込まれるようにその階段を上ってしまうビアバー「クラフトビアステーション」。6つのタップから注がれるのは、選りすぐりの県内産および国産のクラフトビール。伊豆の国の市の「反射炉ビヤ」や富士宮市近郊の「フジヤマハンターズビール」、沼津市の「沼津クラフト」等をその時々で提供する。

タップと繋がる冷蔵庫は温度別に2つに分け、ガス圧も万全。グラスは7種を使い分けるなどベストな提供の徹底には自負がある。

右は「反射炉ビア」の伊豆のマンゴーシェイクIPA(R¥1,150)。伊豆でとれたマンゴーをそのままピューレ状にして入れた果実感の高いヘイジーIPAだ。左は「沼津クラフト」のクリームラガー(R¥1,100)。口あたりはキリっとしながらも爽やかな甘みもあり、永遠に喉に流したくなる飲み心地。

オーナーの小島直哉さんは「同じ銘柄なら静岡で一番旨いビールを出す店舗だと思う」と言い、確かに変な話、ここではビールを飲んだあとのゲップまで美味しい。飲み干せばグラスがきれいな証である年輪状の泡、いわゆるエンジェルリングが表れ、ビールを最高の状態で味わって欲しいという心意気が目に見える。

手前は「ビール屋さんのフィッシュ&チップス」(¥1,000)でこの日の魚は裾野のニジマス。クラフトビールでといた衣が香ばしく、いぶりがっこ入りタルタルとモルトビネガーがよく合う。奥は御殿場の「渡辺ハム工房」から届いた猪と鹿のソーセージ(¥1,600、単品各¥900)

常時2〜3種類の魚種を揃えるフィッシュ&チップスや、地元食材を使ったおばんざいなどつまみも充実。ひとり客が多いカウンターでは、隣席の客との会話も自然と盛り上がり、地元民がおすすめの店を教えてくれることもよくある。「地元のビール好きと飲み歩く体験もして欲しい」とは小島さん。

「クラフトビアステーション」では6タップを1ブランドで揃える不定期のイベントも見逃せない。

「クラフトビアステーション」
住所:静岡県静岡市葵区紺屋町5-7 田中ビル2F
TEL:054-260-5870
営業時間:水~金曜(17:00~24:00)、土・日曜(15:00~24:00)
定休日:月曜

地元食材を使った窯焼きピザとビールの組み合わせが人気のビアバー

ほぼ全面ガラス張りの「cove」は、ぱっと見はカフェのようで誰でも気軽に入れる雰囲気。実際に「何屋さんですか?」と通行人が立ち寄り、未体験のクラフトビールを試すことも多いとか。

右は神奈川県の「Ebina Beer」のピルスナー(¥1000)。ブルーベリーやスパイスを感じられ、モルト感も満点。左は「リパブリュー」のBB サワーヘイジーIPA(¥1000)。ブラックベリーを使ったすっきり軽めのIPAで、苦いビールが苦手な人でも飲みやすい。

昼から夜までの通し営業なので、カフェ代わりにビール片手にお喋りするもよし、飲みながらPCを広げるのもあり。終日、市民のサードプレイス的な空気感が漂っている。若いスタッフの明るさも安心材料だ。

2021年7月のラインナップの一例。6〜9の海外のビールは「Beer OWLE」のオーナー・草場達也さんがインポーターとして仕入れている銘柄。

それでいて提供するのは本気のクラフトビール。10タップには市内の「WCB」や「García Brew」、沼津市の「リパブリュー」など静岡を中心とする国産とカナダのクラフトビールが揃い、加えてビールが苦手な人用にアップルサイダーまで樽生で用意する。

アボカドと焼津のマグロのピザ(¥850)。有名シェフ御用達となっている富士市「長谷川農産」のマッシュルームと静岡産ケールのピザ(¥900)なども好評。

料理の名物は釜焼きピザ。「静岡の美味しい食材をピザで発信」とのテーマで、清水のマグロや地元の採れたて野菜を、香ばしくもちっとした生地にのせる。ひとりでも食べ切れるようにと、手のひらサイズなのもありがたい。もちろん、クラフトビールとの相性も抜群だ。

「静岡のビールと食材を知る入口になるように」と、入り江を意味する「cove」という名が付けられた。ドアが広く開放され、若い女性もひとりでふらっと入れる雰囲気。地元で造ったビールを地元の人が当たり前に飲む文化を作るのも目的のひとつだ。

「cove」
住所:静岡県静岡市葵区紺屋町11-1
TEL:050-5816-4498(予約専用)
営業時間:月~水・金曜(11:00~23:00)、木曜(11:00~14:00)、土曜(12:00~23:00)、日曜(12:00~21:00)

樽生のほか瓶缶を常時50銘柄用意し、家飲みにも重宝するショップ

小島さんの次に静岡のビール事情を聞いたのは「Beer OWLE」のオーナー・草場達也さん。草場さんはビール輸入会社「BC Beer Trading」の代表でもある。元は東京の会社だったが、静岡のビアバーとの取引のため足を運ぶうち、「他県とは毛色が違う」とビール業のやりやすさに気づいて3年前に拠点を移した。

右から「Beer OWLE」店長の久保哉汰(かなた)さんとオーナーの草場達也さん。草場さんもカナダでの滞在を経てクラフトビールへの造詣を深めていった。グロウラー1L¥2,000〜、樽生は1カップ300ml ¥720〜、ビアチケット300ml×5杯 ¥3,000

「クラフトビールはマニアな層に売っていくイメージだったのが、静岡はそうじゃなくて、わりと一般的な人が好んで飲んでいました。居酒屋に行くかイタリアンに行くか、ビアバーかという感じで選択肢に入ってくる。年齢層も幅広い。クラフトビールとの距離が近くてちょっとアメリカみたいだなと思いました。アオイブリューイングがいい土壌を作ってくれて、それがうまく働いているんでしょうね。もともとカジュアルにビールを売っていきたかったので、商売する場所としてちょうどよかったです」

確かにビアバーにはお洒落な若者からちょっくら家から出てきた感じのオヤジさんまで、さまざまな人がいる。蘊蓄よりも感覚重視の傾向があるとも言う。

「いい意味で、ゆるい県民性。ビールの銘柄も名前も知らないで飲んでくれる人が多いです。勉強っぽく覚える感じもない。“WCBのビールは美味しいから好き”みたいなテンションですね。ビアバーでたまに見かける“ビールの知識ないの?”みたいな店員さんやお客さんにも会わなくて、気ままに楽しむムードです」

個性豊かなラベルがずらりと並び、ジャケ買いするのも醍醐味。「正直、ラベルがいいブルワリーがいま美味しい。なぜかというと、自分たちのブランドをどう展開するか、世界観にこだわっているので味にも妥協しないところが多い」とは草場さん。

草場さんが作った「Beer OWLE」も、まさにその空気感に通ずる店となっている。

小体(こてい)な店ながら10タップが並び、冷蔵庫には常時50銘柄の瓶と缶が揃う。タップは静岡のビールが5種類、海外ビールが5種類の割合。¥3,000で300mlを5杯飲めるビアチケットやグロウラー(真空ボトル)での量り売りもあり、テイクアウトもちょい飲みも利用しやすいシステムだ。

静岡のビールはもちろん、ここでは輸入ビールもお試しあれ。というのも、草場さん自身がインポーターのため、直で取引するビールの品質管理は申し分なし。共同経営者がカナダ・バンクーバーの「パラレル49」の日本人醸造家とあって、同ブルワリーの静岡支部といった感覚で現地に極力近い状態のビールを提供している。

お土産にも最適な静岡のクラフトビール5本。右から「García Brew」のインカ帝国IPA、「柿田川ブリューイング」のTrinity Citrus SourAle、「カケガワ ファーム ブルーイング(KFB)」のカケガワクラシック、「West Coast Brewing」のBuckle UpとTHE BLACK BOOK OG。

そして、「Beer OWLE」の面白いのが、通常のクラフトビール専門店と違い冷蔵庫の商品にポップが一切ないこと。

「専門店に行くほどいかついポップが書いてあるけど、それを読んでも専門用語が並んでいるだけで分かりづらい。うちは小さいお店で地元向けなので、ラベルをガッツリ見せ、なんだこのビール?と興味をもたせ、すぐ声をかけられる状況にしています。初めてのお客さんに“質問していいのかな”と感じさせないためにポップをなくして、“気になるものがあったら言ってください”と声がけをしています」と草場さん。

タップで取り扱うビールについて、「ハートと舌で信頼が置けるブルワリーに声をかける。流行っているところを取り寄せて現地と味が違うのは心苦しい」と品質管理を徹底できるビールのみ扱っている。静岡県内のビールにおいては鮮度抜群の詰めたてが揃う。

コミュニケーションが生じやすい店では、好奇心が刺激されてつい買い過ぎてしまう。レジ横のポテトチップスをつまみに樽生を飲みながら、静岡のビールについて教えてもらうのも楽しい時間だ。

「Beer OWLE」
住所:静岡県静岡市葵区駿府町1−27 勝山ビル1F南側
TEL:050-3716-2169(予約専用)
営業時間:月~金曜(15:00~22:00)土曜・日曜・祝日(13:00~22:00)

第3回(11月13日掲載)、第4回(11月14日掲載)では、市内のブルワリーを紹介する。

TEXT=大石智子

PHOTOGRAPH=松川真介

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