ハワイを代表する料理人たちは、己を鼓舞して前進をしていた。彼らの現在の心境、そして次の目標に迫る。※GOETHE2022年9月号掲載記事を再編。
1.世界ランク9位のすし匠・中澤圭二、世界一好きなハワイをあえて去る理由
世界に真の江戸前を発信していきたい
「ハワイの日本飲食店は今、バブルです」
『ハワイすし匠』の今を問うと、こちらの目をじっと見つめ、中澤圭二さんは真顔でそう答えた。だが、その状況を手放しに喜んでいる状況ではなさそうだ。
「日本に行けないニューヨークや西海岸の人たちが、ハワイに鮨を食べに来るんです。でも僕はコロナの辛さを忘れてはいけないと思っているんです」
2016年、中澤さんは大人気店『四谷すし匠』を後継に託し、ハワイに店を開いた。日本で獲れた最高品質の鮮魚を、海外に高値でどんどん買われていく食環境を憂慮(ゆうりょ)したからだ。それならハワイやアメリカ本土の魚を、江戸前の手当で旨い鮨に握ろうじゃないかと、ひとつの奇跡を起こすべく挑戦したのだ。世界のレストランランキングOADの全米エリア部門で、2022年、9位に選ばれたことからも、それは十分成功したと言える。
2.有名レストランのスターシェフが故郷ハワイで開店した店とは
初のオーナーレストランで、海外で磨いた腕を存分に!
「ハワイでこんな繊細な料理が食べられるのか!」と、多くのフーディを驚かせ、食レベルを引き上げた牽引役といえばクリス・カジオカさん。ニューヨークの『パ・セ』やサンフランシスコの『アジーザ』など、海外のレストランで腕を磨き、ホノルルの『ヴィンテージ・ケイブ』『セニア』と立て続けに成功させたスターシェフだ。その彼が、一昨年にカイムキに自身の店をオープンしていた。
「カイムキは僕の出身地。両親も住んでいます。故郷のローカルに美味しいもので元気になってほしく、店を開きました」
もともとここは『カフェ・ミロ』の名前で、長年愛されたフレンチレストランだった。
「前オーナーも日本人。日本人は食に対する知識が深く、舌も肥えている。だから日本の方々に美味しいと言ってもらえるのが、僕には何よりの励みです」
3.2年で激変したハワイの食文化で進化! 名店が導き出した味とは
ハワイの食材を追求する。その大切さに改めて気がついた
ハワイの食材を使った創作料理で世界を魅了してきたMWレストランが、ベロシティに店舗を移したのは2021年4月。建物の1階は『アーティゼン by MWレストラン』としてパシティエ・ミシェルさんのスイーツを味わえるカフェ、2階ではレストランというスタイルに。
「2年でハワイの食文化は変化しました。海外に行けなかったので、ローカルの人が海外の料理に挑戦するように。メキシカンが人気で、私たちも取り入れ始めています」(ウエイドさん)
もともとウエイドさんがつくってきた「ハワイ リージョナルキュイジーヌ」とは、ハワイの食材を使いながら、多様な国の食文化を融合させたもの。その本質をさらに突き詰めている。
「自給自足の意識が高まり、ローカルのファームが増えました。積極的にコラボして食材を集めていますよ。今週はマカハから、マンゴーを130キロ仕入れました」(ミシェルさん)