ワイン好きなら一度は参加してみたいオークション。知られざる世界とその魅力をひもとく。
落札総額は約6300万円! ワインオークションに潜入
都内某所、静かな1室に並べられているのはDRCにアンリ・ジャイエなどが造ったブルゴーニュの希少銘柄をメインに、5大シャトーや高級シャンパーニュなど、どれもがマニア垂涎のワイン数百本。この日開催されたのは、大手オークション会社で長年ワインオークションを担当してきたスタッフが新たに設立した「トップロット」の初オークションだ。
開催2時間前から行われる下見会では、出品される全293ロットのボトルがすべて陳列され、参加者たちが自分の狙うワインの状態を確かめていく。下見会終了後、別室でオークションがスタート。正面に立ったオークショニアが開始価格を告げた途端、札が挙がる。会場以外にも電話やインターネットでの参加者もおり、続々と札が挙がり価格も上昇。
絶対落とそうと札を挙げ続ける人、会場後方から全体の空気を見ながら慎重にビッドする人、落札寸前になって札を挙げる人など、競り方もさまざまだ。
早い時は開始からハンマープライスまで30秒程度で、新たなロットが続く。と思えば、「ヴォーヌ・ロマネ クロ・パラントゥ 2001 アンリ・ジャイエ」は、100万円に来たところで別のビッダーから一気に「120万!」の声が上がり、さらに白熱して長期戦に。また、「ドン ペリニヨン ロゼ・ブリュット 1985」は手だれと思しきビッダーが競り合い、落札予想価格の2倍以上の値をつけるなど、熱い戦いが繰り広げられていく。
最終的にはほぼすべてのワインが落札され、その総額は約6300万円にものぼった。
勝負心に火がつく真の駆け引きを体験
「オークションに出品されるワインは、個人が手放したコレクションが多いので、必ず出品者のもとへ出向いて保管状態を確認し、状態のよいもののみを出品しています」と話すのはトップロットの皐月啓嗣(さつき・けいし)氏。また希少なワインには偽物も多いため、トップロットでは世界レベルの真贋(しんがん)の知識・情報を持つ堀賢一氏をアドバイザーに迎え、すべて真贋チェックしているそうだ。
「銘柄によってはボトルキャップに切れ目を入れてコルクの焼き印も確認するなど、丁寧に確認しています」(堀氏)
高額ワインばかりではなく、例えば今回出品された、ブルゴーニュのグラン・クリュをも凌駕(りょうが)するといわれることもあるカリフォルニアワイン「キスラー」の開始価格は、3本で2万5千円。希少なワインも含め、実は市場より手頃な価格で購入できる可能性も高い。
「電話などでも参加できますが、オークションの醍醐味は現場の駆け引きを体感すること」という皐月氏の言葉どおり、数十万円のワインが次々と競り落とされるさまはダイナミックでありながら、会場にはどこかヒリヒリとした緊張感も漂う。
欲しいワインのために勝負を仕かけ、それに勝つ高揚感はオークションならではの体験だ。事前登録すれば誰でも参加は可能。レアなワインに出合い、勝負心に火がつくオークション。一度参加すれば、その魅力の虜になることは間違いない。
高額落札者を直撃取材! ワインオークションの醍醐味とは
オークションの魅力はレアワインに出合えること、それらを安く買える可能性があることです。今回の目玉だったジョルジュ・ルーミエのミュジニーも、1999年から2002年の4本が揃って出るなんてめったにない。「俺が絶対に取る! 」と開始からずっと札を下ろさない“漢(おとこ)挙げ”で、無事4本とも落札しました(笑)。
僕にとってワインは、純粋に飲むためのもの。趣味のなかった自分がワイン好きになってからは、人とのつながりが本当に広がりました。海外での会食でも「アイツはワインに詳しい」と覚えてもらえますし、名刺代わりにもなっています。
意外とお買い得!? マニアも垂涎の激レア銘柄
Illustration=竹田嘉文