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2022.09.15

大坂なおみ、7年目で初の屈辱。復活の糸口とは

女子テニスの東レ・パンパシフィック・オープンが2022年9月19日に東京・有明テニスの森公園で開幕する。連覇の懸かる母国開催の大会で大坂なおみは復活の糸口をつかめるのか。連載「アスリート・サバイブル」とは……

大坂なおみ

2022年全米オープン女子1回戦の大坂なおみ。

モチベーションと勝利への執着心

女子テニスの東レ・パンパシフィック・オープン(以降、東レPPO)が2022年9月19日(予選=17~18日、本戦=19~25日)に有明テニスの森公園で開幕する。新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催。前回’19年大会覇者の大坂なおみ(24歳・フリー)も出場予定だ。

大坂は9月11日に閉幕した全米オープンで1回戦敗退後に、今後のツアー大会への出場について「まだ分からない。自分はしっかり計画を立てるタイプの人間ではないので、その日その日の状況で判断したい」と説明。そのうえで東レPPOについては「東京五輪の時は観客がいなくて寂しかった。観客の前でプレーしたいし、日本ではプレーしたい。とてもいいものになると思う」と参戦する意向を示した。

’19年シーズンには世界ランキング1位の座にも就いたが、今季は厳しい状況が続いている。’22年5月に左アキレス腱を痛めて全仏オープン後に離脱。’22年7月には’19年から指導を受けたウィム・フィセッテ・コーチ(42歳・ベルギー)との契約を終了した。夏のハードコートシーズンに向けてケガの完治を優先したい大坂と、故障と付き合いながらウィンブルドン選手権への出場を求めたコーチとの考え方の隔たりが、タッグ解消の一因とされる。

父・フランソワ氏をコーチにつけて、’22年8月1日開幕のシリコンバレー・クラシック(米サンノゼ)でツアー復帰。1回戦で鄭欽文(19歳・中国)にフルセットの末に勝利したものの、2回戦でコリ・ガウフ(18歳・米国)にストレート負けした。翌週のナショナルバンク・オープン(カナダ・トロント)は1回戦で腰痛を発症して途中棄権。続くウエスタン・アンド・サザン・オープン(米シンシナティ)も初戦で敗退した。

十分な実戦を積めず試合勘不足で迎えた全米オープンも1回戦で世界ランキング19位のダニエル・コリンズ(28歳・米国)に6-7、3-6で敗れた。過去3戦全勝で1セットも落としたことのなかった相性のよい相手にストレートで屈し、全米オープンは7度目の出場で初の初戦敗退。2年ぶり3度目の優勝はあっけなくついえた。

今季の4大大会は全豪オープン3回戦敗退、全仏オープン1回戦敗退、ウィンブルドン選手権は欠場。グランドスラムで2大会連続の1回戦敗退は本戦デビューから7年目で初の屈辱となり「全体的にはいいプレーができたとは言えないけれど、自分のできることを一生懸命やったつもり。トロントの大会(ナショナルバンク・オープン)から腰に痛みを感じていたので、それなしにプレーしたかった」と腰に違和感が残っていたことを明かした。

’18年全米オープン後にうつ状態に陥ったこともあり「最終目標は楽しむこと」と言い切る。コート外でもアスリート支援を目的としたマネジメント会社や、ドキュメンタリー制作を行うメディアを設立するなど積極的に活動する。’22年5月に米経済誌フォーブスが公開したアスリート長者番付は女子最高の5920万ドル(約84億円)だった。

以前は敗戦後に号泣したり、自らのミスに怒ってラケットを破壊する姿が目立ったが、現在は感情を爆発させるシーンはほとんどない。本人は「好調時と何が違うのか分からない」と言うが、勝利への執着心が薄れている感は否めない。

東レPPOは連覇の懸かる母国開催の大会。開会式で聖火リレーの最終点火者を務めた昨夏の東京五輪が無観客開催だった経緯もあり、日本のファンの前で躍動する姿を見せたいとの想いは強い。特別な感情の湧く“凱旋試合”が新たなモチベーションを生めば、勝利へのどん欲さを取り戻して闘争心に火がつく可能性もある。’22年9月12日発表の世界ランキングは48位。ポーラ・バドサ(24歳・スペイン)、アリナ・サバレンカ(24歳・ベラルーシ)らトップランカーの集う有明で復活の糸口をつかめるか。

Naomi Osaka
1997年10月16日大阪生まれ。ハイチ出身の父レオナルド・フランソワ氏の指導で3歳の時にテニスを始め、米国へ移住。2013年に15歳でプロに転向した。’18年3月のBNPパリバ・オープンでツアー初優勝。4大大会は’18年9月の全米オープンで初優勝を飾り、通算4勝。身長1m80cm、右利き。

■連載「アスリート・サバイブル」とは……
時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

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連載「アスリート・サバイブル」

時代を自らサバイブするアスリートたちは、先の見えない日々のなかでどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「アスリート・サバイブル」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=AP/アフロ

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