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2024.10.23
どうしても止められない…「万引き」と「過食症」に共通する異常心理
完璧主義、依存、頑固、コンプレックスが強い。どんな人にも、こうした性質はあるものです。しかし、それが「異常心理」へとつながる第一歩だとしたら……? 精神科医・岡田尊司さんが、私たちの心の中にひそむ「異常心理」を解き明かす。『あなたの中の異常心理』から一部を抜粋してご紹介します。

万引き常習犯は「盗る」ために盗っている
もっとも身近な犯罪行為である万引きと、過食症という食べることへの依存症は、まったく別の行動のようでいて、大きな共通項がある。それは、どちらも幼い頃に愛情不足を味わった人にみられやすいということである。ことに、若い女性では、両者が併存することも少なくない。
有名なハリウッド女優や社会的な地位のある人物が、わずかな金額の品物を万引きして、ニュースになるということが、ときどきあるが、彼らが物やお金に不自由して、万引きをしているのではないことは明らかだ。なぜ、自分の名声や社会的地位を危うくしてまで、千円か2千円のものをポケットに入れねばならないのかということは、多くの人が疑問に思うことだろう。
有名人でなくても、万引きを常習的に行う人の場合、お金や物がなくて、切羽詰まって万引きしている人は少数派である。家に帰ったら、万引きした同じような品々が、置き場がないほどに溢れかえっているというケースもある。盗んできたマンガの本が、読みもせずに山積みされているという場合もある。
必要を満たすために盗るのではなく、盗るために盗っていると言った方が近いのである。経済的な利得よりも、心理的な利得の方がはるかに大きいのである。それゆえ、捕まってしまえば割に合わないどころか、社会的制裁を受けることによってはるかに大きな経済的損失を生じてしまうとわかっていても、つい手が伸びてしまうのである。そこで優先されているのは心理的な満足であり、快感なのである。
それはちょうど、過食症の人の行為とよく似ている。過食症の人は、栄養が不足して、足りない栄養を満たすために過食に耽っているわけではない。
栄養的には、あり余っているとも言えるだろう。実際、過食症の人では、せっかく胃袋に入れても、食べた後ですべて吐いてしまうことも多い。その行為は体の必要を満たすためではなく、食べるために食べているのである。その行為自体が目的化している、つまり自己目的化という点が、常習的な万引きとよく似ている。
万引きと過食が「快感」を生む
それにしても、盗るために盗ったり、食べるために食べたりするのは、いったい何のためなのだろうかという疑問が次に湧き起こるだろう。
それに対する答えの一つは、それらの行為には、どちらも強烈な快感を伴っているということである。万引きをして品物をポケットに入れたり、自分のカバンに入れたりするとき、ハラハラドキドキする気持ちと同時に、何とも言えない快楽を感じているのである。過食するときの快感も似ている。

過食してしまいそうだという危惧の念の一方で、過食するということは、過食症の人にとって、ある種のお祭り騒ぎか、背徳的なパーティのように魅力的な行為なのである。実際、過食症の過食行為は、専門用語で、「ビンジ・イーティング(binge eating)」(ヤケ食い)というが、その原意は、食い放題のどんちゃん騒ぎということである。
過食症の女性は、過食に対して、罪の意識と同時に、強い誘惑を感じる。過食行為には、性行為に溺れることと同じような本能的な快感があるからである。
しかし、あり余っているものを盗ったり、食べる必要もない物を食べたりすることは、健康な心のバランスをもつ人には快感となり得ないだろう。それゆえ、多くの人は、捕まるという危険や健康を害するという危険を冒してまで万引きをしたり、過食したりすることはしない。
ところが、窃盗癖や過食症の人では、その快感が強烈であり続けるため、デメリットを考えれば明らかに不利益だとわかっていても止められないのである。
なぜ、そんなことが起きてしまうのだろうか。
それに対する答えは、この2つの一見無関係な状態の根底に潜んでいる本質的な問題と関係している。それは、この項の最初に述べた経験的な事実、窃盗癖も過食症も幼い頃に愛情不足を味わった人にみられやすいという事実とも関係している。
つまり、これらの状態は、幼い頃に刻まれた根本的な欠落や、それに対する飢餓感が存在していて、それを過剰なまでに代償しようとする衝動に駆り立てられているということである。物を貪ること、食べ物を貪ることは、愛情を貪ることの代替行為なのである。
実際、こうした行為を改善させるうえでは、十分な愛情と関心が与えられることが鍵を握る。いくらその行為だけを問題視して改善しようとしても、徒労に終わるだけである。飢餓感があるから貪ろうとするのである。貪る行為だけをいくら止めさせようとしても、無駄なのである。
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