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2021.05.05

職人、グルマン必読! 世界屈指の名店「鮨 一幸」の旨さの秘密が明らかに

「情熱大陸」に出演、ミシュラン2つ星、食べログアワードを多数受賞するなど、国内外から注目を集める札幌の鮨屋「鮨 一幸」。北海道・真駒内の名店が、なぜ、世界の名店へと変貌を遂げたのか。その理由を最新刊『鮨 一幸のすべて』(KADOKAWA)から抜粋・一部編集してご紹介。

鮨一幸

どん底から一流店への道のり

日本全国から鮨を愛する人々が訪れる日本屈指の鮨屋、北海道・札幌市に店を構える「鮨 一幸」。現在に至るまでの歴史は、想像を絶するどん底からのスタートだった。2006年、25歳の時に先代より工藤順也氏が引き継いだ頃はバブルの崩壊もあり、まさに自転車操業の状況。

「まとまった給料を払えないので日払いになりました。1日3000円。それをコツコツ貯めては東京で鮨を食べ歩く日々です。お店も20年以上経っていたため劣化し始めていました。お店自体にもお金がないので、自分で貯めた給料で壁紙、床のタイルも直しました。このまま駄目になるのか・・・・・・。悔しさで床にしゃがみ込んで泣いてしまったこともあります」

残されたのはわずかな時間だと悟り、いかに話題づくりでお客さんを呼べるかを考えたという。火事場の馬鹿力でソムリエ試験に6ヵ月で合格。「鮨職人兼ソムリエの店がある」と話題を得て、徐々にお客さんが増加。その後も、ミシュランガイドやテレビ番組「情熱大陸」の縁に対しても、どんな小さなチャンスも掴みたい一心で、自分のすべてを伝え切り、次へとつなげてきた。

そんなある意味、サクセスストーリーとも言える軌跡がいかにして実現したのか、その裏側にある順也氏の信念、行動、想い、そしてトライアンドエラーを経て得た哲学が、最新刊『鮨 一幸のすべて』に込められた。

実用書であり、アート本のような世界観を味わえる一冊

この一冊が体現しているは、食材の特性、調理の可能性、そしてより高い次元で素材の美味しさを引き出す具体的な手法といった、順也氏の経験を通して得られた生きた情報と哲学。門外不出といってもいい内容が、惜しげもなく明かされている。

「『一幸』で握りの一番初めにお出しする春子。仕込みをして3時間目の質感が、米を炊き上げて1時間半の質感に似ていることからその時間に合わせて握れるようにします。手で触った感触が酢飯を触っているのか、ネタを触っているのか分からない感覚になるのが理想です。その感覚で握れると一体感を感じ、握る意味を悟れるようになります」

食材の一つ一つについての深い考察はもちろんのこと、米、道具、わさび、しょうゆ、はたまた陶器に至る、鮨にまつわるすべての要素が語られる。

「書物を読みあさり、産地を訪ね、食材と向き合い、何度も失敗しながら辿り着いた僕なりの考えによる『一幸』のすべてを知っていただきたい。職人の意識一つですべては変わります。この思いを、これから鮨職人を目指す人はもちろん、お鮨を愛するお客様と共有できたら、もっといいものが生まれてくるのではないか・・・・・・。そんな希望を持って今僕の中にあるすべてを書かせていただきました。これは、僕自身がもっと前に進むための一冊でもあります」

写真一つとってみても、言葉一つとってみても、「鮨 一幸」の美意識を感じられるはず。順也氏の最高到達点をとくとご覧あれ。鮨の深みにハマってしまう、そんな後世に残る永久保存版の一冊だ。

『鮨 一幸のすべて』
◆第一章【基本】 店の空気を作る/「職人」と「料理人」/知識・経験・想像力で「味を切り取るセンス」を磨く/酢飯の話/握りの考察/わさび/しょうゆ/しょうゆ入 れ/包丁/刷毛/「美味しい、美味しい、旨い」
◆第二章【握りとは何か】 春子/鮪/雲丹/煮穴子/玉子/鮑/半生のバチコ
◆第三章【春】 鯛/子持ち槍烏賊雲丹詰め/鳥貝/のどぐろ/毛蟹/帆立/蝦蛄
◆第四章【夏】 きんきのしゃぶしゃぶ/水貝/新子/新烏賊/鰯/鮑と雲丹/鮎/鮎 釣り名人
◆第五章【秋】 迷い鰹/炙りトロ松茸/鰤/鰆
◆第六章【冬】 垢穢/白子/あん肝/細魚/炙り金目鯛/鬼鯵/太刀魚/河豚の白子とキャビア/赤貝
◆第七章【真髄】 美/陶器/鮨一幸の歴史/父のこと

著者
JYUNYA KUDO

1981年北海道札幌市生まれ。父が82年に創業した『鮨一幸』の長男として、子どもの頃から店を手伝い、6歳のときには出 張先で巻物を担当。17歳で父と一緒にカウンターに立つ。25歳で店を受け継ぐ。2012年、30歳でミシュランガイド一つ星を獲得。17年ミシュラ ンガイド二つ星に昇格。The Tabelog Awardは、18、19、21年にゴールド。14年TV番組『情熱大陸』出演。

写真
HIROKI INOUE

1979年北海道札幌市生まれ。4人兄弟の長男として生まれ、母の死をきっかけに医学部を目指すがかなわず、新潟大学法 学部へ。卒業後、北海道でキタキツネを中心に動物写真の撮影を開始。大自然の春夏秋冬を繊細に写し出し、日本人として初めて雑誌「ナ ショナルジオグラフィック」の“トラベルフォトグラファーオブザイヤー2016ネイチャー部門1位”、写真投稿サイト東京カメラ部の”2014東京カメ ラ部10選”他受賞多数。

構成・文
MIKO FUJITA

神戸&東京育ちのフードジャーナリスト。“食文化”と“造り手の思い”を伝えることをテーマに、農産物、日本酒やワイン、料理、パンなどにまつわる人々を取材、執筆。弊誌『GOETHE(ゲーテ)』にレストラン紹介記事を連載中。

鮨一幸

『鮨 一幸のすべて』2,400円 工藤順也著(KADOKAWA)

TEXT=谷内田美香(ゲーテ編集部)

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