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2023.09.18

検索しない、レコメンド時代。「ごっこ倶楽部」がTikTok界で一人勝ちする秘密を独白!

TikTok界隈を賑わすクリエイター集団「ごっこ倶楽部」。東京リベンジャーズとコラボするなど、動画広告としての力も目覚ましい。たった3〜5分の短い動画で、まったく新しいドラマの世界をリードしていく彼らに2回に渡って独占インタビュー。後編は、ごっこ倶楽部の創設者・多田智が、エンタメ界に切り込む覚悟を語る。#前編 ■連載「NEXT GENERATIONS」とは

クリエイター集団「ごっこ倶楽部」

役者は、役者だけやっていていい時代ではない

外部制作チームを使わず、役者・監督を兼務、全作オリジナル脚本で、年間200本以上の縦型ショートドラマをアップし続けている「ごっこ倶楽部」。

これだけ多くの作品をつくり続けるバイタリティはどこから来るのだろう。ごっこ倶楽部の創設者であり監督・構成・脚本を手掛ける多田智(たださとし)はこう説明する。

「とにかく本数が必要、日々アップされていくことが大事です。そして他の誰もこれだけの本数を上げることはできないと思います。その点でもナンバー1でいたい。

現在ごっこ倶楽部は法人化し、社員も増えましたが、最初は本当に5人だけで作っていました。それこそ体力と気力だけで(笑)。けれど今は脚本家も増やし、役者も都度オーディションをして量産できるかたちを整え始めています」

前編でも語ったとおり、ごっこ倶楽部の創設メンバー5人は、役者であり、それぞれが別の役割を持っている。多田はこれこそがもっとも重要なことなのだと考えている。

「今は、役者は役者だけやっていていい時代ではない。プラスαの何かを持っていないといけません。最近はインフルエンサーがドラマに出たりもしますよね。それってセルフプロデュースがうまいことと、プラス何かの魅力がそれぞれにあるから使われている。だったら役者はただ芝居がうまい、それ1つだけではもう追いつかない。

たとえ脚本を書いたことがなくても、TikTokを使いこなしている人なら、そのテンポ感は身体に染み付いているはずです。オーディションにやってきた役者のなかで、ティックトッカーがいれば、執筆経験がなくても脚本を任せることもあります。

新しい人材を採用するにあたって、役者にプラスして何ができるかを、常に重要視しています」

クリエイター集団「ごっこ倶楽部」
鈴木浩文/Hirofumi Suzuki(前)
1988年兵庫県生まれ。スーパー戦隊シリーズ『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』にキジブラザー/雉野つよし役で出演。ごっこ倶楽部では出演、脚本担当。
多田智/Satoshi Tada(奥左)
1994年中国生まれ。ごっこ倶楽部創設者。動画の監督を手がける。
谷沢龍馬/Ryuma Tanizawa(右)
1988年新潟県生まれ。NHK大河ドラマ『晴天を衝け』、映画『ヘルドッグス』などに出演。ごっこ倶楽部では出演、キャスティング、演技指導を担当。

属人的ではない役者集団として作品第一のブランディングを

通常、2〜3分のショートドラマが完成するまでは、脚本完成までに1週間、撮影準備に3日間、撮影は12時間ほどかかるという(社内作品で最短の場合。作品が完成するまでには、これに加えて素材の色味調整、編集、投稿、という作業が含まれる)。

手軽に見ることができるショートドラマだが、その制作は決して手軽ではない。けれど役者自身が、他のクリエイション、そして業務を行うことができるぶん、すぐに演じられる、すぐにつくれる、という量産に有利な状況が生まれてくるのだという。

多田は言う。

「僕らが、全員役者であることの一番いいところは、他の制作に回っても、役者のことがよくわかるということです。

例えば、僕らが始めた時、TikTokでアップできる動画は59秒まででした(現在は10分まで)。役者をやっていなかったら、なるべく短くタイトに撮ろうと、撮影中から速めのテンポでつくったかもしれません。

けれど役者のいい表情というのは、ある程度の間(ま)があるから出るものだとわかっています。だから撮影は時間を気にせずに行い、いい表情を出すことに集中する。

そして編集段階で、短く整えていきます。撮影中に『間が長い!』とか『59秒しかないんだから』なんて言ったことはないですよ(笑)。同時に役者自身も他の役割を持っていますから、全体を俯瞰して見ることができて効率的に動けるんです」

だからこそ、役者たちも全力で表現を追求することができるのだという。さらに、ごっこ倶楽部には、いわゆる著名な俳優は出演していない。スタートした当初から出演している俳優たちをスターにしようとも、多田は考えていなかったという。

「例えば、(渡辺)大貴くんはイケメンですし、彼にキャラの濃いものを演じてもらえば、人気になると思います。けれどごっこ倶楽部として、大貴くんが出ない回は再生数が伸びない、というのが嫌だったんです。ごっこ倶楽部は属人的ではない役者集団、作品第一で考えてブランディングをしていきたいと思いました。

作品が面白い、演技がうまい、最初はそれだけで見て欲しい。だから今は、全員にまんべんなく出てもらっています。監督も僕ではない人がやった回も再生数が伸びるようになって、個人に頼らないブランディングが必要だなと考えています」

クリエイター集団「ごっこ倶楽部」
渡辺大貴/Daiki Watanabe(左)
1990年東京都生まれ。映画『ごくせん THE MOVIE』、ドラマ『ライフ』などに出演。ごっこ倶楽部では出演、衣装担当。
早坂架威/Kai Hayasaka(右)
1996年福島生まれ。出演、監督、助監督担当。

まずは、「ごっこ倶楽部」というブランドをつくっていく。もちろん個の力によって作られているそのブランドだけれど、あえてそれを隠すことで、ブランド力を盤石にしていくのだ。

検索時代からレコメンド時代に

現在さまざまな企業から、ごっこ倶楽部にショートドラマをつくってほしいという依頼が絶えない。日々、フォロワーや再生回数も伸び続けている。そもそもなぜ縦型のショートドラマというものが、ここまで見られるのだろうか。その疑問に多田はこう答えた。

「今、コンテンツが増えすぎていて、みんな何を見ていいかわからなくなっているんです。何を検索していいかもわからない。けれど空いた時間、ぼーっとしたい時間というのは必ずあるので、検索したものを見るのではなく、レコメンドされたものを見る、そういう時代になってきています。

映画を見るにはモチベーションが必要だし、電車の中ではなかなか見ようと思わない。なんとなくレコメンドで流れてくるショートドラマがちょうどいいんです。

検索すらも面倒くさい、スマホは持っているけど、スクロールしかしたくないんです。みんな。受け身の体勢になっているから、そこにバンバン僕らの作品を流していく。3分ですぐ流れていって、それもちょうどいい。

そういう受け身の時代に、縦型ショートドラマは合っているメディアなんだと思います」

ごっこ倶楽部は、けれど同じ手法でいつまでも留まっているつもりはないという。今後の野望を聞いてみると、多田は、大きく息を吐いてこう答えた。

「3分で感動して、たくさんコメントもつけてくれるけど、みんなすぐ忘れる。次の別の動画を見たら、前に見ていた動画のことはもう覚えていない。そういうものです。だからこそ、TikTokは、入口としてはかなり重要なメディアだと思っています。

TikTokで自分たちのブランドをつくる、それを入口に、配信サービスなどに流せる映画作品をつくっていく。それが今の目標です。

映画って好きな人はずっと見ますけど、見ない人は、ずっと見ないんですよ。だから映画ファンの数が増えていかない。でも僕らのショートドラマをきっかけに、TikTokから映画を見ない層の人たちを連れてくることができると思っています。

映画の敷居を一度下げて、ファンを増やしてもう一度コンテンツと向き合う。僕らのゴールは決してTikTokではありません。でも、TikTokは一生辞めません。こんなたくさんの人が見てくれる入口は、他にまだありませんし、何より僕らの原点ですから」

映画配信サービスが充実した今、本来なら、映画ファンが続々と増えてもいいはずだ。しかし現在、映画の興行成績は、年々下がり続けていると言われている。

それはおそらく多田が言う「検索すら面倒」と思う人々が増えたことと、関係があるのかもしれない。TikTokを間口に大量のファンを連れてくるここができる刺客、ごっこ倶楽部が、エンタメ界を変える日が、もう近くまで来ている。

▶︎▶︎インタビュー前編はコチラ

クリエイター集団「ごっこ倶楽部」
ファンの間でも人気のひろりゅーコンビ。

■ごっこ倶楽部
2021年結成。TikTokにオリジナルのショートドラマを投稿し、SNSの総フォロワー220万人、累計再生数15億回を超える。2022年に法人化、制作スタッフ・役者を社員として雇いハイペースで動画を投稿する。TikTok:@gokko5clubYouTube/Instagram:gokko5club/Twitter(現X):@gokko5club

■連載「NEXT GENERATIONS」とは
新世代のアーティストやクリエイター、表現者の仕事観に迫る連載。毎回、さまざまな業界で活躍する10~20代の“若手”に、現在の職業にいたった経緯や、今取り組んでいる仕事について、これからの展望などを聞き、それぞれが持つ独自の“仕事論”を紹介する。

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NEXT GENERATIONS

新世代のアーティストやクリエイター、表現者の仕事観に迫る連載。毎回、さまざまな業界で活躍する10〜20代の“若手”に、現在の職業にいたった経緯や、今取り組んでいる仕事について、これからの展望などを聞き、それぞれが持つ独自の“仕事論”を紹介する。

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=倭田宏樹

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