GOURMET

2021.04.23

富裕層が爆飲み! 高級ワイン市場が活況なわけ

4月24日に発売となるゲーテ6月号。その第一特集では、もともとワイン好きでありながら「今が最もハマっている」というサイバーエージェント・藤田 晋社長のワインライフに密着。今回、富裕層向けの会員制ワインクラブ「ザ・コンコルド・ワインクラブ」を運営する渋谷康弘氏に、エグゼクティブ層の高級ワイン人気を聞いた。

ワイン市場1

市場シェア5%以下の高級ワインが世界を動かす

「5,000円以上のワインが市場に占める割合は5%未満ですが、非常に元気です。世の中はパンデミックで不景気だといわれていますが、それは一般的な消費に直結する部分であって、高級ワインは別。資産として持つ人もいれば、趣味として集める方もいるし、贈答品としての需要もあるため、不景気の煽りを受けにくいのです」

そう語るのは、富裕層向けの会員制ワインクラブ「ザ・コンコルド・ワインクラブ」を運営する渋谷康弘氏だ。渋谷氏が監修した、アメックスのカードホルダー向けのワイン販売企画では、リリースされたばかりのシャトー・ラトゥール2013やドン・ペリニヨンとサロンのシャンパーニュセットなどが瞬殺完売。去る4月17日に開催されたShinwa Auctionのワインオークションでは総額5300万円が落札されたという。

「ブルゴーニュですと、マダム・ルロアが手がけるワインの値上がりは手に負えません。もうご高齢ということもあり、今後のさらなる値上がりを見込んで投資目的で買っている方も少なくないと思います。ただ、広い目でみると、ボルドー、シャンパーニュ、ナパ・ヴァレーの人気がとにかく高い。複雑かつ生産量が少なく入手しにくいブルゴーニュよりも、高いブランド力と、安定した供給を両立するブランドが手堅いのだと思います」

ボルドーの5大シャトーは、高品質のワイン(750ミリ)を年間数十万本とつくり続けることで築き上げたブランド力を持ち、希少性で価値を高めるブルゴーニュとは対極にある。シャンパーニュは、ブドウ栽培面積はブルゴーニュとほぼ同じだが、在庫量が14億本と豊富なため、安定した供給を行えるのが強みだ。

アメリカで勝ったものが世界の勝ち組

一方、特異なのが、後発のワイン産地でありながら、カルトワインと呼ばれる高級ワインが続出しているナパ・ヴァレー。生産量もブルゴーニュと同程度ながら、急激に人気が高まった背景に見えるのは、世界経済の縮図だという。

「ナパ・ヴァレーのワインは、実はヨーロッパの市場では殆ど消費されていません。半分が自国のマーケット、残りは日本やシンガポール、香港といったアジア圏と北南米に流通しています。日本人にとってみたら、アメリカ人も知っている、価値の高いワインですが、ヨーロッパの人はまったく関心を持っていないのが現状です。

しかし、高級ワインとして、短期間でここまで値上がりしたのは、アメリカが世界最大の金の保有国であり、世界で最も強い通貨がドルだからに他なりません。だから、値崩れもしない。かつてはロンドンで勝ち組だったものが世界での勝ち組でしたが、今はアメリカで勝ったものが世界の勝ち組。これはワインも同じです」

古くはボルドーのワインがイギリスを経由し、アメリカに輸出されていたが、自国でのワインの生産に乗り出すと、その経済成長と比例するように、高級ワインの勢力図を変える存在となったナパ・ヴァレー。現在は、ワイナリーのほか、レストランやホテル、ゴルフ場などもそろう富裕層向けのリゾート地として発展しているという。

「次なる高級ワインの消費マーケットとして注目しているのはベトナムです。社会主義国ではありますが、さらなる経済発展を遂げる可能性を秘めており、かつアメリカやヨーロッパといったキリスト教国の影響を受けていて、食文化も多彩。ビール消費量が多いため、そこがワインにシフトし、中国に次ぐマーケットになるかもしれません」

ヨーロッパからアメリカへと波及し、日本や中華圏にまで普及した高級ワイン市場には、さらなる拡大をみせるポテンシャルがある。それに伴い、価格上昇も青天井となるのだろうか。今狙っている高級ワインがあるのなら、手に入れておくのが賢明かもしれない。

渋谷氏の著書『成功する人はなぜ、高いワインを飲むのか?』(朝日出版社)は、世界の上層階級におけるワイン事情や高級ワインの歴史、ソムリエを味方につける方法など、ワンランク上のワインの教養を教えてくれる1冊。

Yasuhiro Shibuya
1964年生まれ。1980年代にパリでワインを学び、帰国後インターコンチネンタルホテルズのチーフ・ソムリエとして活躍。「ベージュ アラン・デュカス 東京」「ピエール・ガニェール・ア・東京」などの有名レストランの総支配人を歴任し、2017年に高級ワインの自社輸入と販売を手がける「グランクリュ・ワインカンパニー」設立。富裕層向けに「ザ・コンコルド・ワインクラブ」を主宰する。’20年8月、朝日新聞出版より『成功する人はなぜ、高いワインを飲むのか?』を出版。’21年よりShinwa Auctionのワイン査定も担当。

「コンコルド・ワイン・クラブ」とは?
渋谷氏が主宰する会員制ワインクラブ。入手困難な古酒や希少なワインを世界中のネットワークから探してくれる。www.concorde-wine.jp

TEXT=岡村彩加(ゲーテ編集部)

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