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2022.10.19

中田英寿が協力を依頼した、日本茶のスペシャリストとは

日本茶の窮地を救うため、立ち上がった5人の男。リーダー・中田英寿が信頼を置く、各ジャンルのプロフェッショナルたちを紹介する。1人目は史上最年少で茶師十段を取得した星野製茶園の山口真也氏。

星野製茶園

茶師十段が目利きする、福岡・奥八女の名茶園

2022年5月、中田英寿氏をはじめ、「HANAAHU TEA」のプロジェクトメンバーの姿は福岡県八女地方の星野製茶園にあった。この時期は茶葉の収穫の最盛期。来年を見据え、茶葉の視察に訪れたのだ。

日本の四季を味わいに落とし込んだ食中茶「HANAAHU TEA(ハナアウ ティー)」のベースの味づくりを担う星野製茶園は、八女地方のなかでも標高が高くて霧深い、空気が澄んだ「星野村」と呼ばれる山里の茶園だ。同社の専務取締役である山口真也氏もプロジェクトメンバーの一員。その鑑別力と卓越した仕上技術、そして八女という産地に可能性を感じ、中田氏が協力を依頼したのだ。

星野製茶園でお茶の栽培と仕入れ、加工、販売を管理する山口氏は、日本茶業界では有名な存在だと中田氏は話す。

「お茶の鑑定力を競う『全国茶審査技術競技大会』の最高位である『十段』の段位を持つ茶師は全国で15人しかいないのですが、山口さんはそのひとり。しかも、取得したのは史上最年少の32歳の時。日本茶のブランドをつくるという新しい試みに、腕利きの茶師である山口さんの力が必要でした」

八女は玉露の産地として有名だが、お茶の生産量は全国のわずか3%。しかし、さまざまなお茶の産地を見てきた中田氏は「山間の小さな土地だからこそ小回りが利いて挑戦ができるのではないか」と、地形ゆえの産地特性にも可能性を感じたという。

星野製茶園

収穫の最盛期を迎える5月、星野村は青々とした茶畑が広がっている。

星野製茶園

碾茶(てんちゃ)の茶摘み風景。旨味成分であるアミノ酸を増やすため、収穫前は被覆し遮光している。

「当園では茶の仕上加工業や問屋業だけでなく、昔から自社の試験茶園を設け、栽培に関わるさまざまな試験を行ってきました。また契約農家さん約80軒ともその試験結果を共有しながら、他に真似できないお茶づくりに取り組んでいます」

山口氏が話すように、日本茶の品質は原料の茶葉に負うところが大きく、良質な茶葉の仕入れは茶師の目利きにかかっているが、山口氏の見識を生かして仕入れたり栽培されたお茶の品種はさまざまで、比較的新しい品種なども取り入れられている。例えば2003年に登場した「つゆひかり」は、最近八女でも栽培されるようになった煎茶向きの品種。山口氏いわく、同じ品種でも栽培する土壌によって色や香味も変わってくるのだとか。また、その品種に見合った栽培法を実地試験の結果から見いだすことも重要だという。

「もともと煎茶品種として育成されましたが、八女の地質であれば玉露やかぶせ茶、碾茶でも上質のものができることがわかりました。しかも栽培の仕方によって香りの質や滋味もある程度コントロール可能です」

星野製茶園のお茶は、こうした茶の本質を熟知した山口氏が、さまざまな畑の特徴を想像しながらブレンドしてつくられている。素人から見るとブレンドをせずに品種の特性を活かしたお茶をつくってもいいように思えるが、やはり昔から続いていることには確固とした理由がある。

「お茶は農産物なので年によって品質も価格も変動します。そのため、複数の畑のものをブレンドすることで品質と価格を安定させています。ブレンドは茶師の腕の見せどころといえます」

もちろん「HANAAHU TEA」にもその技術は活かされており、ベースの日本茶にはいくつかの品種がブレンドされている。味の方向性は中田氏が目指す「食中茶にふさわしい味わい」。しかし、食事に合うお茶の味わいとはどんなものなのか?

「HANAAHU TEA」の四季の味づくり

山口氏は「料理に合わせるお茶にはキレが必要」という中田氏の持論に同意しつつ、「キレを出すためには苦味・酸味・渋味が必須」だと続ける。達人の言葉は明確で迷いがないため簡単そうに聞こえるが、多種の原料茶葉をブレンドして苦味・酸味・渋味を調えるのは至難の業。

「HANAAHU TEA」の特徴である「四季の味」づくりに移ったのは、試作を繰り返した後のことだ。

一体どうしたらお茶で季節を表現できるのか? 山口氏は日頃から季節感を意識しているという。それは人の感受性が季節によって変わるため。春夏と同じ加減で火入れしたお茶を冬に飲むと青臭さを感じるため、冬に販売するお茶は春夏より強く火入れ(焙煎)しているのだとか。

「お茶は火入れの度合いによって味わいが変わります。同じ銘柄であっても季節によって絶妙に火入れ加減を変えることで季節感を表現しています」

熟練の技と感性がつくり上げる「HANAAHU TEA」。季節ごとにどんな味わいを見せてくれるのか、完成が待ち遠しい。

星野製茶園

散茶機の風で冷却中の茶葉。

星野製茶園

茶葉を炉で乾燥させる工程。

星野製茶園

茶葉の審査風景。

Hidetoshi Nakata
1977年山梨県生まれ。サッカー選手としてW杯3大会連続出場。引退後は国内3000ヵ所以上の伝統産業などの生産者を精力的に巡り、世界に誇れる日本の文化継承に尽力する。旅で見つけた日本の本物(者)を伝えるプロジェクト「にほんもの」を展開。

Shinya Yamaguchi
1978年福岡県生まれ。大学卒業後、3年間の自動車タイヤメーカー勤務を経て、静岡と京都で茶業研修。2006年実家が家業として営む「星野製茶園」に入社。32歳で茶審査技術の最高位である十段を取得。

TEXT=小松めぐみ

PHOTOGRAPH=林田大輔

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