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2024.06.16
「明日はないさ」で生きてみる。須藤元気流・幸福の見つけ方
作家、俳優、ミュージシャン、世界学生レスリング日本代表監督……格闘家を引退後もマルチに活躍し、先日の衆議院補欠選挙への出馬も話題となった須藤元気さん。著書『やりたい事をすべてやる方法』(2015年12月刊行)より、そんな彼の「軽やかに転身し続けられる秘密」を公開する。
「やりたいこと」が見つからない人は
とかくいまの時代というのは、「やりたいことが見つからない時代」だと言われることが多い。夢や目標があって邁進している人はそのまま道を突き進めばいいのだが、そもそもやりたいことや夢が見つからない、という人が多いのである。これはある意味、僕らの生きているこの時代、この文明の停滞と関係があるのかも知れない。
子供のときから、良い学校へ入って、良い会社へ就職して、一戸建ての家を買って、課長、部長、局長と出世して、分譲のお墓を買って、退職後は天下りでしばらく暇をつぶし、やがて年金暮らしで墓に入る日を待つという人生。明治維新後に生まれた立身出世主義ベースの人生モデルが実態にそぐわなくなり、魅力がなくなったことも大きな要因だと思う。
いまでもこうした人生コースをそつなく過ごす人たちはほんのわずかだが実在する。その人たちがそれで幸せなのかどうか、はなはだ疑問だが、圧倒的多数の人たちには、そうしたくてもできない既得権益の壁があり、格差社会という現実がある。とりあえずは貧しいながらも普通にご飯が食べられればと、大半の人は沈黙の諦めモードに入ってしまう。
そんな大人を見て育った世代は、当然ながら現実に対してなんの夢も持てない。やりたいことが見つからないと答えるしかないのだと思う。
そんな人に、周りは「何かやりたいことを見つけなよ」と言う。でもそれは、探し物をしている人に向かって、「早く見つけなさいよ」と言っているのと同じである。井上陽水氏なら「探しものは何ですか? それより僕と踊りませんか?」と満面の笑みで誘ってくることだろう。
「踊っている場合ではないんです」と断る気力もなく、夢のなかへ連れ去られて行ってしまいかねないのである。
だが、実のところ、どんなに夢や希望がないと思われる状態でも、やりたいことはあなたの心の奥底に埋もれているだけで、掘り起こせば再び光り輝いてくるものである。
やりたいことが見つからず、毎日をダラダラと過ごしてしまい、いつしか探すことすら諦めたり忘れたりしてしまう……そんなやり切れない時間を送るくらいなら、是非とも「やりたくないこと」を掘り起こしてみるべきだと思う。
やりたいことよりも、やりたくないことの方が簡単に思いつく。
今日が「人生最後の日」だと思って過ごしてみる
方法は簡単だ。まず紙を2枚用意して、やりたくないことを書き出してみる。
頭で考えるだけでは、堂々巡りになってしまいがちである。実際に書き出すことにより、自分の考えていることを客観的に見ることができる。
それは些細なことであってもいい。たとえば、通勤で40分かけて会社に行きたくないとか、リングの上でアリスター・オーフレイムのような筋肉選手とは戦いたくないとか、どんなことでも構わない。どんな小さなことでもいいから、やりたくないことだけを書き出してみる。
もう一枚の紙には「やりたいこと」が思い浮かんだら書き出すようにしておく。「やりたくないこと」を明確にすることで「やりたいこと」が浮かび上がってくる場合があるのだ。
普段生活しているなかで、実は「やらなくていいこと」をやっている時間というのは案外多いものである。
そこでいつも僕が提案するのが「今日が残りの人生最後の日」だと思えばよいということだ。最後の日だったら、誰だってやりたくないことをやらなくなるはずだ。人生最後の日なのだから、無駄なことに割いている時間はなく、自分自身のやるべきことにベストを尽くすために集中するようになる。
好きな娘に告白するか迷っているなら、今日告白するべきだし、当たって砕けろの気持ちになれるはず。明日でいいやと思っている仕事も、今日しかするときはない。締切は今日である。
これは、やる気が続かないという人にも有効な考え方になる。
明日があると思うから、モチベーションが続かないのである。「明日があるさ」という曲があるが、ここは一つ、「明日はないさ」と考えてみてはどうだろうか。
極端な話、病気で余命がもうこのくらいしかないのだと言われると、毎日を必死で生きようとすると思う。明日があると思うから、どこかでモチベーションが下がってしまうのだ。
明日はないと考えて、いま、持てる力をこの瞬間に出し切るべきなのである。
それを日々積み重ねていくことが、自分の未来を切り拓いていくことになるのだ。
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