公益社団法人日本青年会議所による「TOYP(The Outstanding Young Persons)大賞」。さまざまな分野で挑戦する若手起業家を応援するこの賞の授賞式が、去る2024年6月、都内にて行われた。未来を担う彼らの受賞を祝おうと集まった経営者たちの、期待と喜びがあふれる授賞式をレポートする。
多様な発想とたゆむことのない挑戦が、受賞の対象に
互いに笑顔で挨拶を交わしながら、会場には国内外から若い起業家たちが続々と集まってくる。この日都内で行われたのは公益社団法人日本青年会議所による「TOYP(The Outstanding Young Persons)大賞」の授賞式だ。
明るい豊かな社会の実現を理想とし、リーダーを志す青年経済人によって社会貢献をすることを目的に組織された公益社団法人日本青年会議所が、毎年開催している「TOYP(The Outstanding Young Persons)大賞」は、歴史も古く2024年ですでに38回目。全国各地で様々な社会課題の解決に向けて挑戦する40歳までの若者を発掘し、その活動を表彰。彼らの活動を広く周知し支援することで、さらなる飛躍に繋げることを目的としている。若手起業家にとっては自ら立ち上げた事業と志が社会的に認められたことを示す賞であり、“青年版国民栄誉賞”とも呼ばれるほど名誉ある存在として広まっている。
発表に先立ち、公益社団法人日本青年会議所 第73代会頭を務める小西毅氏からは「この授賞式を通じて、未来のリーダーとなる若者の挑戦を社会全体で応援できるようにしたいと思っています。今後行われる全世界の青年会議所メンバーが集まる世界会議では、世界中の受賞者の中から最も傑出した10人の若者が選ばれます。今回日本で受賞される皆様の中から、日本代表として世界のTOYP へ選ばれる方が誕生するかもしれません」と次なるステップへの期待感も伝えられた。
今回は国内外からエントリーされた531名の中から、日本商工会議所会頭奨励賞や農林水産大臣奨励賞をはじめとした各省庁の大臣賞など15名を選出。
会場を埋める熱い高揚感の中、各賞の受賞者の名前が読み上げられると、大きな拍手に迎えられ喜びにあふれた受賞者が登壇。支えてくれた家族や先輩経営者への感謝とともに自らの事業について熱い思いを語った。
例えば、人口1000人の島での伝統文化の継承を軸にした観光振興や人財育成の実施、自らの経験からヤングケアラーの支援や自治体や国への政策提言活動、シンガポールを拠点にした海外を目指す日本の青少年のサポートなど、各受賞者の発想の多様性や重ねてきた実績は、確実に社会に影響を与えるものばかりだ。
グランプリはスマホカメラで眼科診察を可能にした活動
そして、いよいよクライマックスとなるグランプリ1名、準グランプリ2名の発表へ。
まず準グランプリのひとりは、環境に配慮したキャビンを日本各地にオープンし、サブスク型のセカンドホームサービス「SANU(サヌ)」を展開しているSANU Founder / Brand Directorの本間貴裕氏に。
「別荘のようなハードルの高さではなく、気軽に日常の延長線上で楽しめる自然の中での暮らしを提案しています。目指すのは人間の生活が自然を痛めつけず、ともに生き、むしろ豊かになること。事業の成功以上に、社会自体が変わっていくような活動にしたいと考えていたので、この受賞によってそれが間違いではなかったと感じられてうれしく思います」
同じく準グランプリのElevation Space代表取締役CEO小林稜平氏は、日本で唯一の回収可能な無人小型衛星による宇宙での実験サービスを提供。宇宙での生活の実現に向け、開発を重ねている。
「日本が成長していく中でも、今後重要な産業となり得るのが宇宙産業だと考えています。一企業だけでできることではないため、TOYPでさまざまな方と出会い、自分たちの事業を知っていただく良い機会をいただいたと思っています。そして今回の賞は、未来につながる宇宙産業を地方から発信しているという“社会性”で評価していただいたという意味でも、私たちの事業を加速させることができる重要な賞だと感じています」
そして栄えある2024年のグランプリを受賞したのは、スマートフォンをベースにした眼科診察用カメラ「Smart Eye Camera」を開発、実用化したOUI代表取締役の清水映輔氏だ。眼科医としてベトナムでボランティアをしていた際、医療機器不足による深刻な健康格差を目の当たりに。安価で簡単に診断できる機器をと、スマートフォンのカメラと光源を利用した「Smart Eye Camera」を開発、医療機器として実用化に成功し、世界中のどこでも、そして遠隔での眼科診察をも可能にした。このカメラはすでに60ヵ国で使用されているそうだ。
「世界の失明を50%減らし、眼から人々の健康を守ることが私たちのミッションです。どこでも簡単に診断が可能になることは、病気の治療だけではなく予防も可能にし、さらに各国での疫学研究にもつながっています。現在は途上国だけではなく、日本でも在宅やへき地での眼科検診などにも利用していただいているので、TOYPで全国から集まった方たちと交流ができたのも有意義でした。そして何よりも、今回受賞という形で私たちの結果が認められたことは、スタートアップとしての大きなステップアップになると感じています」
すべての賞が発表された後は、賞のプレゼンターを務めたアルペンスキー元日本代表の皆川賢太郎氏と2017年のJCI JAPAN TOYPグランプリを受賞した川口加奈氏によるトークショーも開催。皆川氏は「自分を信じていつかの未来のために、挑戦し続けることが大事」と話し、川口氏も自らの経験を踏まえ未来のリーダーたちへ熱いエールを送った。
受賞者ひとりひとりの経験と実績は、今日会場に集まった公益社団法人日本青年会議所のメンバーたちにも、同じ経営人として大きな刺激になったに違いない。ひとりの発想と挑戦が社会を変え、そしていつか世界へも飛躍していく力になる。その可能性を誰もが感じた一夜となった。
JCI JAPAN TOYP 2024 受賞者
グランプリ(内閣総理大臣奨励賞)
OUI 代表取締役 清水映輔
準グランプリ(総務大臣奨励賞)
ElevationSpace 代表取締役CEO 小林稜平
準グランプリ(環境大臣奨励賞)
Sanu Founder / Brand Director 本間貴裕
衆議院議長奨励賞
Japan Fruits 代表取締役 高尾明香里
参議院議長奨励賞
フェルメクテス 共同経営者 長内あや愛
外務大臣賞
TeaRoom 代表取締役 岩本涼
文部科学大臣賞
越境ラボ 理事長 安田哲
厚生労働大臣賞
スペース・オリオン 代表取締役 沖村フォンデビラ有希子
農林水産大臣奨励賞
TOWING 代表取締役 西田宏平
経済産業大臣奨励賞
ライトライト代表取締役 齋藤隆太
全国知事会会長奨励賞
ONE SLASH/RICE IS COMEDY ® 代表取締役 清水広行
NHK会長奨励賞
CGOドットコム 総長 バブリー(竹野理香子)
日本商工会議所会頭奨励賞
多良間島観光コンシェルジュ 波平雄翔
日本青年会議所会頭特別賞
リンクエイト 大嶋香織
日本青年会議所会頭特別賞
かすもり・おしむら歯科・矯正歯科 口腔機能クリニック 院長 押村憲昭
問い合わせ
JCI JAPAN TOYP https://www.jaycee.or.jp/toyp/