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2022.05.16

【リビングハウス 北村甲介】センスに頼らない企画力で、インテリア業界の未来を切り拓く

激しいせめぎ合いが続く家具業界において、次々と異例のプロジェクトを生みだし、10年で売り上げを3倍に伸ばした男がいる。「センスもないし、クリエイトする力はゼロです」とかぶりを振る、注目の経営者・北村甲介の企画力の秘密に迫る。

リビングハウス北村甲介

利益が出にくい家具業界で売り上げが3倍に

「家具屋は、儲からないネガティブ要素が多いんです。商品が大きいので、店舗の賃料や倉庫代、物流費がかさみますし、さらに、家具は一生モノと言われるように、お客様にはそもそも買い替えるという意識が生まれない。つまり、非常に経費がかかるうえ、購入されにくい。それが家具屋なんです」

そう語るのは、家具・インテリアショップ、リビングハウスの北村甲介社長だ。実際、家具・小売業は最盛期の1991年には年間商品販売額が約2兆7000億円あったのに対し、2016年は1兆1000億円まで激減している。ところが、そんな業界において、北村率いるリビングハウスは急成長を遂げている。北村が社長に就任してからこの10年間で売り上げは3倍に伸びた。

北村が仕かけるプロジェクトはどれも、その手があったかという鮮やかさに満ちている。言われてみれば納得なのだが、なぜか誰も思いつかない。そんな北村のキャリアは、新卒で就職した社員100人ほどのベンチャー企業から始まった。

「この頃は、特に将来の目標はありませんでした。リビングハウスは家業ですが、継いでくれと言われたこともないし、継ぐつもりもありませんでした。でも、石の上にも三年と言うけど、このベンチャー企業に三年はちょっとなぁと感じ、1年で退社を決めたんです。そして、家業のことが頭をよぎりました。そういえばウチ、家具屋だなと」

短パン・タンクトップで2tトラックを運転

家業の取引先の家具屋で修業をさせてもらうことになったものの、配属先は接客ではなく配送。入社2週間後には、短パン・タンクトップで汗だくになりながら2tトラックを運転する日々が始まった。

「1年半で約1000軒を訪問しました。驚いたのは、お客様自身はとてもお洒落なのに、家の中は洗練されていないケースがほとんどだということ。家という空間における時間の価値が低いんです。日本のインテリア文化は遅れている。しかし、意識さえ変われば花形産業になると確信しました」

こうして、家具業界で生きていくことを決意し、修業を重ね、リビングハウスに入社。そして2011年、北村が34歳の時、代表取締役社長に就任した。

家具屋が儲からないネガティブ要素を潰す

北村がまず着手したのは、家具屋が儲からないネガティブ要素をいかにして潰し、利益を生みだすかということだった。その代表的なプロジェクトが、’13年にオープンした業界初のスリッパ専門店だ。

「まず考えたのは、広義で捉えた時のインテリアアイテムが何かないかなぁということ。すると、スリッパとクッションが頭に浮かびました。これらのアイテムなら、大きさの問題はクリアできます。また、一応季節性があるし消耗品なので、一生モノという意識も生まれません」

そして、どちらに狙いを定めるかを検討した結果、世の中に与えるインパクトの大きさ、難しさ、面白さなどからスリッパで勝負することに。

「スリッパかなぁと妄想した後は、データで検証しました。すでに専門店は存在するのか? 世の中のどれくらいの人が履いているのかを調べたんです」

その結果、世の中にスリッパ専門店は存在せず、自分は履かないけれどお客さん用はあるなど、約50%の人が所持していることが判明。そして、商業施設で期間限定ショップをオープンしたところ人が押し寄せた。7坪の空間にスリッパ、スリッパ、スリッパ! 見たことのない光景に一種のエンタテインメント性が生まれ、大ヒットを記録。成功を見届けた北村はその後、専門店を展開したほか、既存店にスリッパコーナーを導入。最盛期にはスリッパだけで年間5000万円を売り上げるほどの一大ビジネスに成長させたのだ。

「スリッパだったら、家具屋のネガティブ要素を払拭できるし、履きつぶれた時やプレゼントを贈ろうと考えた時に、そういえばリビングハウスにはスリッパコーナーがあるなと、リビングハウスを想起してもらって、来店していただけるのではと思いました。そうやって来店頻度を高めることで、いざ大きな家具が必要になった時に購入していただく可能性が上がるのではないか、そういう機能をスリッパに担わせたいと考えたのです」

その狙いどおり、スリッパコーナーを設けた店舗は客の来店頻度が増え、家具の売り上げも見事に増加した。しかし、北村がスリッパに狙いを定めたのには、実はもっと大きな理由があった。

驚きの企画力! 壁で売り上げをつくる

「家具屋は壁に商品を並べることがほとんどないんです。家具は大きくて重いので、床に並べるしかない。これを商業的には坪売り上げが低いと言います」

では、いったいどうすれば一坪あたりの売り上げを上げられるのだろうか。北村が出した答えはこうだ。

「同じ空間で、それまで取り扱っていなかったものをプラスして売る。そのために、普段は商品を並べていない場所を使う。そうして導きだされたのが壁です。だから、壁に陳列できるスリッパがベストだったのです」

北村が生みだすビジネスはどれも、課題を見つけだし、問題点を浮き彫りにして、解決策を緻密に練り上げていく。例えば、売り上げの上がらない店舗においての課題は、社員に成長機会を与えるために店長というポジションが必要ということ。しかしゼロから店を造るためには資金が必要という問題点が生まれる。そのための解決策として、同業他社をプロデュースすることで、1円もかけずに自社製品を陳列&人材を派遣して社員に成長機会を与える。という答えを導きだした。

客足が落ちる時間帯に英会話学校を開設しているのも同様だ。家具屋は平日の夕方以降が暇になるから、暇な時間帯の坪売り上げを上げたいという課題に対し、資金や人材を割く余裕はないという問題点が生まれる。そこで、英会話学校とコラボして、店舗の一角を貸しだすという解決策を導きだし、客を自動的に呼びこむ仕組みを作りだしたのだ。しかも、このビジネスのすごいところは、関係者みんながハッピーになることだ。

「リビングハウスは、生徒さんを店内に呼びこむことで、購入機会や将来の見込み客を増やすことができます。英会話学校は、雑居ビルではなくインテリアショップに、初期投資ゼロで教室を開くことができる。生徒さんは1円も高い月謝を払うことなく、よりよい環境で学べます。さらに、リビングハウスが入っているショッピングモールも、定期的に人がやってくることで、館内の店舗の利用率が上がります。ですからwin-win-win-winなのです」

右脳2割、左脳8割の感覚で仕事をする

類まれな北村の企画力はどのようにして育まれたのだろうか。

「本当に僕は、センスもないし、カリスマでもありません。ただ、アイデアというのは天才を選んで降ってくるものではなく、こうなんじゃないかなぁという妄想を出発点として、データを検証し、積み上げた先にようやく姿を現すものだと思うんです。だから僕は妄想とデータを大切にしています。右脳2割、左脳8割で仕事をしている感覚です」

そう語る北村が、次に目指すのは上場だ。

「僕の人生のモットーは、挑戦と革新です。ちょっとした捻挫、脱臼で済む挑戦だったら、これからもガンガンしていきます。そして日本を空間時間価値先進国にする。それが僕の目標であり、使命だと思っています」

LIVING HOUSE. 横浜ベイクォーター店
レストラン併設の大型店舗。人気ブランド「Bonaldo」「KARE」を取り扱うほか、カフェも併設。
住所:神奈川県横浜市神奈川区金港町1-10 横浜ベイクォーター4F
TEL:045-450-6325
営業時間:11:00~20:00

 

Kosuke Kitamura

Kosuke Kitamura
リビングハウス代表取締役社長。1977年大阪府生まれ。慶應義塾大学を卒業後、ベンチャー企業、配送業などを経て、2004年に家業のリビングハウスに入社。’11年代表取締役社長に就任。スリッパ専門店や英会話学校とのコラボなど、ありそうでなかった企画を次々と成功させ一躍話題に。業界屈指のアイデアマンとして注目を集めている。

 

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TEXT=森本裕美

PHOTOGRAPH=前 康輔

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