過去から未来へと止まることなく流れる時間だが、クロノグラフだけはその時を止め、動かし、自由に操ることができる。その複雑なメカニズムは知的好奇心を刺激し、積算計や計測目盛りなどが、デザインに躍動感を与えてくれる。
身につけることを楽しむ、ラグジュアリー系スポーツクロノグラフ
クロノグラフという言葉は時(CHRONOS)を記録する(GRAPHOS)から成る造語であり、19世紀初頭のフランスで誕生した。その目的は、貴族たちが所有する競走馬のレースタイムを計測するためで、その後は計測計器として陸上競技やカーレースなどにも用いられるようになった。つまり、クロノグラフはスポーツと切っても切れない縁で結ばれているのだ。
現在では多くの時計ブランドがクロノグラフを製作しているが、ここ数年で目立ち始めたのが、スポーティでありながらラグジュアリー感も高いモデル。しかもデザインや機構の背景には、スポーツへの深い愛情が詰まっているのが特徴だ。
その筆頭がリシャール・ミルだろう。創業者であるリシャール・ミル氏は多くのヴィンテージレーシングカーをコレクションするほどモータースポーツ愛好家であるため、クロノグラフ機構に対するこだわりは深い。
レーシングクロノグラフの第一人者でもあるロレックスは、傑作「オイスター パーペチュアルコスモグラフ デイトナ」を1963年に発表して以来、耐久レースやF1など、多くのレースイベントのサポートを行った。
また、タグ・ホイヤーといえば、故アイルトン・セナとの蜜月で知られており、モータースポーツの計時システムの開発やレーサーをアンバサダーに起用するなど、常に時代の最先端を進んでいる。
一方、パルミジャーニ・フルリエの場合は、ユーザーのアクティブなライフスタイルに寄り添う、ミニマルなクロノグラフ。これまでも名車や高級ヨットとのコラボレーションを重ねてきた同社らしく、週末のスポーツイベントに合わせたり、アクティブな冒険旅行のお供にするのにふさわしい、ユーザーの生活を豊かにする時計になっている。
計測機器として生まれたクロノグラフは、生粋のツールウォッチであり、機能性や実用性が強く求められる。しかしそこにラグジュアリーな価値を加えれば、時計の魅力は何倍にも増幅されるだろう。もちろんこの領域に達することができるブランドはほんのひと握り。だからこそ価値があるのだ。
1.リシャール・ミル|RM 65-01 オートマティック スプリットセコンド クロノグラフ
優れた計測機器でありながら、ポップでカラフルな色を纏う超複雑時計
ふたつの対象を計測するスプリットセコンド式クロノグラフを搭載した、人気モデル。その新作はポップな新素材が特徴。腕元が華やぐ時計だ。
2.ロレックス|オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ
美しい素材でよりラグジュアリーになったクロノグラフの王者
二色のマザー・オブ・パールでダイヤルを製作し、ベゼルとインデックスにはダイヤモンドをセッティング。ストラップをラバータイプにしてスポーティさを高めた。
3.パルミジャーニ・フルリエ|トンダ PF スポーツ クロノグラフ
これ見よがしではない静かな存在感こそが真のラグジュアリー
毎時36,000振動の高性能ムーブメントCal.PF070を搭載し、パワーリザーブは約65時間。ベゼルのローレット加工の繊細な刻みも美しい。ロンドングレーと命名された優しい配色も特徴。
4.タグ・ホイヤー|タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ×ポルシェ963
ダイヤルやベゼルなど、レーシングスピリットが細部まで宿る
FIA 世界耐久選手権に参戦するハイパーカー「ポルシェ963」とコラボレーション。レースカーの車体構造を思わせるスケルトンダイヤルが特徴。世界限定963本。