挑戦し続けるビジネスウーマンを紹介するシリーズ「In the Office」。今回はアスリート専門の睡眠のパーソナルトレーナーとして活躍するヒラノマリさん。In the Office127。【過去の連載記事】
小学3年生にして不眠を経験
ヒラノマリさんがスリープトレーナーとして睡眠の指導を行うきっかけにもなったのが、小学3年生で経験した不眠だった。
「父親の仕事の関係で3〜8歳頃までアメリカのロサンゼルスに住んでいたのですが、帰国して日本の学校に通い始めたら、不眠になってしまったんです。他の子が読み書きできる漢字ができなかったり、音符が読めなかったり。いろいろな違いによって変わり者扱いされたりして、学校に馴染めなかったからか、結局、1年くらい不眠に悩まされていましたね。その後も、高校受験、大学受験と勉強が忙しくて、今度は眠たいのに眠れない状況に。私の学生時代の悩みの種の大半は睡眠でした」
そんな経験から、大学卒業後は大手インテリア会社に入社。睡眠にまつわる資格も取得し、寝室全体のコンサルティングなどを行っていた。そこから今のスリープトレーナーに転身した理由とは。
「高校の短期留学でシアトルに行った時に試合で見たイチロー選手にものすごく感動して。もともとスポーツ観戦が好きだったんですが、そこからアスリートの人たちってすごいなって、尊敬するようになりました。2016年の鹿島アントラーズ対レアル・マドリードの試合も、日本人選手が果敢にレアルの選手に挑んで互角の戦いを繰り広げていて。結局負けてしまったのですが、こういう本気で戦っているアスリートの人たちと一緒に仕事をしたいと心を動かされました」
そこから会社員として働きながらスリープトレーナーとして活動を始めるものの、もちろんスポーツ業界とのコネクションはゼロ。そのためSNSでの地道な発信とスポーツマネジメント会社への営業をしていたところ、選手から問い合わせが入るようになったという。
「今は、卓球の平野美宇選手や、野球選手、サッカー選手を睡眠の面からサポートしています。例えば野球の中継ぎ選手は、金曜にナイターゲームがあって翌日にデイゲームがあったりすると、睡眠時間が少ないので、日本にいるのに時差ボケ状態になりやすい。さらにナイターの後だと交感神経が昂ってすぐには眠れないんです。
なので、まずは深部体温である脳と内臓の温度を下げるため、手のひらとおでこを冷やしてもらいます。脳の温度が下がると、眠りにつきやすいと言われているんです。あとは、温湿度計を持って行って“睡眠環境の見える化”をしてもらっています。体感温度で空調を設定しがちですが、客観的な数値で見てもらいます。今の季節だと室温16〜19度、湿度50%に保つようにお願いしていますね」
平野選手は東京五輪の1年前にヒラノさんに睡眠の指導を依頼。「メダルを獲るために睡眠を頑張りたい」と話したそう。睡眠を武器にして夢を叶えたい。アスリートはそれほど睡眠が重要なものだと認識しているのだ。これからますますヒラノさんの活躍が期待されるが、本人からは意外な答えが返ってきた。
「スポーツ界の睡眠の改善はもちろんですが、ずっと問題視されている選手のセカンドキャリアに貢献できる活動もしたい。例えば、スリープトレーナーという職業と選手のセカンドキャリアを絡められないかなと考えています。アスリートとして活躍していた人だからこそ、現役の選手にアドバイスできることがあるはずです」
Q1.私、実は○○フェチなんです。
――筋肉フェチです
Q2.理想の上司を有名人に例えると?
――ケイン・コスギさん
Q3.寝る前に必ずすることは?
――ストレッチポールとホットアイマスク
Q4.座右の銘を教えてください
――「何事もうまくいっている途中」
Q5.あなたにとって仕事とは?
――生き様。頑張っている人の背中をそっと押すもの
Mari Hirano
1990年東京都生まれ。大学卒業後、大手インテリア会社に入社。寝室全体のコンサルティングなどを担当したあと、独立。アスリート専門の睡眠のパーソナルトレーナーとして活躍している。現在、卓球の平野美宇選手をはじめ野球選手、サッカー選手などを睡眠の面からサポートする。