時代を超えた至高のヴィンテージには、現存するだけの価値、いい物語が紡がれている。仕事人が愛でる、古き良き逸品とのグッドストーリーとはーー。
稀少な時計だからこそ、思い入れや愛着が生まれる
10代の頃から時計に興味があったが、本格的に収集を始めたきっかけは、ヴィンテージウォッチとの偶然の出合いにあったと経営者の大友大介さんは話す。
「東京・青山にある専門店ダズリングの店頭でヴィンテージウォッチを目の当たりにして、圧倒されました。この日のできごとが時計収集の原体験です」
今では37本の時計を所有し、ヴィンテージウォッチは特別な6本を持つ。
「誤解を恐れずにいうと、ヴィンテージウォッチには、今の時代では作りだせない魅力がある。いつでも買えるモノではないので、どの時計も思い入れが強くて、1本も手放せません」
ヴィンテージが持つ卓越した味わいとクオリティは、時計選びの物差しになると熱く語る。
「残念なことに、そのほとんどは防水性能が不十分なため、汗ばむ季節は着用を避けています。大切にしたい一心から必然的に現行モデルの本数が増えていったんですね。それぞれ持ち味が違うので、その時々で使い分けています」
気になる収集のポイントについてたずねると、好きなテイストはずっと変わらないという。
「お気に入りは、初めて買ったヴィンテージウォッチであるパテック フィリップのRef.2526です。今持っているのはイエローゴールドケースですが、よりレアなローズゴールドを狙っています。これがなかなか出てこなくて……。ヴィンテージは即決しないと逃げてしまう」
審美眼にかなう時計を見かける機会は少なく、購入するまでのプロセスを楽しむこともヴィンテージウォッチ収集の醍醐味なのだと教えてくれた。
1940年代 ヴァシュロン・コンスタンタン Ref.4178(左から)
装飾的なラグが人気のクロノグラフ。ブランドが主催するイベント「レ・コレクショナー」で購入したとあり、状態は抜群。
1950年代 パテック フィリップ Ref.2526
シェルマンで購入した通称“トロピカル”と呼ばれるドレスウォッチ。小ぶり過ぎないサイズ感から着用頻度も高いそうだ。
1940年代 パテック フィリップ Ref.96
カラトラバの原点である不朽の名作。年代によって文字盤の趣が異なるが、同個体はアラビア数字の植字を持つ。
1980年代 パテック フィリップ ノーチラス Ref.3800(左から)
現行よりも小ぶりなサイズ感の1981年発表のノーチラス3 針モデル。この個体は、カレンダー表記が黒色の仕様を探した。
1985年製 ロレックス GMTマスター Ref.16753
生まれ年の個体ゆえ購入したというGMTマスター。この時代ならではのアップライトインデックスが高い人気を集めている。
DAISUKE OTOMO
1985年生まれ。広告代理店を経営する。10代からはじめたヴィンテージ時計収集は18年目。時計愛好家として日々時計ネタを発信するインスタはフォロワー多数。@jardin.watch